スズキ・アルト ラパンX(2WD/4AT)【試乗記】
見かけ倒しじゃない 2002.02.09 試乗記 スズキ・ラパンX(2WD/4AT) ……110.6万円 「MRワゴン」とプラットフォームは同じでも、タマゴ型じゃなくて角の丸いハコ型デザインの「アルト ラパン」。フランス語で「ウサギ」を意味する名を持つ新型軽は、若い未婚女性をターゲットにつくられた。2002年1月29日、千葉県は幕張で開催された試乗会にて、自動車ジャーナリスト河村康彦が試乗した。オジサンも気になる
「ラパンとはフランス語で『ウサギ』のこと。20歳代の女性をターゲットユーザーとした、かわいいデザインのこのクルマにはぴったりのネーミングで……」と、こんな説明を聞いてしまうと、もはやリッパなオジサンの自分は思わず引いてしまう。とはいえ、「20〜30年前の家電や雑貨が持つ、暖かで人の心を癒すデザインにヒントを得た」というデザイナーのコメントには、共感を覚える。ハードウェアは、現行アルトのそれよりフロアパネルが進化した、「MRワゴン」のコンポーネンツを活用。スズキのブランニュー軽自動車だ。
つくり手側としてはオジサンが使うことなど全く想定していないに違いないモデルだが、実際に触れてみるとそんなオジサンにとっても、「これを若い女性の専用車としておくのはちょっとモッタイないゾ」と思わせる。
すべての窓を直立気味に配し、顔まわりの空間に余裕があるキャビンのパッケージングは、若いムスメだけでなくオジサンにとっても嬉しい。ちょっと背伸びをすればボンネットフードが運転視界内に入り、4.2mの最小回転半径による取り回しの良さは、“免許暦”の割に“運転暦”が伸びないオジサンにとっても有り難いものだ。見た目の質感はどこか昔のジャージ風ながら、座ってみると意外に腰があって長時間ドライブが苦にならないシートも、「腰痛」の二文字が気になるオジサンにとっては見逃せないポイントだ。直立したダッシュボードにビルトインされた小さな引出しなど、老後の健康を考えて止めよう止めようと思いつつ、なかなか手離せないタバコとライターを入れて置くには、ピッタリの大きさとカタチに見える。
驚かされる質感
「どうせ軽自動車なんだから……」と舐めてかかると、望外ともいえる仕上がり具合に驚かされるのが走りの質感。ノンターボの660ccエンジンが発するパワーは、800kgレベルの重量を持つクルマにとっては、さすがに少々荷が重いと感じる場面もある。4段ATの助けもあって、街中の一人乗りならば不満を抱くことはまずないが、今回の取材のように、webCG記者とカメラマンが乗ることになれば、構造欠陥としか思えない高速道路の短い合流レーン(しかも大抵上り坂!)で、結構度胸と緊張を強いられることになる。
けれども、走り出した瞬間から「しなやか」という形容詞すら使いたくなるフットワークテイストは、お世辞抜きで「トヨタ・ヴィッツ」や「日産・マーチ」などの小型車とさして変わらない印象。フロントシートより一段位置が高く、それゆえに前席乗員との会話も弾みやすいリアシートに座っても、酷い突き上げ感に悩まされたりすることはない。これならば、ヒョコヒョコと常に落ち着かない乗り心地を強要されるベストセラーカー、「ホンダ・フィット」のリアシートよりは、遥かに快適だとぼくは思う。
ハンドリングの印象は、率直なところ「まぁ、こんなものかな」といったところ。電動式パワーステアリングを用いるクルマは、中立付近の手応え感がどうしても油圧式に劣ることが多く、残念ながらラパンも例外とは言えない。今や軽自動車でも高速道路は100km/h走行がOKの時代なのだから、もう少しマシな高速操安性を望んでもバチは当たらないだろう。
というわけで、単なる見掛け倒しではなく、その“中身”についてもなかなか気合いの入ったラパン。でもでも、願わくはこれでもう少し男向き、オジサン向きのディテールデザインを備えたモデルも欲しいところ。全く同様のコンセプトで登場する後発モデル、「ホンダ・ザッツ」との戦いぶりにも注目したい。
(文=河村康彦/写真=清水健太/2002年2月)
「アルト ラパン」関連リンク
アルト ラパン発表会のニュースはこちら
自動車ジャーナリスト、河村康彦の動画による【新車ニュース】はこちら

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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