メルセデスベンツCクラス ステーションワゴン&スポーツクーペ【海外試乗記】
『予想通りと躍動感』 2001.04.10 試乗記 メルセデスベンツCクラスステーションワゴン/スポーツクーペ メルセデスベンツのCクラスファミリーが完成を見た。すでに発売済みのセダンに加え、2000年のパリサロンでお披露目された「スポーツクーペ」と、2001年のデトロイトショーで公開された「ステーションワゴン」が投入されたからだ。ちなみに、後者を敢えてアメリカで発表したのは、「Cのワゴンとしては、初めてアメリカ市場に参入する」ことと関係がありそう。日本市場には、クーペが2001年7月、ワゴンが同夏か秋に導入される予定という。![]() |
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ワゴンはV6がイイ
従来型よりも25mm全長の長い新型Cワゴンは、「先に出たセダンから誰もが予想できる仕上がりの持ち主」という印象のクルマだった。
ボディ骨格やエンジンバリエーションはセダンのそれに準じるが、そのスタイリングはいままで以上に若さを狙ったもの。「よりダイナミックでスポーティな雰囲気を強調することで、これまで47歳だったユーザーの平均年齢を45歳まで若返らせたい」とメルセデスはいう。
B、Cピラーをブラックアウトして室内容積の大きさを強調した上で、傾斜の強いDピラーで、ファッストバック調のプロポーションと見せるニューCワゴン。0.31という空気抵抗係数(CD値)と、前後ゼロリフトという優れた空力性能をもつ。それでいながら、ラゲッジルームのボリュームもじゅうぶん。通常の状態では470リッター。後席をダブルフォールディングさせることで、1384リッターまで拡大可能だ。
後方を振り返らない限りドライバーズシートから「ワゴン」と識別する術のないこのクルマ、走りのテイストもまた、セダンと基本的に共通だ。と言ったそばからなんだが、リアに大きな開口部が加わったため、ボディの剛性感は、正直なところわずかに落ちる。絶対的な剛性感は「ベンツらしい高さ」を保ってはいるが、セダンの、“鉄の塊をくりぬいたような”印象は、ワゴンでは享受できないのである。
新型ワゴンは、セダンと同様のエンジンバリエーションで日本に導入されるはずだ。つまり、2リッターおよび同スーパーチャージャー付きのインライン4、そして2.6リッターV6の計3種類。乗ってみて、直4ユニットよりV6エンジンの方がお似合い、という印象もセダンと共通だった。4気筒と6気筒では、エンジンの回転フィールが随分と違う。各部のクオリティが高い今のCクラスには、V6ユニットの方が合っている、とボクは思う。
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キッチリやります
一方、同じくCクラスとは名乗っていても、「ボディパネルはセダンと完全に別モノ」というブランニューモデルが「スポーツクーペ」である。まず、そのスタイリングに大きな魅力がある。
陽光輝くコートダジュールで出会ったCクーペは、パリサロンの人工的な光の下で目にしたのとはまた別の、さらに躍動感に富んだ印象を与えてくれた。ダークなカラーも悪くはないが、明るいグリーンや、鮮やかなレッドに彩られたボディが特にいい。同じホイールベースをもつセダンに対し、リアのオーバーハングを大幅(180mm以上)に詰め、逆にフロントオーバーハングはグリルのスラント角を増すことなどで約30mm延長。こうして、CLKやSLなどの、メルセデスの「クーペブラザーズ」のなかにあって、最もダイナミックなプロポーションを実現させた。
もう一点、オプション設定ではあるが、このクルマならではのアイテムが「パノラミック・スライディングサンルーフ」。フロント部分がアウタースライドする、つまり外側にスライドするダブルガラスサンルーフである。これを装着したCクーペは、フロントガラスからサンルーフを含むルーフ、そしてリアガラスにいたるまでが、ブラック一色で統一される。明るいボディカラーを選んだ場合、コントラストの強い2トーンカラーに見えるというわけだ。これもまた、スポーツクーペのデザインを特徴づけるポイントである。
日本に導入予定という2リッタースーパーチャージャー付き(C200K)を選んでテストドライブしたところ、まず印象に残ったのは、圧倒的に高いボディの剛性感。同じ骨格を用いながら180mmも短くなったことで、より剛性感が高く感じられるのだろう。
フットワークも、いかにもメルセデスらしい“しっかり感”が印象的。テスト車がローダウンサスを含めた「スポーツパッケージ」装着車だったこともあり、低速域での乗り心地はやや硬質なもの。が、速度が増すにつれフラット感もぐんぐんアップし、「いかにもドイツ車」という雰囲気をタップリと味わわせてくれた。
ただし、「与えられた仕事はキッチリやります」といった、しかし少々メリハリに欠けるエンジンフィールは、スポーティと表現するにはちょっと物足りない。ライバルたるBMWに付け入られるとすればこのあたりだろう。
間もなく登場する新型3シリーズコンパクトとの対決が楽しみである。
(文=河村康彦/写真=北畠主税/2001年2月)

松本 英雄
自動車テクノロジーライター。1992年~97年に当時のチームいすゞ(いすゞ自動車のワークスラリーチーム)テクニカル部門のアドバイザーとして、パリ・ダカール参加用車両の開発、製作にたずさわる。著書に『カー機能障害は治る』『通のツール箱』『クルマが長持ちする7つの習慣』(二玄社)がある。
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