フォルクスワーゲン・パサートワゴン1.8T(5AT)【ブリーフテスト】
フォルクスワーゲン・パサートワゴン1.8T(5AT) 2001.04.12 試乗記 ……370.0万円 総合評価……★★★★なが〜い友だち
もともと無愛想なスタイリングなうえ車体後半のマスが大きくなって……、しかしホイールアーチをアウディ風に強調、Dピラーをわずかに寝かすことで、“ドン臭く”なる一歩手前で踏ん張ったパサートのワゴン版。セダン同様、内外装の品質感の高さが大いなる美点。国民車(Volkswagen)の、とはいえ、さすがはフラッグシップ。テスト車の黒内装だと、華やかさはないけれど。1.8リッター5バルブターボは、低回転域からノッペリトルキー。レスポンスもパワーの盛り上がりもごく自然。スロットルペダルを踏み込むとかすかに聞こえる「ヒーン」という音で、過給機付きとわかるだけ。ハンドリングもドライブフィールも平凡な一方、イヤなところもない。370.0万円という車両本体価格を、長いスパンでドライバーに還元するタイプ。つまり、飽きがこなくて、長くつきあえそう。もともと「飽きてる」とも言えますが
【概要】 どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1996年8月にセダンが登場した4代目パサート。アウディA4用をストレッチしたフロアパネルを用いるフォルクスワーゲンの旗艦である。97年に、ワゴンと4WDモデル「シンクロ」が加わった。2000年10月に開催されたパリサロンで、いわゆるビッグマイナーチェンジを受け、ドアとルーフ以外のボディパネルを一新した(日本には2001年秋に導入予定)。本国では、1.6リッター直4から用意されるが、日本には、1.8リッター直4ターボと、2.8リッターV6の2種類が輸入される。
(グレード概要)
パサートワゴンも、セダン同様、1.8リッターターボ搭載のFFモデルと、2.8リッターV6のヨンク版「シンクロ」が用意される。外観では、シンクロではディスチャージ式のヘッドランプがFF版はハロゲン、内装では、レザーシートに対し「レザー+アルカンタラ」となるのが大きな違い。また、4WDモデルには、マルチメディアステーションと呼ばれるナビゲーションシステム+CD/MD/ラジオが標準で装備されるが、1.8TではCD/MD/ラジオとなり、ナビはオプション扱いとなる。
【車内&荷室空間】 乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
黒一色。実用一点張りの“ヤボ”ともいえるインパネまわり。とはいえ、マットブラックのシボに覆われた樹脂類の質感は悪くない。開閉が見た目に明確なエアコン吹き出し口がいい。テスト車のセンターコンソールはアルミパネルだが、2001年モデル(と便宜上呼ぶ)からは、1.8Tも「シンクロ」同様ウッドパネルとなる。
(前席)……★★★★
ザックリと織られたファブリックの、これまた愛想のないシート。クッションのあたりは硬めだが、座面のハイトコントロール、ダイヤル式のリクライニング調整、脊椎に合わせて腰部分の背もたれを押し出す機能と、フィッティングデバイスは豊富。次第に体がなじんでくる。さらにステアリングホイールがチルト(上下)、テレスコピック(前後)するので、好みのドライビングポジションがとれる。なお、2001年モデルからは、バックスキン調のアルカンタラとレザーのコンビネーションシートになる。
(後席)……★★★★
前席と同じ、硬めの座り心地。座面は高めで、ヒザから下は立ち気味になる。頭上、ヒザ前、頭のまわりと、不満のないスペースが確保される。ルーフラインが下がったパサートセダンより、はるかに合理的な後席だ。
(荷室)……★★★
最大床面幅118cm、奥行き110cm、パーセルシェルフまでの高さ45cm。サスペンション類の張り出しが少なく、フラットで、使いやすそうなラゲッジルームだ。ホイールハウス後方の両サイドには物入れが用意される。黒く厚めのトノカバーは、「何が積まれているのか?」と疑念を呼び起こすほど完全に荷室を覆い隠す。
【ドライブフィール】 運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
スロットルペダルを踏み込む際のかすかなタービン音で、ターボユニットと知る1.8リッター直列4気筒20バルブユニット。低回転域からトルキー、そのうえスムーズに回転を上げる。5段ATとのマッチングも良好で、細かく切られたギアがスロットル操作に律儀に、かつショック少なく反応するので、痛痒感なく走れる。シーケンシャルシフトが可能なティプトロニック付き。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
フリーウェイで抜群に光るフラットな乗り心地。アウトバーンゆずりというか、ドイツの土着性が強いというか。街なかでは路面の凹凸を拾うが、カドが取れて入力するので、不快ではない。ワゴンを感じさせない高いボディの剛性感。ハンドリングは素直で安定志向。ドライバーはともかく、クルマが取り乱すことはない。
(撮影=難波ケンジ)
【テストデータ】
報告者:webCG青木禎之
テスト日:2001年4月6日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2000年型
テスト車の走行距離:2641km
タイヤ:(前)195/65R15 91V/(後)同じ(いずれもMichelin Pilot HX)
オプション装備:--
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(7):山岳路(1)
テスト距離:381.9km
使用燃料:38.5リッター
参考燃費:9.9km/リッター

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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