ボルボV60 T6 AWD R-DESIGN(4WD/6AT)
きっと長く付き合える 2013.07.18 試乗記 長く乗ってこそ、わかることもある。3リッターの「V60 R-DESIGN」で、1泊2日のロングツーリング。晴れも雨も、山坂道も高速も、すべて試して感じたことは?じんわりよさが伝わるタイプ
ボルボ・カー・ジャパンのお誘いで会津・喜多方を訪れた。いわゆるメディア向け試乗会では、主催者がロケーションやスケジュールに趣向を凝らし、ユニークな取り組みをするのがこの業界の慣習なのだが、朝食にラーメンを用意してもらったのは、初めての経験だった。
喜多方ラーメン。嫌いじゃないけれど、さすがに朝からはどうなの? と思ったが、意外にあっさり食べられるんだな。てっきり旅程に盛り込むためにボルボが特別に朝から開店させたのだと思っていたら、ほかにもお客さんがいてびっくり。さらにわれわれが訪れた老舗の満古登(まこと)食堂が特別なわけではなく、朝から開いている店はほかにもあって、つまりこの辺では朝からラーメンはわりと普通のことらしい。
旅のお供は「V60 T6 AWD R-DESIGN」。ボルボはしばしば東京から数百キロ離れた先に目的地を設定し、われわれを遠くまで走らせたがる。前述の通り“趣向を凝らす”ためでもあるが、一番の理由は自社の商品がロングツーリングでこそ真価を発揮すると考えているからだろう。実際、3リッター直6ターボエンジン横置きというユニークなレイアウトを採用するこのクルマも、長時間、高速道路を走れば走るほど、じわじわとよさが伝わってくるタイプだった。
使い込むほどになじんでくる
ほかのボルボ車にも通じることだが、V60に乗り込んで最初の10~20分間は、全体的にゆる~い感じというか、なんとなくしっくりこない。絶対的なパワーはあるものの、エンジンの回転の上がり方はマイルドだし、足まわりも硬いのか柔らかいのかはっきりしない印象だ。茫洋(ぼうよう)としていて、履きやすさ優先でひもをゆるく結んだ靴という感じ。
けれど、クルマがビシッとするのかヒトがなじむのか、長時間、あるいは長期間付き合うにつれ、その靴ひもがちょうどいいキツさに締まってくる。クルマが途中で変わることはないからヒトが順応するのだろう。そうなってからのV60は本当に従順で、ボルボオーナーが一台に長く乗る理由がよく理解できる。とにかく、一つずつバリを取って角を丸めながら慣らしていくドイツ車とはまったく異なるアプローチなのだが、使い込むうちに自分のクルマになっていくのは同じ。輸入車は面白い。
東北屈指のワインディングロード、磐梯吾妻スカイラインには過去に何度も来ているけれど、ここまで見事に晴れた日に来るのは初めて。パワーのないクルマにはつらいルートだが、最高出力304ps/5600rpm、最大トルク44.9kgm/2100-4200rpmは1800kgの車重を動かすのに十分で、ATセレクターを横にスライドさせてスポーツモードで山道を駆け上がると、高速巡航時に見せたのとは異なる、結構獰猛(どうもう)な性格が顔を見せる。上りのコーナー出口でステアリングを切ったままトラクションをかける際に4WDのありがたみを感じる。
震災以降、ここの通行料は無料。ありがたく通行し、せめて小銭を落とそうとソースカツ丼を食らう。ちなみに、会津で「カツ丼!」と頼むと「ソースですか? 煮込みですか?」と尋ねられる。ソースカツ丼がデフォルトらしい。知らないことがいっぱいあるなぁ。
安全への取り組みが信頼につながる
かつての角ばったデザインは、メーカーの質実剛健さを体現していて、ボルボといえばあの四角四面のデザインというくらいに強いイメージがついていたが、気付けばこのV60に代表される曲面を多用した新世代デザインに切り替わっていた。見かけがガラッと変わっても相変わらず一見してボルボとわかるのは、フロントグリルに鉄を象徴する斜線のエンブレムがあるからだけではなく、強調したショルダーラインやボディーの輪郭に沿ったリアコンビランプの形状など、伝統的な要素を巧みに残しているからだろう。
帰路の東北道はずっと雨にたたられたが、緊張感を強いられることなくほぼノンストップで一気に帰ってくることができた。走りながら、ボルボが放つそこはかとない包まれ感、囲まれ感はどこからくるのだろうと考えていると、フロントガラスが赤く点滅し、前車との近づき過ぎをたしなめられた。
プリクラッシュブレーキの類いを“バーチャルバンパー”と評する人もいる。電波を発し、他車と接触する前に警告してくれ、接触が避けられないとしても衝撃を軽減してくれるシステムは、作動させる/させないにかかわらず、備わっているという事実が安心感につながる。今では各社こうしたシステムを備えるが、ボルボは早くから積極的に備え、普及を促進させた。
各社の技術力が拮抗(きっこう)する上にさまざまな規制が敷かれる現代において、ライバルの半分の値段だったり2倍パワフルであったりすることは不可能だ。だからこそ安全への取り組みが差別化につながり、信用につながることにボルボは早くから気付いていたのかもしれない。フォード傘下のPAG(プレミアム・オートモーティブ・グループ)にいた頃は、無理して背伸びしちゃってるようにも見えたけど、新しい資本の下でのクルマづくりはうまくいっているようだ。
(文=塩見 智/写真=郡大二郎)
テスト車のデータ
ボルボV60 T6 AWD R-DESIGN
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4830×1865×1489mm
ホイールベース:2775mm
車重:1800kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッター直6 DOHC 24バルブターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:304ps(224kW)/5600rpm
最大トルク:44.9kgm(440Nm)/2100-4200rpm
タイヤ:(前)235/40R18 95W/(後)235/40R18 95W(コンチネンタル・コンチスポーツコンタクト3)
燃費:8.5km/リッター(JC08モード)
価格:619万円/テスト車=627万円
オプション装備:メタリック・パールペイント(ブラックサファイヤメタリック)=8万円
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:1万2090km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(7)/山岳路(2)
テスト距離:435.2km
使用燃料:50.1リッター
参考燃費:8.7km/リッター(満タン法)

塩見 智
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