ポルシェ・パナメーラ4S エグゼクティブ(4WD/7AT)/パナメーラS E-ハイブリッド(FR/8AT)
実直なマイナーチェンジ 2013.07.22 試乗記 「ポルシェ・パナメーラ」がマイナーチェンジ。大幅な進化の裏に、ポルシェが受け継いできたエンジニアリングの哲学を見た。多様化する要求に技術で応える
パッケージやメカニズムを攻めている割には望外に実用性が高く、パーソナライズされたものでありながらフォーマルにも供せるバランス感覚も持ち合わせていて――。
ポルシェのクルマ作りのスタンスは「356」の登場以降、今に至るまで根本的には変わっていない。つまりはスポーティーネスという譲れない非日常性に、どこまで日常性を折り合いづけられるかというせめぎ合いの歴史である。モータースポーツ絡みの棒だらけ物件やアルティメットな限定車は、いってみれば彼らの鬱憤(うっぷん)晴らしのようなもの。仕事の本筋は冷静で合理的なエンジニアリングの積み重ねだ。それが結果として上質な道具という側面的魅力を浮き上がらせ、求めたユーザーの生活の隅々に組み込まれていったことで、結果的に一定の公用性まで得るに至った。
……と、そうやってもたらされた「911」のステータスに対すれば、現在の「カイエン」や「パナメーラ」といったラインは市場迎合型にみえるという人もいるだろう。
が、ポルシェは911で積み重ねた歴史の中で、スポーツカーを求める人々の「日常」にまつわる移ろいをよく理解してもいる。かつてはビジネスマンズ・エクスプレスと呼ばれた911は週末のごく個人的な楽しみのためにとっておいて、普段はパナメーラをそれとして使うという様式もあり。あるいは一台のファミリーカーとして、カイエンを全方位的に使いこなすという選択肢もあり。問題は、生活の変化や価値の多様化と、ポルシェが供するべき核心との接点がきちんと融合するか否かということだ。その点においてマイナーチェンジを果たしたパナメーラは、速さだけではない価値軸の伸長=技術による深化というのが最大のテーマということになるだろう。