トヨタ・ノア S 4WD Gセレクション(4AT)【ブリーフテスト】
トヨタ・ノア S 4WD Gセレクション(4AT) 2001.11.26 試乗記 ……360.8万円 総合評価……★★
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日本市場専用
打倒ホンダ・ステップワゴンのためのトヨタの新兵器。5ナンバーサイズのボディで、「3列シートの8人乗り」と「左右についたスライドドア」がセールスポイント。エンジンは、トヨタ自慢の直噴2リッター4気筒(152ps、20.4kgm)。先代までの後輪駆動シャシーを捨て、前輪駆動を採用したことによって、室内空間を拡大し床を低くすることに成功した。ヴォクシーという兄弟車ともども、顔つきがちょっと怖い。どうしてこうまで殺伐としなくてはいけないのか。
5ナンバーサイズのボディの内側を可能な限り広くしようとし、そのうえシートアレンジメントが多彩、フルフラットにもできるようにした努力はマーケットでの競争の厳しさを表わしている。たしかにそうしたユーザーのニーズに応える努力は大切なことだが、筆者には本末転倒に思えなくもない。シートが様々に折り畳めることなどよりも、日常のかけ心地や長距離での快適性を向上させることが、シートでは重要なのではないか。プライオリティの問題なのかもしれないが、クルマのなかで寝ころぶことや飲食のためのシートアレンジメントを、かけ心地やホールド性、さらには安全性よりも優先していいのか。日本市場専用というのも頷ける。
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【概要】 どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2001年11月16日に発表されたミニバン。「ノア」がトヨタカローラ店で売られていた「タウンエースノア」、「ヴォクシー」がネットトヨタ店「ライトエースノア」の後継モデルである。フルモデルチェンジにともない、シャシーがFF化(前輪駆動)され、両側スライドドアとなった。3列シートの8人乗りだ。ドライブトレインは、直噴の2リッター(152ps、20.4kgm)と4段ATの組み合わせのみ。駆動方式には、FFのほか、電子制御多板クラッチを用いた4WDも用意される。
(グレード概要)
ノアのグレードは、ベーシック版「X」、ややスポーティなイメージを押し出した「S」、ラグジュアリーな「L」に大別できる。ヴォクシーでは、順に「X」「Z」「V」。Sは専用アルミホイール、ディスチャージヘッドライト、大型フロントフォグランプ、リアスポイラーを装着、ホワイトメーター、3本スポークのステアリングホイールも他グレードとの識別点だ。「Gセレクション」は、ラジオレスのSにMD・CD一体型ラジオを奢り、オートエアコン、リモートドアロックなどを装備、ドアハンドル、シフトレバーのボタンにメッキを施した仕様。
【車内&荷室空間】 乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
最近のトヨタ車に多いセンターメーター配置。特に変わったところがないが、空調スイッチを、円周上の何点かのポイントを押して調節する形式を新しく試みている。が、それが使いやすいとは残念ながら思えない。“つるし”のままでも基本的な装備は過不足なくそろっているが、試乗車は、車両価格約252.0万円に108.8万円のオプショナルが装着されていた。うち50.8万円分は、DVDカーナビ付きオーディオほか。なんだかなぁ。
(前席)……★★★
「座り心地のよい大型シートにした」と謳っているだけあって、たしかに運転席と助手席は大ぶり。でも、大きなサイズゆえ快適かというと、それは別。シートが大きいとゆったりしたかけ心地になるものだが、ノアの場合、座っているドライバーの腰が定まらず、どうも不安定。ヒトが感じる“座り心地”には、サスペンションやボディサイズも関係してくるので、ただシートを大きくすればいいというものではないのだろう。
(2列目シート)……★
3人乗車できる2列目シートなのに、なぜかヘッドレストが左右ふたつしかない。中央席はシートベルトも2点式の簡略版。安全において中央と左右の席では大きな差が付けられている。担当者に質問すると、コストのためであることを言いにくそうに認めた。乗員の安全はコストに優先されてしまうらしい。
(3列目シート)……★★
3列目シートへの乗り降りはしにくいが、座ってみるとそれほど窮屈ではない。5ナンバーボディを堅持しながら室内空間の拡大に努めた成果は、サードシートに腰かけたときに最も享受できる。とはいえ、絶対的には狭く、シートそのものも背もたれが低いお粗末なもの。
(荷室)……★★★
何度も言うように、5ナンバーボディにシートを3列もしつらえているから、絶対的なラゲッジスペースは広くない。特に奥行きは必要最小限。8人全員が乗ったら、8個のスポーツバッグは載らない。とはいえ、サードシートを左右それぞれ横に跳ね上げて荷室を拡大することができるので、5人乗車なら、もしかしたら6人乗車でも(3列目シートをひとつ畳めば)人数分の荷物を積めるかもしれない。
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【ドライブフィール】 運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
ガソリン直噴エンジンの2リッター直列4気筒VVT-i「Dー4」ユニットは、アイドリングからの瞬発力もあり、2500rpmぐらいまでの、街乗りで最も頻繁に用いられる帯域で使いやすい。だが、音や回転フィールがガサついていて質感には乏しい。組み合わされるのは、電子制御フレックスロックアップ付き4段AT。変速はスムーズだし、エンジンブレーキをかけるためのシフトダウンもタイミングよく自然。みごとな縁の下の力もちぶりを見せる優秀なトランスミッションだ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
FF化にともない、サスペンションは前がマクファーソンストラット、後がトーションビームとなった。基本的には、イプサムベース。テスト車には、7.0万円のオプション装備「H∞-TEMS」と呼ばれるダンパー減衰力を可変コントロールするセミアクティブサスペンションが搭載されていた。ハンドリングには前輪駆動化されたことによる変な癖はなく、乗り心地も可もなく不可もなし。
(写真=高橋信宏)
【テストデータ】
報告者:金子浩久
テスト日:2001年11月22日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2001年型
テスト車の走行距離:242km
タイヤ:(前)195/65R15 91S/(後)同じ(いずれもトーヨーJ-31)
オプション装備:H∞-TEMS(7.0万円)/VSC&TRC(8.0万円)/ツインムーンルーフ(10.5万円)/クリアランスソナー&バックソナー(4.0万円)/イージークローザー+パワーアシストドア(14.0万円)/前席サイド&カーテンエアバッグ(7.0万円)/ノアライブサウンドシステム+リアシート液晶カラーTV+音声ガイド付きバックモニター+ブラインドコーナーモニター(50.8万円)/ホワイトパール塗装(3.0万円)/寒冷地仕様(4.5万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4):高速道路(6)
テスト距離:−−
使用燃料:−−
参考燃費:−−

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