フォルクスワーゲン・ゴルフTSIコンフォートライン(FF/7AT)
盤石の定番 2013.07.17 試乗記 定番は、進化するからこそ定番であり続ける。燃費、安全性、装備内容、そして価格と、あらゆる点で勝負をかけてきた新型「ゴルフ」は、ハッチバックの基準をどこまで高めたのだろうか。ハッチバックの理想形
「フォルクスワーゲン・ゴルフ」は初代以来、ずーーーっと最高のFFハッチだ。40年間、追い付かれかけたことはあったかもしれないが、完全に追い越されたことはない。新型に乗ってみたところ、その座はまたもや当分安泰だと感じさせた。将来、ゴルフよりも総合的に優れたFFハッチが登場するだろうか。ないと断言することはだれにもできないが、世界中のメーカーがゴルフをバラして研究しても40年間なかったということは、ゴルフも常に進化しているということであり、結構ハードルは高いと思う。
最近の自動車関連メディアを見ると、ゴルフとライバルを比較した記事ばかり。「メルセデス・ベンツA/Bクラス」「ボルボV40」「フォード・フォーカス」などと、それにFRだが「BMW 1シリーズ」もよく比較される。クルマに限らず商品というものは、Aさんにとって最高だからといってBさんにとっても最高とは限らないので、どの記事も断定はしていないが、他車への気の使い方に程度の差こそあれ、どの記事もゴルフに高評価を与えている。高評価の決定打は価格で、249万~299万円というのは出来栄えを考えれば非常に安い。よそが努力していないように見える。
僕もそう思う。新型ゴルフよりも優れたFFハッチはない。動力性能、安全性、静的/動的質感、経済性、高級感、価格のうち、どこか一部分だけゴルフを上回るクルマはあっても、たいていその代わりにどこかがへこんでいて、総合的にはゴルフは盤石だ。現時点では、ライバルには4気筒や5気筒の2リッターターボもあるのに対し、ゴルフはまだ基本となる3モデルしか出ていないので、ガチンコ比較できない面もあり、今後1~2年のうちに「GTI」やディーゼルが追加され、日本仕様が出そろうのが楽しみだ。
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装備と走りに不満なし
今回は1.2リッター直4 DOHCターボのTSIエンジンを積んだ「コンフォートライン」に乗った。最高出力105ps/4500-5500rpm、最大トルク17.8kgm/1400-4000rpmと、パワースペックは控えめ。ただし車重が1240kgしかない。「A180」「V40 T4」「BMW 116i」は(エンジン自体が大きいが)そろって1430kg、フォーカスが1380kgだから、それらよりもスペックが劣っていても、同じように走る。
もう少しパワフルならいいのになと思うことがないわけではないが、カタログ燃費21.0km/リッター、エコカー減税100%適用と言われれば、もう何も言い返せない。トルコン式ATに比べ、発進時を中心に時折ギクシャクすることがあったデュアルクラッチ式ATは、ネガを克服していて不満なし。異例に静粛性が高いので、車内の意匠はそれほど高級というわけでもないのに高級感がある。ウッドやレザーではなくテクノロジーで高級感を目指すなんてドイツ車の真骨頂じゃないか。
フロントサスペンションは、マクファーソンストラットという一般的な形式が用いられる。リアサスペンションは、廉価な「トレンドライン」と今回試乗したコンフォートラインがトレーリングアーム(トーションビーム)、上級の「ハイライン」がマルチリンク(4リンク式)。一般的にマルチリンクのほうが高級なサスとされているが、どっちも乗ってみた結果、甲乙つけがたかった。
あらかじめ知って乗るので、マルチリンクのほうが乗り心地がよく、コーナーでの接地性も高いように感じたが、その差はわずかで、トレーリングアームのコンフォートラインに乗り換えてもまったく不満はない。すごくハードなコーナリングをすれば外輪のポジティブぶりが気になるかもしれないし、左右両輪に同時に大きな入力が入ればガツンと衝撃がくるかもしれないが、パワーも知れていることだし、普通の人が普通に使う限り、トレーリングアームで十分。
安全性も抜かりなし。「up!」全車にプリクラッシュブレーキを装備しちゃった以上、ゴルフにはそれ以上が求められる。というわけで、より高級でたぶん精度も高いミリ波レーダー式のプリクラッシュブレーキが全車に備わった。加えて、コンフォートライン以上は全車速対応のクルーズコントロールも付く。ボルボがV40にこの辺を全部付けちゃってるので、ゴルフとしても負けるわけにいかなかったのだろう。
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気になる点は……
日常的に一番便利なのはACC(アダプティブクルーズコントロール)だ。渋滞未満の中途半端な交通量で重宝する。完全停止する際に若干ギクシャクするが、気に障るほどではない。他社の同種の装備と違い、追従の仕方を「エコ」「ノーマル」「スポーツ」の3段階から選べる。他社の追従型クルーズコントロールは、前車の車線変更などによって突然前が開けたとき、素早く設定速度を回復しようとギアダウンまでして加速するものが多い。
僕はそれがイヤなので、特に高速道路を走行中はとてもイヤなので、高速での追従作動中はATをマニュアルモードにして最も高いギアで固定させる。そうすると設定車速への回復が穏やかだから。ゴルフならギアを固定しなくても、エコモードにしておけば、前が開けてもマイルドに速度回復を図ってくれる。スポーツモードは要らない気もするが、一般道で車間が開きすぎて何台もに割り込みされるのを防ぐにはいいかもしれない。
今のところ、気になる点は大小ひとつずつ。大きいほうはビルトインのカーナビのオプション設定がないこと。クルマの日本仕様はできたが、カーナビの日本仕様はまだできていないようで、年末くらいにオプション設定されるとか。試乗車にはディーラーオプションのナビがダッシュボード上に取り付けられていたが、インパネの雰囲気が壊れるし、本来カーナビが収まるべきセンターパネルにはすでにモニターがあるので、そこに表示できないのはもどかしい。インポーターは「携帯電話のナビで十分という方も多いですし」と理論武装していたが、本来あるべき位置に欲しい人だって少なくないはずだ。ほかの部分が優れているだけに、カーナビくらい最初から用意してよという感じ。
小さいほうは、モニター部分やメーターナセル内に表示される日本語のフォントがダサいこと。うまく説明できないが明朝(みんちょう)体で、なんか変。「Individual」を「個別」と訳すなど、日本語訳もこなれていない。とはいえ、カーナビは半年待てば手に入るし、フォントだって、だからといって購入をやめる理由になるほどではない。
(文=塩見 智/写真=小林俊樹)
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テスト車のデータ
フォルクスワーゲン・ゴルフTSIコンフォートライン(FF/7AT)
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4265×1800×1460mm
ホイールベース:2635mm
車重:1240kg
駆動方式:FF
エンジン:1.2リッター直4 DOHC 16バルブターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:105ps(77kW)/4500-5500rpm
最大トルク:17.8kgm(175Nm)/1400-4000rpm
タイヤ:(前)205/55R16 91V/(後)205/55R16 91V(ミシュラン・エナジー セイバー)
燃費:21.0km/リッター(JC08モード)
価格:269万円/テスト車=282万6500円
オプション装備:セーフティパッケージ(レーンキープアシストシステム“Lane Assist”+バイキセノンヘッドライトパッケージ)(13万6500円)
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:2824km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:283.4km
使用燃料:22.3リッター
参考燃費:12.7km/リッター(満タン法)/13.3km/リッター(車載燃費計計測値)

塩見 智
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