第300回:悪い虫よさようなら! プラスチック製シートがイイみたい?
2013.06.14 マッキナ あらモーダ!イタリアでは、無縁だった「あの虫」が!
日本人のボクにとって、イタリアでありがたいことのひとつに「ゴキブリがいない」ということがあった。
17年前イタリア中部シエナにやってきて以来、これまでに4軒のアパルタメントに住んできたが、いまだゴキブリには遭遇したことがない。「イタリアは湿度が低いから、ゴキブリにとって住みにくいんだろうな」というのが、ボクの勝手な解釈だった。
ところが2012年7月、南部ナポリで「ワモンゴキブリ」といわれる大型のゴキブリが発生した。ゴキブリ慣れしていないイタリアゆえ、テレビや新聞で大きなニュースとなった。
当初「南部エオリア諸島を結ぶフェリーに紛れ込んで半島上陸を果たしたのではないか?」との説が浮上し、同地の村長が「根拠がない」と猛烈に抗議するドタバタもあった。
そしてついに先日、ボクもシエナ旧市街で、石畳の上にゴキブリらしきものを発見した。リストランテの勝手口近くだったから、そこから出現したものだろう。実はそのとき「キモいぞ」「よく見ると、メカニカルだ」などと実況しながら、それを撮影した写真もあるのだが、読者の皆さんの気分を害するといけないので掲載は控えることにした。
イタリアでは、間もなく付加価値税率が22%に上がる。最新統計によると「年間162日は税金を払うためだけに働いている」というイタリアで、ゴキブリがいないことは数少ないメリットだったが、いよいよそれも消えてしまうようだ。
参考までにイタリアでは、蚊の幼虫を食べてくれることからコウモリを飼う人がいる。そのためコウモリ用飼育箱が、生協やDIYセンターで時折売られている。「ゴキブリホイホイ」のような対策アイテムがいまだ普及していないこの国で、ゴキブリ対策にも、何かよい動物が見つかるとよいのだが。
これなら虫は寄らない
ゴキブリではないが害虫といえば、以前イタリアでは、あるインターシティー列車内でナンキンムシが発見され、急きょ運行中止になる騒ぎがあった。イタリアに限らず日本でも、公共交通機関の車内に生息する害虫は、時折問題になる。なにしろ、フワフワした布シートの直下から暖房がポカポカと当たっているのだ。乗り物好きのボクが虫に変身したら、これ以上良いすみかはない。
そうした虫の車内生息を少しでも改善できるのではないか? と思うのが、イタリアのバスや地下鉄に見られるFRPを含むプラスチック製シートである。害虫が寄りつかないし、ルックス的にもモダンだ。清掃が簡単なのも、こうしたシートの長所である。
ちなみにイタリアでは、プラスチックになる以前から、路線バスのシートには合板が用いられていた。左の写真はその一例で1997年に撮影したもの。あまりの古さから、わが家では「ツポレフ」と呼んでいたフィアットの路線バスである。
オリジナル座布団ブームが来るか!?
もちろん良いことばかりではない。布地でないぶん、冬はそれなりにお尻が冷たい。バスの場合は、さらに困る。クッションがないぶん、段差を乗り越えると、路面からの突き上げをもろに食らう。
さらにお尻が滑る。ボクなどは慣れているので、いつも乗る路線のアップダウンやカーブを予知して体が自然とリーンするようになった。だが、初めて乗った観光客は、やはり椅子の上で滑りまくって、なかには椅子から転げ落ちそうになっている人もいる。それを改善すべく、座面の一部に軽く布地を張ったタイプもあるが、やはり完全な滑り止めにはならない。
もうひとつ、ブラスチックシートが日本で受け入れられにくい要素がある。それは営業距離だ。特に電車は、乗り入れ運転の普及で、走る距離がどんどん長くなっている。今や東武東上線で乗り換えなしに横浜中華街まで行ける時代である。その距離をプラスチックシートに座らされるのは、やはり快適なものではない。
そこで、ふと思いだしたのは、日本のローカル線の駅で、ホームのベンチに置かれている、地元のボランティアが自作して提供したと思われる座布団である。日本でもプラスチックシートにする代わり、乗客が各自マイ座布団を持って乗るというのは、いかがだろう。
市販も手作りもありだ。日本のことだから、MUJI(無印良品)あたりからコンパクトに収納できるものもでるだろう。ユニクロからは暖かいヒートテック採用の通勤用座布団が発売されるかもしれない。
いや、以前より衰えたとはいえ、世界の高級品メーカーにとっていまなお大切なマーケットである日本だ。セレブ御用達などという触れ込みで、パリやミラノの高級ファッションブランドからはロゴ入りの通勤用座布団が売り出されるかもしれない。もちろん、エンスージアスト向けには、レカロやサベルトの日本限定座布団をお願いしたい。
(文と写真=大矢アキオ<Akio Lorenzo OYA>)

大矢 アキオ
Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、25年間にわたってリポーターを務めあげる。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。
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