BMW 335iツーリング Mスポーツ(FR/8AT)
ワゴンのふりをしたスポーツカー 2013.09.12 試乗記 その走りはまさにスポーツカー? 今や希少な直6エンジンに、専用チューニングのローダウンサスを組み合わせた「BMW 335iツーリング Mスポーツ」を試す。直6にウットリ、乗り心地にビックリ
早朝の都心を「BMW 335iツーリング Mスポーツ」で走りだして5分、心の中で「おおっ!」という声が2度上がった。
1度目は、赤信号からスタートして軽くアクセルペダルを踏み込んだ時。「フォーン」と軽やかにエンジンの回転が上がると、それに比例してパワーが盛り上がる。同時に、控え目ながらも透き通ったいい音が、遠くから聞こえる。
タコメーターの針が上昇すると気持ちもアガるこの感じ、335iは直列6気筒エンジンなのだ。直6か、なにもかもみな懐かしい……。
2度目の「おおっ」は、絹のような直6エンジンの肌触りにうっとりした直後、路面の凸凹を越えた瞬間だった。「ダッ!」というショックが、シートとステアリングホイールからダイレクトに伝わった。
いやいや、現代のクルマ、しかもプレミアムブランドたるBMWの乗り心地がこんなに野蛮なわけがない。きっと何かの間違いか、勘違いに違いない。そう思いながら、次の段差に突入する。
「ダッ!」 濁音とスタッカートの付いた短いショックが再び襲う。
はは~ん、ということはあれだな、タウンスピードでは乗り心地がバキバキだけど、スピードを上げるにつれてフラットで快適になる、ヨーロッパ製高性能車でよく見かけるアシだな。そう思いながら首都高速3号線を経て東名高速に入り、まずまずの速度で流れる追い越し車線に滑り込んでも、事態は改善しなかった。
むしろ時間がたつにつれて、前席より突き上げがキツい後席に座るパッセンジャーから苦情が漏れ始めた。
ここにいたって、このクルマの乗り心地が相当に硬いことを認めざるを得なくなった。
これまでに乗った「BMW 3シリーズ」は、どれも上品なスポーツマンといった趣で、野蛮さのかけらも感じさせなかった。対してこの「Mスポーツ」には、ノーマル仕様より車高を10mm落とし、スプリングもダンパーも強化されたMスポーツサスペンションが装着される。タイヤサイズはフロントが225/45R18、リアが255/40R18。ベーシックグレードの「320iツーリング」の標準モデルが前後205/60R16を履くことと比べれば、相当に太くて薄い。