マセラティ・ギブリ(FR/8AT)/ギブリS Q4(4WD/8AT)/ギブリ ディーゼル(FR/8AT)
熱きスポーツサルーン 2013.08.15 試乗記 2015年までに年産5万台を目指すマセラティ。「クアトロポルテ」をひとまわりコンパクトにした、この新型「ギブリ」こそが、新世代マセラティの主役と言えるかもしれない。イタリアはシエナからの第一報。“ショート・クアトロポルテ”的な成り立ち
「ギブリ」の名を目にすると、いわゆるスーパーカー世代ならずとも、ギア在籍時代のジウジアーロがデザインした端正なクーペ&スパイダーボディーのフロントに4.7~5リッターのV8エンジンを搭載した、1960年代後半から70年代前半にかけて現役だったマセラティのグラントゥーリズモ、初代ギブリを思い出すはずだ。しかし、その栄光の名を与えられて2013年に登場したまったく新しいマセラティは、4ドアサルーンだった。
新型「クアトロポルテ」が発表されたとき、それよりひと回り小さいマセラティのサルーンが登場することは周知の事実となっていたが、それがクアトロポルテに数カ月遅れて世に出たギブリだった。ところがそれは、ひと回り小さいとはいえ、クルマのディメンション全体にわたってクアトロポルテより小さいのではなく、小さいのは主に長さに関してであり、高さに関しては20mmだけ、幅に至ってはたった3mmしか違わない。
つまりギブリは、クアトロポルテよりひと回り小さい別のクルマではなく、クアトロポルテと同じプラットフォームを用いた、その長さ縮小版だったのである。両車の発表時におけるディメンションの数値を比べてみると、ギブリはクアトロポルテよりホイールベースが173mm短く、全長が291mm短いのが最大のポイント、ということになる。
実際、クアトロポルテとは別のエクステリアデザインを施されたボディーは、新世代のマセラティサルーンらしい雰囲気は共通するものの、たしかにクアトロポルテよりひと回り小さいクルマに見える。と同時に、クアトロポルテより一段とスポーティーにも見える。
3リッターV6搭載、4WDも
では現代のギブリ、具体的にはいかなるクルマか。事実上3mのホイールベース上に、全長5m弱、全幅1.95m、全高1.45m強の4ドアボディーを構築した3ボックスサルーンで、室内は5人乗り。フロントに縦置きされるエンジンは、ガソリンが排気量3リッターの60度V6直噴DOHC 4バルブで、ツインターボで過給される。チューンには330ps仕様と410ps仕様の2種類があり、最大トルクは前者が500Nm(51.0kgm)、後者が550Nm(56.1kgm)。
そのほかに、同じく3リッター60度V6 DOHCだがボア・ストロークの異なるターボディーゼルエンジンも用意され、275psのパワーと600Nm(61.2kgm)のトルクを生み出す。マセラティで初のディーゼルエンジン搭載車となるこれは、シンプルに「ギブリ ディーゼル」と呼ばれる。
これらのエンジンはすべてZF製8段ATと組み合わせられるが、その搭載位置は先代クアトロポルテの初期型が採用していたトランスアクスル配置ではなく、エンジン直後の通常の位置に置かれる。それにもかかわらず、全モデルが50:50の前後重量配分を実現している。
ガソリンエンジンの330ps仕様はベーシックな「ギブリ」に積まれ、410ps仕様は高性能版の「ギブリS」に搭載されるが、後者には「Q4」と呼ばれるフルタイム4WDモデルも用意されている。それは、電子制御多板クラッチによって前後トルク配分を0:100から50:50までの範囲で変化させるもので、ZF8段ATの直後にマウントされるコンパクトなシステムのため、4WDモデルでも50:50の前後重量配分はキープされるという。
サスペンションはフロントがダブルウィッシュボーン、リアがマルチリンクで、いずれもクアトロポルテと基本は同じシステムで、ダンパーはモード切り替え可能な電子制御可変式を採用。ブレーキは全モデルに4輪ベンチレーテッドディスクが装備される。
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全長5mのドライバーズサルーン
さて、イタリアはトスカーナ州を舞台にした国際試乗会で最初にステアリングを握ったのは、後輪駆動の素のギブリだった。そのコックピットに収まると、艶(あで)やかなデザインのダッシュボードと低めに座るドライビングポジションが、並の大型サルーンでないことを実感させる。ダッシュの左下のスターターボタンをプッシュすると3リッターV6ツインターボは即座に目覚め、妙にかわいらしい形状のギアセレクターをDレンジに送って出発である。
1810㎏の車重を330psと500Nmで走らせるギブリは、0-100km/h加速5.6秒、最高速263km/hといわれるクルマだから、テストドライブ時の3人乗り状態でも、高性能サルーンらしい活発さをもってスピードを上げていく。エンジンのレスポンスも軽快だし、サウンドもマセラティらしい官能的な快音で、リアシート住人の話ではクアトロポルテよりも刺激的な音質だったという。ZF8段ATの変速がスムーズなことも印象に残った。
では、乗り心地はいかなるものか。サスペンションはコンフォートとスポーツを選択可能だが、まずは前者で走りだすと、かなりソフトな印象で、街中を流すような状況には向いているが、郊外に出てスピードを上げると、若干ボディーの上下動が気になりだす。そこでスポーツに切り替えると、段差を越える際などには19インチの「ダンロップSPスポーツMAXX」からの衝撃を比較的正直に伝えてくるものの、良路ではボディーがフラットに保たれて、乗り心地の点でもスポーツを選択するのが正解かも、という実感を得られた。
しかもギブリ、スポーツサルーンとしての身のこなしも期待を裏切らなかった。軽めだが路面フィールを不足なく伝えるステアリングを切り込むと、前輪が即座にコーナリングパワーを生み出してフロントが素早く向きを変え、気持ちよくコーナーに飛び込んでいく。ホイールベースがクアトロポルテより173mm短縮された効果は歴然という印象で、全長5m弱のサルーンとしてはかなりスポーツライクな印象のフットワークを示してくれる。
4WDモデルに好感
続いてフルタイム4WDの「ギブリS Q4」に乗り移る。これは410psと550Nmを発生するハイチューンユニットに電子制御多板クラッチを組み合わせて4輪を駆動するが、車重は1870㎏と、2WDのギブリより60kgしか重くなっていない。その結果、0-100km/h加速4.8秒、最高速284km/hと、パフォーマンスは標準型ギブリから大きく向上している。
走りだしてみると、加速感は素のギブリよりさらに活気があり、エンジンの咆哮(ほうこう)もさらに官能的に聴こえるから、ついついスロットルをプッシュしたくなる。シフトダウンが効く速度域が若干狭いのが気になったが、必要ならステアリングコラム固定式のパドルでマニュアルシフトも可能である。しかもさすが4WD、少々元気のいいドライビングをしても、2WDと同サイズのタイヤが無用なホイールスピンを発するといったことはない。
それに加えてこの4WD、クアトロポルテの場合と同じく、ステアリングの手応えが若干重く感じられる程度で、4WDのデメリットを実感させることがない。例えばコーナリングでも、S Q4はステアリング操作に素早く反応し、アンダーステアを感じさせることなしに、思いのほか軽快にコーナーの連続を走り抜けていく。それでいて、ドライ路においてもコーナリングの限界域に至れば4WDのスタビリティーが強い味方になってくれるし、ウエットな路面をはじめとする悪条件下における安心感も当然大いに期待できる。
最後に短時間ながらディーゼルに乗ったが、これもパフォーマンスはまったく十分で、ハンドリングもガソリンモデルより歴然と鈍い印象はない。ただ、エンジンの回転感とサウンドにマセラティらしいスポーティーさが希薄なのが、ガソリンとの大きな違いに思えた。
今回は2WDのギブリSに乗るチャンスがなかったから断定はできないが、S Q4がギブリのベストモデルかもしれないとは思った。いずれにせよ、新型ギブリがマセラティの名に恥じない熱きスポーツサルーンに仕上がっているという実感は、確実に得られたと言える。
(文=吉田 匠/写真=マセラティ)
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テスト車のデータ
マセラティ・ギブリ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4971×1945×1461mm
ホイールベース:2998mm
車重:1810kg
駆動方式:FR
エンジン:3リッターV6 DOHC 24バルブ ツインターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:330ps(243kW)/5000rpm
最大トルク:51.0kgm(500Nm)/4500rpm
タイヤ:(前)235/50R18/(後)235/50R18
燃費:9.6リッター/100km(約10.4km/リッター、欧州複合モード)
価格:--万円/テスト車=--万円
オプション装備:--
※数値は欧州仕様のもの。
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
マセラティ・ギブリS Q4
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4971×1945×1461mm
ホイールベース:2998mm
車重:1870kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッターV6 DOHC 24バルブ ツインターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:410ps(301kW)/5500rpm
最大トルク:56.1kgm(550Nm)/4500-5000rpm
タイヤ:(前)235/50R18/(後)275/45R18
燃費:10.5リッター/100km(約9.5km/リッター、欧州複合モード)
価格:--万円/テスト車=--万円
オプション装備:--
※数値は欧州仕様のもの。
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
マセラティ・ギブリ ディーゼル
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4971×1945×1461mm
ホイールベース:2998mm
車重:1835kg
駆動方式:FR
エンジン:3リッターV6 DOHC 24バルブ ツインターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:275ps(202kW)/4000rpm
最大トルク:61.2kgm(600Nm)/2000-2600rpm
タイヤ:(前)235/50R18/(後)235/50R18
燃費:5.9リッター/100km(約17.0km/リッター、欧州複合モード)
価格:--万円/テスト車=--万円
オプション装備:--
※数値は欧州仕様のもの。
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

吉田 匠
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