ジャガーSタイプ3.0V6スポーツ(5AT)【ブリーフテスト】
ジャガーSタイプ3.0V6スポーツ(5AT) 2000.12.02 試乗記 ……700.8万円 総合評価……★★★★ネコにマタタビ、ジャガーにP-Zero
「3.0V6スポーツ」は、日本市場専用モデル。本国はじめアチラのマーケット(大人気だ)で展開されている「R-パフォーマンス」なるオプション群から、コレと思われるアイテムをチョイスして装着したもの。ベンツでいう「アバンギャルド」(とかAMGのマイルド系)、あるいはビーエムにおける「M-スポーツ」みたいなものだと思えばいいだろう。
普通のSタイプとの最大の違いはアシ、およびタイヤだ。スポーツが履いているのは、かの名品ピレリのP-Zeroのみ。245/40ZR18といわれると、「ガチガチか」と一瞬ヒくが、そこはさすがP-Zero。乗ったら全然オッケーだった。むしろ、これこそは最良のSタイプではとすら思った。乗りアジ操縦性ともに、これは「トケちゃう」ヒトが多いのではないか。
もっというと、このスポーツはいわゆるジャガー風味が日本仕様Sタイプのなかではもっとも濃厚。アバンギャルド系もM-スポーツ系も乗ると「ノーマルでいいのになあ」と思わされるところが少なからずあるが、Sタイプのスポーツに関しては特になし。これは特記すべき事項ではないか。けっこう朗報。
【概要】 どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1996年6月に本国では発売されたミディアムジャガー。リンカーンLSとプラットフォームを共用することが話題になった。エンジンは、フォード・モンデオのコンポーネンツを使った3リッターV6と、ジャガー「純正」4リッターV8の2種類。いずれも5段ATと組み合わされる。XJシリーズより低い価格帯を設定、新しい顧客層の開拓に成功した。
(グレード概要)
日本市場におけるジャガーSタイプのいわゆる「2001年モデル」は、「3.0V6」(578.0万円)、装備充実の「同SE」(640.0万円)、新グレード「3.0V6スポーツ」(685.0万円)、V8モデル「4.0V8」(763.0万円)の4種類。「スポーツ」は、いわば足を硬めた「SE」。レートの高いスプリングと、ダンパーの減衰力を電子制御するアクティブサス「CATS」を備え、アンチスピンデバイス「DSC」を標準装備する。アルミホイールは、BBS製18インチ。
【車内&荷室空間】 乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★
このダッシュボード造形は、ハッキリいって成功作とは認めがたいモノがある。というかジャガーの水準に達していない。伝統的な持ち味であるボリュームの小ささ、つつましさを守りつつも最近流行のボリューム感はたっぷり演出する。そういうワザがXJやXKではけっこうサエていたのに。これはただ、デカいだけ。
逆光条件でダッシュボードの天盤部分がガラスに映りこむのも要改善。またグラフィックなデザインに関しては、ナニやらうだつの上がらないビジネスライクさが残念。ジャガーもそのへんは重々承知のスケらしく、最新のXタイプでは直ちに修正してきている。なお、どこぞのクルマと違ってモニター画面が強制装着されてこないところは大いに救い。
(前席)……★★★
座面・背もたれともサイズはたっぷりしている。かけ心地も同様にたっぷりしていて安楽だ。ただ角度調整を、座面と背もたれで別個に、というのはいただけない。座面を調整すると背もたれとの位置関係が変わってしまうため、調整可といいつつ実はスイートスポットは限定される。ちなみに、同じような機構をもつ国産車は、そのスイートスポットがハナから存在しないせいもあるのか、もっとずっとゴマカシ上手。
なお、横方向のサポート環境はかなり心もとない。たとえばXJの場合は空間自体がきわめてタイトなのでドアやセンタートンネルが巧妙に支えてくれるが、S タイプのドライバーズ空間は普通に幅広なのでそれがない。また着座位置も基本的に高い。あと、このモデルから左足用のフットレストが装着された。位置や形状が完璧とはいいかねるが、いいニュースではある。
(後席)……★★★★
一般的にいって、後席に座って「すごす」、というか「移動する」ならジャガーはSタイプにかぎる。XJとの差はかなりデカい。Sタイプの後席は、空間、かけ心地ともたとえば5シリーズに遜色ないレベルに達している。というか、XJがそうであるような特殊な環境ではない。前席同様、こちらもシートはデカい。安楽。
(荷室)……★★★
ドイツの各種競合モデルと較べたときにSタイプが特殊なのは、ひとつには(たぶん)エアロ性能、より正確には、空気抵抗係数を気にしていないこと。空力向上のひとつのカナメであるハイデッキ=高いトランクは、ジャガー流スタイリングと基本的にケンカする関係にある。そして、ハイデッキは一方でトランク容量を稼ぐうえでも武器になる。Sタイプのトランクは、床面最大幅、奥行きとも110cm、高さ43cm。まあ、パッと見明らかに狭すぎて困るようなモノではない。
【ドライブフィール】 運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
V6。センの細げな音、振動、および加速感等は基本的にジャガーらしくてヨイ。反面、日産グロリアのとき感じた「これ2.5 じゃない?」的なモノ足りなさもない。純ジャガー製V8じゃないと満足できない、ということはない。エンジンにかぎらず、個人的にフォードFR車とジャガー車は乗りアジがどことなく似ていると思う。ということで、本格的な“結婚生活”はウマくいくのではないか。
オートマは、まずJ ゲートのレバーの操作感が独特かつ甘美で加点要素。マニュアルシフトは急がず、上品に。ひっちゃきになってトバすと変速のタイムラグ等気になるかもしれないが、クルマとコミュニケーションするなかで自然と盛り上がる範囲では別に問題なし。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
かなり素晴らしい。これでクルマのブランドがジャガーでなかったら★★★★★でもよかったぐらいだ。指定銘柄らしきピレリP-Zeroは、さしずめカーフ(子牛)の一枚皮でできてるんじゃないかとすら思わすしなやかさ。サイドウォールは1プライでサイドが弱めなので、キャッツアイの踏みつけ等は厳禁のうえにも厳禁。イッちゃうと高い(1本8万円ほどとか)。
そのP-Zeroの絶品のアジを生かすべく専用チューニングが施されたと思われるアシ。副作用(?) として、走りの感触は経験者なら誰でもウットリ思い出すXJのそれにかなり近づいた。また一方、本気でゴリゴリやったときにタフなのはおそらくXJよりもSタイプのシャシーだ。「スポーツ」ということで、もっとガキガキのアシやタイヤを期待したヒトは、AMGのE55+ミシュラン Pilot Sprtあたりで満足していただきたい(あれはあれで素晴らしい)。
(写真=河野敦樹)
【テストデータ】
報告者:森慶太
テスト日:2000年11月31日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2000年型
テスト車の走行距離:1901km
タイヤ:(前)245/40ZR18 97Y/(後)同じ(いずれもPirelli P-Zero Asimmetrico)
オプション装備:電動スライディングガラスサンルーフ
テスト形態:ロードインプレッション(プレス向け試乗会)
走行状態:市街地(8):山岳路(2)
テスト距離:-
使用燃料:-
参考燃費:-

森 慶太
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