レクサスGS450h“Fスポーツ”(FR/CVT)【試乗記】
あとは色気 2012.05.21 試乗記 レクサスGS450h“Fスポーツ”(FR/CVT)……889万4600円
「レクサスGS」のフルモデルチェンジに伴い、ハイブリッドモデル「GS450h」も新型に。その走りを、スポーティーバージョンの“Fスポーツ”で試した。
武闘派のエコ仕様
6年半ぶりにフルチェンジした「レクサスGS」シリーズの目玉が、「450h“Fスポーツ”」である。
新しいスピンドルグリルをメッシュで覆い、専用のエアロバンパーや19インチホイールをまとったいでたちは、かなりの武闘派なのに、パワーユニットは「免税」のハイブリッド。ある意味、レトロフューチャーな高級高性能セダンである。
シャシーをスポーティーチューンしたFスポーツ仕様は、新登場の2.5リッターを含めて、すべてのGSラインに用意される。Fスポーツの導入で、いまひとつ地味だったGSのキャラを立てた感じだが、やはりレクサスは敷居が高い。「250」でも590万円、「450h」のFスポーツは800万円に達する。完全に敵は高価な欧州高性能セダンである。
4.6リッターV8に代わってGSの最強パワーユニットになった3.5リッターV6ハイブリッドは、旧「450h」と比べると、燃費の改善が大きな特徴だ。18.2km/リッターのJC08モード審査値は約4割向上している。
450h“Fスポーツ”に乗ったのは、新型「RX」との合同試乗会だった。RXにも3.5リッターハイブリッドの「450h」があるが、ポート噴射のRXに対して、GS用は筒内直接噴射+ポート噴射の直噴D-4Sユニットで、エンジン自体のパワーもRXの249psを大きくしのぐ295psになる。
もちろんこちらは、FRだから縦置き。147kW(200ps)のモーターもRX450hより強力だが、向こうは4WD仕様だと後輪にもモーターが付く。
ドイツのライバルと比べたら……
「クリムゾンクリスタルシャインガラスフレーク」。なにごとかというと、試乗車のボディーカラーである。2代目GSの新色で、簡単に言えば、光沢のあるエンジ。このクラスの高級セダンにしては珍しい、派手な色だ。
一方、インテリアはブラック。スポーティー、イコール黒内装とはちょっとアナクロだと思うが、しかしRXと違って、GSはFスポーツでもアイボリーやワインやブラウンといったお金持ちな内装色を選ぶことができる。
走りだした第一印象は、ステアリングがけっこうズシリと重い。ブラックインテリアともあいまって、スポーツセダンの予感が高まる。といっても、今回は60分の試乗だったため、ニュルブルクリンクで鍛えたというシャシー性能を十全に試すようなことはできなかったが、「ポテンザRE050A」を履く足まわりからは、低速でもうずくようなスポーティーさが伝わってくる。
Fスポーツを含めて、GSの上級モデルには“ドライブセレクト”が備わる。センターコンソールのダイヤル操作で、クルマのキャラクターを4段階に変えられる機構だ。
最上級の“SPORT S+”を選ぶと、加速のレスポンスだけでなく、シャシー制御もスポーティーになる。
ただ、乗り心地も相応の影響を受け、タイヤがややバタつく。旧型のGSにも感じたが、フロアまわりの剛性感がもっとほしい。800万円クラスのドイツ製セダンと比べたとき、まだ改善の余地があるのはボディー剛性である。この日は、試乗会の会場にたまたま新型「アウディS4」で乗りつけたこともあって、余計にそう感じた。
速さだったら負けてない
295psのエンジンと、200psのモーターが協調するハイブリッドパワーは申し分ない。同行したアウディS4と、高速域で横一線のヨーイドンをやってみると、GS450h“Fスポーツ”は、勝てはしないが、大きく遅れをとることもない。
333psを発するシャープな3リッターV6スーパーチャージャーと、反応の鋭いツインクラッチ変速機にものを言わせて、最初にS4が半車身のリードをとるが、GSもそれ以上離されることはなく、追いすがる。アウディ自慢の高性能ミディアムセダンといい勝負をするのだから、このエコカーは大したものである。ちなみに、試乗車のトリップコンピューターは9.3km/リッターの平均燃費を示していた。
しかし、絶対的なパワーには目を見張るものの、高性能車のパワーユニットとしてはやや色気を欠く。フルスロットルを与えてスクランブル体制に入ると、直噴3.5リッターV6の音やバイブレーションがそれなりに高まるが、それがやや大味に思える。
Fスポーツという専用の足まわりを得て、世界の高性能スポーツセダンに真っ向勝負を挑むなら、ハイブリッドユニットももう少しスイートなほうがいい。つまり、そっちの列に並ぶなら、エモーショナルな要素もほしいと思った。それがこの日の短い経験で得た結論だ。
ひときわアグレッシブな顔をした800万円の国産高級高性能ハイブリッドスポーツセダン。初のジャンルを切り開いたこのクルマは、果たしてどんなユーザーを開拓するのだろうか。
(文=下野康史/写真=高橋信宏)
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下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
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