MINI Cooper(5MT/CVT)【試乗記】
念入りにスポーティ、だが…… 2002.03.26 試乗記 MINI Cooper(5MT/CVT) ……225.0/235.0万円 「ミニの日」こと2002年3月2日からわが国でも販売が開始されたBMWいうところのFF“プレミアム”コンパクト「MINI」。ベーシックグレード「One」に続き、26PSアップの高性能版「Cooper」に、webCG記者が乗った。30万円高のスポーティバージョンやいかに?
![]() |
![]() |
![]() |
Cooperが7割
「いま黄色のMINI Cooper、そう、CVTのクルマを注文すると、いつごろ手元に届きますか?」
「そうですね、いまは3月ですから、5月からの生産ロットに入れて、その後、船で日本に運んで7月に入港、8月に納車といったところでしょうか」
2002年3月19日、「MINI Cooper」のプレス向け試乗会が神奈川県は大磯で開催された。BMWの担当者にMINIのデリバリーについて聞いてみたところ、上記のような回答をいただいた。MINI、人気である。
BMWの新しいブランドにして、戦略的なFF(前輪駆動)コンパクト「MINI」は、大きく3つにわけられる。ベーシックな「One」、エンジン出力を上げ、スポーツサスによって10mm車高が落とされた「Cooper」、そしてスーパーチャージャーを装備したホッテストモデル「Cooper S」である。「ミニの日」こと3月2日から販売が開始されたのは、OneとCooperで、それぞれ5MTとCVTが用意される。価格は、Oneが195.0/205.0万円(5MT/CVT)、Cooperが225.0/235.0万円。「プジョー206」よりちょい高く、「メルセデスベンツAクラス」よりすこし安い、野心的な値付けだ。
試乗会が行われた時点での予約状況は、全体の約8割がCVT、7割がCooperで、人気の色は、「赤」「銀」「黄色」の順。「BRG(ブリティッシュレーシンググリーン)」は、4位に甘んずる。
「先行予約されたのは、いわゆるクルマ好きの方が多く、30万円アップでCooperが買えるのなら……」ということで、上位グレードが過半数を占めたとBMWの担当者は分析する。「30万円なら……」とポンと言えるところが、さすが“プレミアムコンパクト”購入層である。ちなみに、年齢層は30代と40代が30%ずつ、20代が20%だという。趣味的要素に投資できる“働き盛り”が8割、と。
「男女比では、8割が男性ですが、これは男性名義でクルマを買われる方も多いので……」と、ホントはもっと女性が多いと言わんばかりなり。MINIをトレンドの波に乗せるには、女性の高い支持が必要ということでしょうか。
![]() |
![]() |
![]() |
Cooperの第一印象
街で見かけたMINIが「One」か「Cooper」かはすぐわかる。ルーフがボディ同色なのがOne、白か黒に塗られていたらCooperである。そのほか、Cooperは、前後バンパーにメッキモールが入り、ノーズ下部のメッシュグリルやテイルパイプもクローム仕上げとなる。フォグランプ、アルミホイールが標準で装備されることも見逃せない。
パワーソースの、BMWとクライスラーによる「ペンタゴン」ユニット、1.6リッター直4シングルカム16バルブという基本は変わらないものの、ベーシックモデルの最高出力90ps/5500rpm、最大トルク14.3kgm/3000rpmに対し、Cooperは「ピークパワー」「トルク」ともに発生ポイントを引き上げ、26ps増しの116ps/6000rpmと0.9kgm太い15.2kgm/4500rpmを得ている。上位グレード用にコンピュータチューンを施した、というより、Oneのそれは、Cooperのエンジンをより経済的にデチューンした、というのがBMWサイドの説明だ。また、マニュアルギアボックスにも手が入れられ、Cooperは加速性能を重視して最終減速比が3.563から3.973に落とされた。Oneとの棲み分けをハッキリさせるためか、内外とも念入りにスポーティな味付けが施されている。
比較の基準として、MINI One(5MT)に乗った後、Cooper(5MT)をドライブした。
「足、硬いなァ」というのが最初の印象である。テストコースとなった西湘バイパスは路面の継ぎ目がキツい道だから、なおさらそう感じたのかもしれない。そう考えながら、曲率が大きめなカーブが続く箱根ターンパイクを駆け上がると、Cooperを予約注文された7割の方には大変申し訳ありませんが、「これはイカン」と思った。
Cooperは「スポーツサスペンション」が与えられて車高が落とされているうえ、フロントに加えリアにもアンチロールバーが装備される。MINI Oneもコーナリングで感じるロールが少ないタイプだが、Cooperはもっと少ない。そのうえ、“曲がり”でのステアリングが粘つくように重く「タイヤのグリップに頼っている感じ……」と頭のなかでノートを付けていたら、お借りしたクルマ、オプションの16インチ(195/55R16)を履いてました。
一緒に取材に赴いた自動車雑誌『NAVI』のサトウ記者が、薄緑のCooper(15インチ装着車)から「なかなかイイですね」と笑顔で出てきたので、さっそく拝借して乗ってみたところ、たしかに路面へのあたりが柔らかい。「最初にコッチをドライブしていれば……」と、先ほどのメモに赤を入れながらしばらくステアリングホイールを握っていたが、依然として「ロール問題」(?)は残っており、第一印象の悪さを払拭するにはいたらなかった。
オートマみたい
感心したのは、続いて乗ったCooperのCVTである。まるで普通のトルコン式オートマチックトランスミッションのようだ、といのがほめ言葉になっているかはわからないが、ガスペダルを踏む量に比例して、違和感なくスタイリッシュな3ドアボディを運ぶ。
CVTは、2つのプーリーを使い、双方のV字溝の幅をコントロールすることでギア比を変える。また、MINIは、スロットルペダルとエンジンを電気的結ぶ「Eガス」ことフライバイワイヤが採られた。つまり、エンジン、トランスミッションとも、エンジニアによるチューニングの自由度が高いわけだ。そのうえ、日本向けMINIのCVTに関しては、BMWジャパンの要望が大いに取り入れられたという。日本のトランスミッション担当者は、きっと「オートマっぽいのがイイ」と考えたのだろう。もちろん、ローバー100シリーズに起源を求めることができるZF製CVTは、湿式多版クラッチを電子制御することでクリープもつくり出す。
MINI Cooper(CVT)は、セレクターを「D」から「M/S」に移せば、ビーエム自慢の「ステップトロニック」を駆使してシーケンシャルシフトを楽しむこともできる。シフト方法は、バイエルン流に、押すとダウン、引くとアップである。タコメーターのレッドゾーンはMTモデルの6750から5500に引き下げられるが、それでも6000rpmまでフルスケール使ってのドライブが可能だ。いまひとつ個性が足りない新型1.6リッターであるが、ブン回せば、古典的なプレジャーを絞り出せる。
大磯の街なかをCooper無段変速モデルで流しながら、日本市場でのMINIの4つのモデルラインナップを考える。OneとCooper。MTとCVT。個人的には、Oneの方が好きだ。MTもいいけれど、CVTのデキも文句ないから、左手、左足を駆使することに喜びを見いだすヒトでなければ、無段変速機でいいだろう。すると……、早急にOneのCVTモデルに乗る必要があるな、と思った。しかし試乗時間は終わってしまった。ベストMINIの選出は、しばらくおあずけである。
(文=webCGアオキ/写真=望月浩彦/2002年3月)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
-
MINIジョンクーパーワークス(FF/7AT)【試乗記】 2025.10.11 新世代MINIにもトップパフォーマンスモデルの「ジョンクーパーワークス(JCW)」が続々と登場しているが、この3ドアモデルこそが王道中の王道。「THE JCW」である。箱根のワインディングロードに持ち込み、心地よい汗をかいてみた。
-
ホンダ・アコードe:HEV Honda SENSING 360+(FF)【試乗記】 2025.10.10 今や貴重な4ドアセダン「ホンダ・アコード」に、より高度な運転支援機能を備えた「Honda SENSING 360+」の搭載車が登場。注目のハンズオフ走行機能や車線変更支援機能の使用感はどのようなものか? 実際に公道で使って確かめた。
-
ホンダ・プレリュード(FF)【試乗記】 2025.10.9 24年ぶりに復活したホンダの2ドアクーペ「プレリュード」。6代目となる新型のターゲットは、ズバリ1980年代にプレリュードが巻き起こしたデートカーブームをリアルタイムで体験し、記憶している世代である。そんな筆者が公道での走りを報告する。
-
日産リーフB7 X(FWD)/リーフB7 G(FWD)【試乗記】 2025.10.8 量産電気自動車(BEV)のパイオニアである「日産リーフ」がついにフルモデルチェンジ。3代目となる新型は、従来モデルとはなにが違い、BEVとしてどうすごいのか? 「BEVにまつわるユーザーの懸念を徹底的に払拭した」という、新型リーフの実力に触れた。
-
アストンマーティン・ヴァンキッシュ クーペ(FR/8AT)【試乗記】 2025.10.7 アストンマーティンが世に問うた、V12エンジンを搭載したグランドツアラー/スポーツカー「ヴァンキッシュ」。クルマを取り巻く環境が厳しくなるなかにあってなお、美と走りを追求したフラッグシップクーペが至った高みを垣間見た。
-
NEW
MTBのトップライダーが語る「ディフェンダー130」の魅力
2025.10.14DEFENDER 130×永田隼也 共鳴する挑戦者の魂<AD>日本が誇るマウンテンバイク競技のトッププレイヤーである永田隼也選手。練習に大会にと、全国を遠征する彼の活動を支えるのが「ディフェンダー130」だ。圧倒的なタフネスと積載性を併せ持つクロスカントリーモデルの魅力を、一線で活躍する競技者が語る。 -
NEW
なぜ給油口の位置は統一されていないのか?
2025.10.14あの多田哲哉のクルマQ&Aクルマの給油口の位置は、車種によって車体の左側だったり右側だったりする。なぜ向きや場所が統一されていないのか、それで設計上は問題ないのか? トヨタでさまざまなクルマの開発にたずさわってきた多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】
2025.10.14試乗記2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。 -
ただいま鋭意開発中!? 次期「ダイハツ・コペン」を予想する
2025.10.13デイリーコラムダイハツが軽スポーツカー「コペン」の生産終了を宣言。しかしその一方で、新たなコペンの開発にも取り組んでいるという。実現した際には、どんなクルマになるだろうか? 同モデルに詳しい工藤貴宏は、こう考える。 -
BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】
2025.10.13試乗記BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。 -
マツダ・ロードスターS(後編)
2025.10.12ミスター・スバル 辰己英治の目利き長年にわたりスバル車の走りを鍛えてきた辰己英治氏。彼が今回試乗するのが、最新型の「マツダ・ロードスター」だ。初代「NA型」に触れて感動し、最新モデルの試乗も楽しみにしていたという辰己氏の、ND型に対する評価はどのようなものとなったのか?