スズキ・スイフトスポーツ(FF/6MT)【試乗記】
MT賛歌! 2012.03.13 試乗記 スズキ・スイフトスポーツ(FF/6MT)……174万3000円
従来型ではMT仕様の販売比率が7割に上ったという「スイフトスポーツ」。これはスポーツカー好きのノスタルジアか? それとも現実派のロジカルな選択か? ワインディングロードで考えた。
MT界の旗手
ATの技術革新のおかげで、ギアシフトの面白さを実感する人は、かえって増えているように思う。指先でシフトパドルをシャカシャカするだけで、簡単に変速させてエンジンブレーキを使ったり、エンジン回転を下げて燃費を稼いだり容易に行える。もっとも、限られたパワーを有効に引き出す手段としてなら、今でもATよりMTの方が優れていることは知られている。
とはいえ、MTは操作する楽しみはあっても、クラッチ操作を苦手とする人もいるだろう。最近の技術はエンジンに低速トルクを与え、問題のクラッチ操作さえ“省略”してしまったが、それですべて解決かというと、そうではない。
さて、そこで「MTに乗ってみようか」と思った時、われわれの周囲にはMT仕様が手に入りにくい状況にある、という現実に直面することになる。スポーツカーでさえ、いまどきはほとんどがATなのにも愕然(がくぜん)とさせられる。日本車ならそんなこともないだろうというのは幻想だ。比較的求めやすい価格帯には、「ヴィッツRS」「オーリスRS」「デミオ スポーツ」ぐらいしかないのだ。そんな状況の中にあって、「スズキ・スイフトスポーツ」はMT車の旗手として君臨する。
エンジンの排気量は1.6リッターと先代型と変わらず、自然吸気で136ps/6900rpm と16.3kgm/4400rpmを発生する。そして注目のMTギアボックスは5段から6段になった。1速で目いっぱい引っ張って2速に上げると、思ったほどクロスしておらず、回転落差は大きい。「なーんだ」とガッカリすることなかれ。その後が素晴らしいのだ。
今なおMTが有利な理由
スイフトスポーツの6MTは、2速以降、5速までステップアップ比を、ほぼ1.3にそろえている。そのおかげで、クロスレシオ特有の回転差の少ないアップダウンで、小気味よいエンジンのレスポンスを継続して味わえる。スロットルをほぼ一定にして、ギアシフトだけで速度を選んでもいける。これぞ文字通り「変速機」の語源を実践するものだ。
エンジン回転をあまり上下させずに運転すれば、省燃費運転につながることは言うまでもない。スポーツするということは、タイムや効率を追求することでもあるのだから、よくできたクロスレシオのギアボックスがあれば、特にエンジンにパワーを求めずとも十分に遊べるのだ。スイフトスポーツの場合は、エンジンも7000rpmの高回転域まで楽々と使え、逆にギアを固定して使っても十分に伸びる。
だからこそ、1速と2速の間のステップアップ比が広いことだけが若干気になってしまう。次のモデルチェンジでは、ぜひとも1速から6速まで、すべてのギアをクロスさせてほしい。そうすれば、6速はさらなる燃費ギアとして、オーバードライブ的に使えることも提案しておきたい。
ところで、筆者は冒頭で「ATよりMTの方が優れている」と述べたが、この点に異論をとなえる人もいるだろう。今ではATの方が、少なくとも燃費はいいと思っている人は多いはずだ。それは公表されるモード燃費の数字とか、高速道路でのクルーズ時にエンジン回転が低いといった事実が論拠になっているはずである。
しかし、そこには注意が必要だ。なぜなら、排ガスや騒音測定も絡めた計測モード自体がATに有利に設定されていたり、ギアボックスではなくファイナルのギア比が低く設定されていたりするからだ。
翻って、実際の路上ではどうだろう。計測モードどおりに走れるわけではないし、高速道路も一定速度を維持できるとは限らない。そうした千変万化する交通状況下では、自分で積極的にシフトできるMTの方が今もって有利である。
自動変速はあくまでも想定内でしか働かないから、どんなに評価の高いドイツ製であれ、ダウン時には上手にシフトしても、アップ時に待たされる例は多い。またクラッチミートにしても、緩くつなぎたい時があれば、パンッと素早く合わせたい時もあるわけで、自動ではそこまで緩急自在にやってはくれない。
「足元」も進化した
最近の自動変速機は、第一義にともかく滑らかにつなぐ(変速する)ことをむねとし、アップ時には慎重になる。ダウン時にはモーター駆動のスロットルが回転合わせまでやってくれるが、アップ時にはエンジン自体の回転落ちを待たなければならないからだ。
そんなことを超越して、間髪入れずにガンガンつないでいけることこそ、MTにおけるギアシフトの醍醐味(だいごみ)でもある。クラッチをつなぐ瞬間の軽いGでさえ快感であり、ギア比がクロスしていればいるほどこのGも小さい。もっとも、Gがまったくないのも、MT大好き派には寂しいものだが……。
クラッチディスクにしても、耐久性は大幅に伸びている。某国産部品メーカーの資料によれば、おおよそ25万kmというのが国際的な標準になっているらしい。ATの耐久性がだいたい10万kmあたりと考えると、やはりMTの方が長持ちするし、パーツ交換も簡単にできる。ATはオーバーホールが難しく、アッセンブリー交換するしかない。
話をスイフトスポーツに戻すと、新型は「足元」も進化した。ノーマルの「スイフト」自体、日本車にはまれな欧州車風の味を持ち、フラットな姿勢とダンピングの良さを示す。新型には17インチのタイヤおよびホイールが採用されて、ロールセンターが高まったことで相対的に重心高が低くなり、そのおかげで外輪が沈み込む感覚のロール感があり、しっかりした接地荷重がタイヤのグリップを助ける。
乗り心地的には、やや重くなったバネ下荷重のせいで固くなった印象もある。軽快なフットワークという意味では、15インチや16インチタイヤ装着車の方が勝るが、17インチとて落ちついた乗り味の範囲にはある。スポーツシートもコーナーでのホールドを有効に助けるだけでなく、乗り心地の良さに寄与している。
スイフトスポーツは、4ドアであることもよい点だ。これならば、「スポーツ」という言葉には抵抗もあるわれわれシニア世代にとっても、普段の実用的なアシとしても使えるからだ。168万円という車両価格は、この内容から判断すれば望外のバーゲンと言っていいだろう。
(文=笹目二朗/写真=荒川正幸)

笹目 二朗
-
レクサスIS300h“Fスポーツ”(FR/CVT)【試乗記】 2026.4.15 「レクサスIS」のビッグマイナーチェンジモデルが登場。もはや何度目か分からないほどの改良だが、長年にわたってコツコツとネガをつぶし続けてきただけあって、スポーツセダンとしてひとつの完成形といえるレベルに達している。“Fスポーツ”の仕上がりをリポートする。
-
モーガン・スーパースポーツ(FR/8AT)【試乗記】 2026.4.14 職人の手になるスポーツカーづくりを今に伝える、英国の老舗モーガン。その最新モデルがこの「スーパースポーツ」だ。モダンながらひと目でモーガンとわかる造形に、最新のシャシーがかなえるハイレベルな走り。粋人の要望に応える英国製ロードスターを試す。
-
ボルボV60ウルトラT6 AWDプラグインハイブリッド(4WD/8AT)【試乗記】 2026.4.13 1990年代のステーションワゴンブームでトップランナーであったボルボ。その伝統を受け継ぐモデルが「V60」だ。現行型の登場は2018年とベテランの域に達しようとしているが、アップデートされた最新プラグインハイブリッドモデルの印象やいかに。
-
アルファ・ロメオ・トナーレ イブリダ ヴェローチェ(FF/7AT)【試乗記】 2026.4.11 アルファ・ロメオのミドルクラスSUV「トナーレ」がマイナーチェンジ。走りに装備、デザインと、多方面で進化を遂げた最新型に、箱根のワインディングロードで試乗した。“CセグメントSUV”という、最量販マーケットで戦う今どきのアルファの実力を報告する。
-
ホンダ・スーパーONE(FWD)【試乗記】 2026.4.10 ホンダの新たなコンパクト電気自動車「スーパーONE」がまもなく発売。ベースモデルのサイズを拡大しただけでなく、シャシーも徹底的に強化。遊ぶことに真剣に向き合った、実にホンダらしい一台といえるだろう。サーキットでの印象をリポートする。
-
NEW
第866回:買った後にもクルマが進化! 「スバル・レヴォーグ」に用意された2つのアップグレードサービスを試す
2026.4.17エディターから一言スバルのアップグレードサービスで「レヴォーグ」の走りが変わる? 足まわりを強化する「ダイナミックモーションパッケージ」と、静粛性を高める「コンフォートクワイエットパッケージ」の効能を、試乗を通して確かめた。 -
NEW
ハーレーダビッドソン・パン アメリカ1250リミテッド(6MT)【レビュー】
2026.4.17試乗記アメリカの大地が鍛えたアドベンチャーモデル「ハーレーダビッドソン・パン アメリカ1250」に、充実装備の上級モデル「リミテッド」が登場! 試乗して感じられた、日欧のライバルに勝るとも劣らない魅力と、どうしても気になるポイントを報告する。 -
NEW
毎日でもフェラーリに乗りたい! 「アマルフィ スパイダー」にみる新時代の“跳ね馬”オーナー像
2026.4.17デイリーコラム車庫にしまっておくなんてナンセンス! 新型車「アマルフィ スパイダー」にみる、新時代のフェラーリオーナーの要望とは? 過去のオーナーとは違う、新しい顧客層のセンスと、彼らの期待に応えるための取り組みを、フェラーリ本社&日本法人のキーマンが語る。 -
第957回:伝説のベルトーネが復活 新経営陣が目指すブランドの未来
2026.4.16マッキナ あらモーダ!イタリアを代表するカロッツェリア&デザイン開発会社だったベルトーネ。新たな資本のもとで再起を図る彼らが見据えたビジネスと、新生ベルトーネのクルマの特色とは? 温故知新で未来に臨む名門の取り組みを、イタリア在住の大矢アキオがリポートする。 -
BMW M235 xDriveグランクーペ(後編)
2026.4.16あの多田哲哉の自動車放談2025-2026日本カー・オブ・ザ・イヤーの“10ベストカー”にも選ばれた「BMW 2シリーズ グランクーペ」。そのステアリングを握った元トヨタの多田哲哉さんが、BMWのクルマづくりについて語る。 -
ランボルギーニが新型BEVの開発・導入を撤回 その理由と目的を探る
2026.4.16デイリーコラム第4のランボルギーニとして登場した2+2のフル電動コンセプトカー「ランザドール」。しかし純電気自動車としての販売計画は撤回され、市販モデルはエンジンを搭載してデビューするという。その判断に至った理由をヴィンケルマンCEOに聞いた。































