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メルセデス・ベンツA250 シュポルト(FF/7AT)

「Aクラス」のトップガン 2013.06.12 試乗記 下野 康史 クリスタルを散りばめたようなフロントグリルが印象的な、新型「Aクラス」のトップモデル「A250 シュポルト」を箱根で味わった。

とびきり派手

2013年1月に国内発表された新型「Aクラス」のトップモデルが「A250 シュポルト」である。「A180」「A180 スポーツ」のさらに上だ。122psの1.6リッター4気筒ターボを搭載するA180系に対して、A250 シュポルトのエンジンは新開発の2リッター4気筒ターボ。210psの最高出力は「ゴルフ6」の「GTI」と同じである。

A250 シュポルトの顔を見分けるのは簡単だ。A180系はシンプルな水平2本線グリルだが、こちらはダイヤモンドグリルと呼ばれる装飾的なマスクが特徴で、ナンバー下のセンターインテークには赤いラインが入る。AMG開発のスポーツサスペンションを備え、ホイールもAMGの専用18インチを履く。前輪の5スポークの奥には赤いブレーキキャリパーと320mm径の大型ローターがのぞく。耽美(たんび)的なデザインに身を包む新型Aクラスのなかでもとびきり派手なのがA250 シュポルトである。

室内では、シートベルトやエアコン吹き出し口のリングやシートのステッチが赤になる。ボディーのしっかりした建て付けや、ドアの開け閉めの重厚感や、内装の立派な質感など、つくり込みに“メルセデスの重さ”を感じさせるのは新型Aクラスに共通する特徴だ。そのため、ゴルフよりちょっと上のクラスかなと思わせる。もっとも、A250 シュポルトは420万円する。新型「ゴルフGTI」の国内デビューはもう少し先だが、旧型が368万円だったことを考えると、やはりゴルフよりちょっと上を狙った価格設定といえる。

「シルバーダイヤモンドフロントグリル」と呼ばれるきらびやかなグリルが「A250 シュポルト」の特徴。
「シルバーダイヤモンドフロントグリル」と呼ばれるきらびやかなグリルが「A250 シュポルト」の特徴。 拡大
搭載されるエンジンは2リッター直4ターボ。210ps、35.7kgmを発生する。
搭載されるエンジンは2リッター直4ターボ。210ps、35.7kgmを発生する。 拡大
18インチのAMGアルミホイールが装着される。タイヤサイズは235/40R18。
18インチのAMGアルミホイールが装着される。タイヤサイズは235/40R18。 拡大
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メルセデス・ベンツ Aクラス の中古車

さわやかな高性能車

0-100km/hは6.6秒。これはA180より3.5秒も速い(いずれもメーカーデータ)。ゼロヒャク6.6秒といえば、まさにゴルフ7 GTIの発表値と同じである。A250 シュポルトはCセグメントの最新ホットハッチとして第一級の動力性能を備えている。

だが、A250 シュポルトの芸風は、このスピードにしてたけだけしさや汗臭さがこれっぽっちもないことである。「ホットハッチ」という言葉は似合わない。サーキットの匂いもしない。この日はたまたま「ルノー・メガーヌGT220」が同道したのだが、いかにも4気筒スポーツエンジン的なルノースポールの2リッターターボに比べると、A250の直噴ユニットは6気筒と言ってもだまし通せそうなくらい滑らかで静かだ。モリモリしたトルクでまい進するタイプではなく、回転の上昇に比例してきれいなパワーが限りなく出る感じだ。排気音もボーボー言わない。

変速機はA180系と同じく、デュアルクラッチの7段自動MT。レンジの選択はセンターフロアではなく、ステアリングコラム右側に突き出たレバーで行う。ステアリングのセンターパッド両側の裏手にはタッチのいいシフトパドルが付く。

エンジンはレスポンシブで、指先でシフトダウンを命じると、自動ブリッピングが働いてタコメーターの赤い針がビクンと跳ね上がり、シフトアップすればストンと下がる。カッコイイその動きが昔のレーシングカーの機械式タコメーターを思い出させた。そんな状況にあっても、クルマそのものの表情はクールで洗練されている。速くても、激しくない。さわやかな高性能車である。

約320kmを走り、満タン法で採った燃費は8.2km/リッターだった。以前、別の機会に走らせたA180 スポーツは11km/リッターを超えた。A250は7割以上もパワフルなエンジンを持つのだから致し方ないか。こちらにもアイドリングストップ機構が備わる。

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赤のアクセントが各所にあしらわれた「A250 シュポルト」の室内。
赤のアクセントが各所にあしらわれた「A250 シュポルト」の室内。 拡大
試乗車には「セーフティーパッケージ」にセットオプション(17万円)の全車速追従型レーダークルーズコントロール「ディストロニックプラス」が装着されていた。
試乗車には「セーフティーパッケージ」にセットオプション(17万円)の全車速追従型レーダークルーズコントロール「ディストロニックプラス」が装着されていた。 拡大
(写真をクリックすると、荷室のアレンジが見られます)
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高いだけのことはある

A250 シュポルトはフロントアクスルとサスペンションをAMGが開発している。210psのハイパワーFFでもトルクステアが見事に抑えられているのはその恩恵かもしれない。

A180 スポーツもオンザレール感きわまる前輪のグリップが気持ちいいが、A250 シュポルトはさらにそれを磨きあげたようなコーナリングマナーを見せる。何をやっても許してくれそうなスタビリティーがまずあって、コントロール感も楽しめる。エンジンの印象に符合した冷静なスポーツサスペンションだ。

しかも、乗り心地はベストAクラスである。A180系は荒れた路面へ行くと途端に後輪がバタつく。フトコロの深い“メルセデス・ライド”の伝統はいずこへ? という感じだ。しかし、AMGが入念に脚を締め上げたA250 シュポルトではその弱点が最も矯められている。これだけがランフラットタイヤではないということも影響しているかもしれない。新型Aクラスは価格に比例して乗り心地がよくなる。

というわけで、A250 シュポルトは、高いけど、高いだけのことはあるAクラスのトップガンである。スワロフスキーのクリスタルを頬ばったようなフロントグリルは遠目からでも識別できるから、新型Aクラスのステータスになりそうである。

と思ったら、「A45 AMG」が早ければこの夏かれこれには国内投入されそうだ。360psの2リッターツインターボを積むモンスターである。3月のジュネーブショーでお披露目され、ドイツ本国での発売も夏というから、異例の速攻導入である。ゴルフの牙城を崩すという悲願を抱き、使命に燃える新型Aクラスなのだった。

(文=下野康史<かばたやすし>/写真=峰昌宏)

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前席はメモリー付きパワーシートが標準装備される。
前席はメモリー付きパワーシートが標準装備される。 拡大
designoレッドシートベルトも「A250 シュポルト」の専用装備。
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テスト車のデータ

メルセデス・ベンツA250 シュポルト

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4355×1780×1420mm
ホイールベース:2700mm
車重:1450kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:210ps(155kW)/5500rpm
最大トルク:35.7kgm(350Nm)/1200-4000rpm
タイヤ:(前)235/40R18(後)235/40R18(コンチネンタルContiSportContact5P)
燃費:--
価格:420万円/テスト車=443万3000円
オプション装備:セーフティーパッケージ(17万円)/メタリックペイント<マウンテングレー>(6万3000円)

テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:3809km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(7)/山岳路(2)
テスト距離:317.3km
使用燃料:38.3リッター
参考燃費:8.3km/リッター(満タン法)/8.6km/リッター(車載燃費計計測値)

下野 康史

下野 康史

自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。

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