第177回:交通安全を「足元」から支える
ブリヂストンの安全啓発イベントをリポート
2013.04.16
エディターから一言
第177回:交通安全を「足元」から支える ブリヂストンの安全啓発イベントをリポート
「春の全国交通安全運動」の時期ということもあり、日本全国で安全にまつわる取り組みが実施される4月。自動車メーカーはもちろん、タイヤメーカーもこの時期にはさまざまなイベントやセミナーを催している。そこで今回は、ブリヂストンが2013年4月8日に実施した、メディア向けの安全啓発イベントの模様をリポートしよう。
消費者はもちろん作業現場の安全も大事
「ボン」という大きな音がして、タイヤのそばに立っていた黒いダミー人形が吹っ飛ぶ。あっという間の出来事で、最初の実験では、カメラを構えていたのにシャッターが間に合わなかった。
これはブリヂストンが実施した安全に関する取り組み説明会のひとコマ。大型トラック用タイヤの空気充てん作業中に発生する、破裂事故を再現したものだ。
ブリヂストンといえば、押しも押されもしないタイヤメーカーの最大手だ。それだけに安全に関する取り組みにも積極的で、11年ほど前から「タイヤセーフティー活動」の名のもとにさまざまなセミナーやイベントを開催。空気圧の点検や残り溝のチェック、買い替え時期の確認といった、タイヤの日常点検の重要性を訴えてきた。
またこうした「消費者の安全」に加えて、ブリヂストンでは販売店における「作業安全」も重視。安全に作業をするための用品の開発や、マニュアルの製作、「技能オリンピック」の開催など、幅広い取り組みを通して安全性の向上に努めてきた。
冒頭のバースト実験は、こうした活動の一環である販売店向けの安全作業講習会において実施されているものだ。実はタイヤへの空気充てん作業中の事故は、ブリヂストンが把握しているものだけでも年に10〜30件のペースで発生。時には作業員が命を落とすケースもあるのだとか。
この実験は、そうした事故の危険性と、作業安全の重要性を知ってもらうために実施しているものなのだ。
バーストの破壊力は想像以上
報道陣向けの実験は、ブリヂストン東京工場内のグラウンドで行われた。
スタッフの案内で会場に着くと、真っ先に渡されたのが白いヘルメット。さらに「けっこう大きな音がしますので、必要な人は耳栓もどうぞ」とのこと。記者はノミの心臓の持ち主なので、ご厚意に甘えることにした。
「安全囲い」と呼ばれるケージに、あらかじめ一部のスチールコードに傷をつけたタイヤをセット。そばに作業員役のダミー人形を立て、いよいよ実験がスタートした。
カメラを構えつつ、「トラック用のタイヤは、だいたい800kPaくらい空気を入れるんですよ」というスタッフの説明に耳を傾けていると、ケージの方から「ブツ、ブツ」という音が。空気圧でスチールコードがちぎれる音だ。10メートル以上離れた場所でも聞こえるのだから、けっこう大きい。
そして「空気圧が400kPaを超えました」というアナウンスから程なくして、タイヤは「ボン」と破裂した。
衝撃でひっくり返ったダミー人形を尻目に、スタッフがタイヤを運んでくる。ばっくりと割れたサイドウオールから、破断したスチールコードがのぞいていた。
「今のは440kPaくらいの空気圧でバーストしましたけど、『満タン』に近い700とか800kPaで破裂すると、もっとすさまじいですよ」
800kPaといえば、乗用車の空気圧のおよそ4倍。それが破裂するのだから、その威力や推して知るべしだろう。
作業は念にも念を入れて
ところで、そもそも読者のみなさんは、大型トラック用タイヤの空気充てん作業がどういったものかご存じだろうか? 恥ずかしながら記者は知らなかった。説明会で技能オリンピックの映像を見せてもらって、初めて知ったのだ。
もちろん、店によってやり方はまちまちなのだろうが、ここでは映像で紹介された、ブリヂストンが推奨する作業風景を紹介しよう。
まずは、カラーコーンなどで作業スペースを仕切り、タイヤの空気充てん作業に入ることを他の作業員に声で知らせる。次にトラックをジャッキアップ。車体から空気の抜けているタイヤを外すと、目視で傷の有無などを確かめる。空気の充てんはその後なのだが、ブリヂストンの直営店では、バースト実験でも使われていた安全囲いと呼ばれるケージにタイヤを入れて、作業を行うのだ。理由はもちろん、万が一タイヤが破裂した際の被害を抑えるためだ。
しかも、空気を入れ終えても、すぐにはタイヤをトラックに装着しない。充てん後に5分間放置して、それでも異常がないことを確認してから装着するのだ。
ブリヂストンではタイヤだけでなく、こうした作業に使用する機材も作っている。最近では安全囲いに装着する「爆風保護シート」を開発。これから直営店への配備を進めていくとのことだった。作業安全については「念には念を入れて」ということなのだろう。
余談だが、こうした空気充てん中の事故は乗用車用タイヤでも発生する。ガソリンスタンドなどで空気を入れる際には、一度タイヤの状態を確認するようにしたい。
ランフラットタイヤの課題
今回の説明会では、ここまで紹介してきたタイヤのバースト実験のほかに、ランフラットタイヤの比較試乗も実施された。
ランフラットタイヤとは、空気圧がゼロの状態でも80km/hの速度で80kmの距離を走れるタイヤのこと。サイドウオールを補強することで、パンクしてもタイヤがつぶれないようにしているのだ。今回の試乗は、空気を抜いたノーマルタイヤとランフラットタイヤの装着車を、実際に乗り比べるというもの。コースは駐車場内を小さく1周するだけなのだが、それでも両者の違いははっきり感じられた。
ノーマルタイヤは完全につぶれており、ハンドルがとられるうえに、アクセルを踏んでもなかなか前に進まない。一方ランフラットタイヤは、「違和感がない」とまでは言えないものの、まだ走りだしが軽く、ハンドルのとられ方も穏やかだった。さすがにこの状態で80km/hのスピードを出し、80km先まで行ってやろうとは思わないが、最寄りのタイヤショップまではなんとか走れそうな気がした。
ブリヂストンでは、2011年に初めてランフラットタイヤを市販化。サイズのラインナップを広げてきたが、残念ながらなかなか普及は進んでいないとのことだった。理由はやはり価格。また補強材の分だけ重くなるため、タイヤ単体での燃費性能も高めにくいのだ。
こうした課題をクリアして、ぜひブリヂストンには「ランフラット初の低燃費タイヤ」を発売してほしい。
普段は見る機会のないタイヤのバースト実験や、空気圧ゼロのタイヤの比較試乗など、貴重な体験ができた今回のイベント。4月末には連休もあることだし、クルマで遠出を考えている人は、お出かけ前のタイヤチェックをお忘れなく。
(文と写真=webCG 堀田)

堀田 剛資
猫とバイクと文庫本、そして東京多摩地区をこよなく愛するwebCG編集者。好きな言葉は反骨、嫌いな言葉は権威主義。今日もダッジとトライアンフで、奥多摩かいわいをお散歩する。
-
第876回:“ヨコハマ史上最高”が目白押し SUV向けスタッドレスタイヤの新製品「アイスガード8 SUV」を試す 2026.10.2 2026年9月1日に販売が開始された横浜ゴムのSUV用スタッドレスタイヤ「アイスガード8 SUV」。従来製品との比較で氷上性能を14%、雪上性能を4%、耐摩耗性能を11%アップさせたというその実力を、一足先に冬のテストコースで確かめた。
-
第875回:キモは氷上性能! ダンロップの新しいスタッドレスタイヤ「ウインターマックス アイスプロ」を試す 2026.7.1 違いは氷の上で表れる! ダンロップの新しいスタッドレスタイヤ「WINTER MAXX ICE-Pro(ウインターマックス アイスプロ)」に、冬の北海道で試乗。氷上性能を徹底的に追求したという新製品の、パフォーマンスの一端に触れた。
-
第874回:自動運転からワイパーまで! 自動車を支えるメガサプライヤー ボッシュのあくなき挑戦 2026.6.27 世界屈指のメガサプライヤー、ボッシュが開発中の新技術を披露! 市街地での高度な運転支援技術に、日本の方言にも対応した対話型AI、サーキット走行のノウハウを教えてくれるコーチング機能等々……興味深いその中身をリポートする。
-
第873回:ウエット路面に強み ミシュランの新タイヤ「パイロットスポーツ5エナジー」と「プライマシー5エナジー」を試す 2026.6.19 2026年1月29日に導入が発表されたミシュランの新製品「パイロットスポーツ5エナジー」と「プライマシー5エナジー」。これまでの特徴に加え、低燃費性能や耐摩耗性、ウエットグリップ性能のアップをうたう両モデルの走りを、クローズドコースで確かめた。
-
第872回:「フォレスター」がJNCAPで最高評価を獲得! “安全”に対するスバルの不断の取り組みに迫る 2026.6.6 相対速度100km/hの衝突後でも、普通にドアが開く!? 人気のSUV「スバル・フォレスター」が、日本の自動車アセスメントで最高評価を獲得した。安全なクルマづくりを第一とするスバルの取り組みを、群馬製作所で行われた衝突試験デモの様子とともにリポートする。
-
NEW
日産キックスX e-4ORCE(前編)
2026.10.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「日産キックス」に試乗。デザインが新しいのはもちろんのこと、まさに下ろしたての最新のパワートレインを搭載。日産の大きな期待を背負ったコンパクトSUVである。箱根のワインディングロードでの印象を聞いた。 -
三菱eKクロスEV P(FWD)【試乗記】
2026.10.17試乗記三菱の軽乗用電気自動車(EV)「eKクロスEV」が、一部改良でデザインを刷新! 2022年発売の古参の一台は、台頭するライバルをどう迎え撃つのか? 最新モデルと比べても、キラリと光る魅力はあるのか? 軽EVのパイオニアが擁する一台の実力を確かめた。 -
写真で解説する「フィアット・グランデパンダ」
2026.10.16画像・写真ステランティスが「フィアットブランドの大きな柱のひとつとなる重要なモデル」と位置づける「グランデパンダ」が日本上陸。その具体的な見どころを、写真とともに解説する。 -
フィアット・グランデパンダ ハイブリッド ラプリマ(FF/6AT)【試乗記】
2026.10.16試乗記欧州を代表するコンパクトカーの一台である「フィアット・パンダ」が第4世代に進化。新たに「グランデパンダ」を名乗り、日本にやってきた。ずばり新型の見どころは車両の随所にちりばめられた初代モデルへのオマージュである。上位グレード「ラプリマ」の仕上がりをリポートする。 -
スズキの未来を徹底検証! 技術戦略説明会から“10年先のスズキの姿”を夢想する
2026.10.16デイリーコラム年間生産500万台で、Dセグメントまでカバーする巨大メーカーに!? スズキが発表した「10年先を見据えた技術戦略2026」を徹底検証。技術開発に製品開発、インドを核としたグローバル戦略などの中身を通して、「10年先のスズキの姿」を予想した。 -
賢い選択 ――キャデラック「LYRIQ」フラットプランのすゝめ――
2026.10.15投資家も太鼓判! 「キャデラック・リリック」×フラットプランという最適解<AD>クルマが変わり、時代も変われば“持ち方”だって変化する? お金のプロである投資家が、「キャデラック・リリック」の残価保証型リースを勧める理由とは? 夢の「2台持ち」をかなえる、最新電気自動車の賢い選び方を考えた。