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【スペック】全長×全幅×全高=4795×1915×1310mm/ホイールベース=2750mm/車重=1810kg/駆動方式=FR/5リッターV8DOHC32バルブスーパーチャージャー付き(550ps/6500rpm、69.3kgm/3500rpm)/価格=1750万円(テスト車=1759万9000円/20インチ Vulcanアロイホイール<グロスブラックフィニッシュ>=9万9000円)

ジャガーXKR-Sクーペ(FR/6AT)【試乗記】

スーパーカーの領域へ 2012.04.30 試乗記 サトータケシ ジャガーXKR-Sクーペ(FR/6AT)
……1759万9000円

見るからに武闘派ないでたちの、ジャガー史上最強の公道マシン「XKR-Sクーペ」。ノーズ下に550psを湛(たた)える、その振る舞いはいかに?
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下っ腹に響く“目覚め”

ボンネットフード前端のスリット、ロワースポイラー、左右フロントフェンダー部のインテーク、リアにまわるとウイングにディフューザー。「ジャガーXKR-Sクーペ」の外観はレーシーとやりすぎのぎりぎりのセンにある。自分も、「やりすぎ」だと感じたひとりだ。ジャガーはこんな武闘派の領域には立ち入らず、優雅に上品に、午後の紅茶を味わうように愛(め)でるスポーツカーであればいいのではないか、と。

ただし、90分間の試乗を終えて考えを改めた。ジャガーは変化、進化している。それなのにいつまでも「ジャガー=雅(みやび)なブランド」だと思い込んでいるのは、日本人は今でもちょんまげを結っていると信じ込んでいるようなものだ。
もちろんジャガーならではの変わらぬ魅力もあるけれど、ジャガーのダイナミックレンジは確実に広がっている。

ヘッドレストに「R-S」ロゴが刻まれた専用のパフォーマンスシートに腰掛けて5リッターのV8スーパーチャージド・ユニットを始動、「ボム!」という下っ腹に響く音とともに550psが目覚める。
走りだしが軽い、と感じたのは、最高出力/最大トルクが「XKR」の510ps/63.7kgmから550ps/69.3kgmへと増量されつつ、しかも1810kgの車重は据え置きだからだろうと思っていた。けれども、どうやらそれだけではない。XKR-Sクーペ専用チューンを施したパフォーマンスアクティブエキゾーストの排気音が、軽快に走っているように感じさせるのだ。

フロントのサイドインテークとカーボンスポイラーが迫力ある表情を形作る。
フロントのサイドインテークとカーボンスポイラーが迫力ある表情を形作る。
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ウォームチャコールのソフトグレインレザーで覆われた専用のインテリア。
ウォームチャコールのソフトグレインレザーで覆われた専用のインテリア。
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5リッターV8スーパーチャージド・エンジンは550psを発生。
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ほれぼれするエキゾーストサウンド

アクセルペダルを軽く踏めばホロホロと軽やかに、もうちょい踏むとバリバリと力強く、さらに思いきり踏みつければカーンという乾いた音が空に突き抜ける。この音色の変化を味わうためにアクセルペダルを踏んだり離したりしたくなるほど、エキゾーストサウンドは魅力的だ。

音だけでなくレスポンスも敏感で、エンジン回転が低い状態でアクセルペダルを操作したときのピックアップもいい。おそらく6ATのセッティングもどんぴしゃなのだろう、アクセルペダルの微妙なオン・オフを丁寧に拾ってくれる。

一般道での試乗だったので全開にできるのはほんの一瞬であるけれど、音とレスポンスのおかげで、パーシャルスロットルでもいいモンを操っているという実感を手に入れることができる。
「JaguarDriveコントロール」をダイナミックモードにセットすると、レスポンスはさらにシャープになり、6ATのシフトスピードも速くなる。変速時のショックもそれなりに大きくなるけれど、頭の中が白くなって体温も上がってしまうので、シフトショックなんて些細(ささい)な問題に思えてしまう。

と、ついエンジンにばかり目が行ってしまうけれど、XKR-Sクーペがその真骨頂を見せるのは、やはり道が曲がってからだ。道が曲がりくねるにつれ、スピードが上がるにつれ、どんどん車体が軽く、小さくなっていくかのような錯覚に陥る。

エキゾーストサウンドには独自の迫力あるチューニングが施されている。
エキゾーストサウンドには独自の迫力あるチューニングが施されている。
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0-100km/h加速:4.4秒、最高速300km/hという動力性能がうたわれる。
0-100km/h加速:4.4秒、最高速300km/hという動力性能がうたわれる。 拡大
16方向調整が可能なパフォーマンスシート。ヘッドレスト部には“R-S”のロゴが。
16方向調整が可能なパフォーマンスシート。ヘッドレスト部には“R-S”のロゴが。 拡大

スーパースポーツの文法に添った仕上がり

きっちりと路面からのインフォメーションを伝えるステアリングホイールを切ると、切ったぶんだけノーズが向きを変える。550psの大パワー車であるのに、コーナリングフォームに大味なところがないのは特筆モノ。「えいやっ!」とあてずっぽうにステアリングホイールを切るのではなく、次のコーナーへの進入ルートを先読みしながら、丁寧に操作をしたくなる。
ダンパーとスプリングに専用のセッティングを施し、10mm車高を引き下げるなどして最適化を図ったというけれど、その効果は確実に表れている。

大パワーに対するブレーキの効きは十分で、かっちりとしたペダルのフィールも好印象。試乗コースの舗装状態がよかったことは差し引く必要はあるけれど、前255/35ZR20、後295/30ZR20というデカくて薄っぺらいタイヤを履く割には乗り心地も悪くない。
総じて、速くて洗練されているという、コンテンポラリーなスーパーカーの流れにのったクルマに仕上がっている。

ジャガーは特に日本市場にあっては、「ジャガーだから多少のユルさに目をツブろう」という、特別なポジションにあった。ただし、XKR-Sクーペに乗ると、ドイツ勢に真っ向から勝負を挑もうとしていることがよくわかる。「XJ」や「XF」など、デザインにおけるチャレンジにばかり目が向いてしまうけれど、ジャガーはパフォーマンスにおいても新しいステージへ踏み出しているのだ。

(文=サトータケシ/写真=小林俊樹)

タイヤサイズは前255/35ZR20、後295/30ZR20。ピレリPゼロを装着。
タイヤサイズは前255/35ZR20、後295/30ZR20。ピレリPゼロを装着。
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300km/hまで刻まれた速度計。
300km/hまで刻まれた速度計。 拡大

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サトータケシ

サトータケシ

ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。

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