ロータス・エキシージS(MR/6MT)
まごうかたなきロータス 2013.09.29 試乗記 最高出力350psの3.5リッターV6エンジンを搭載した新型「エキシージS」の魅力を、ワインディングロードで味わった。性能を追い求めた結果のサイズアップ
全長はついに4mを超え(4080mm)、横幅も1800mmとなった。大きなV6エンジンを積むためにホイールベースは70mm延長され、車重は従来型の930kgから、250kgも増えてしまった! 2011年のフランクフルトショーで発表したプロトタイプは、1080kgだったじゃないか!?
そのスペック“だけ”を眺めると、ファナティックたちから「こんなのロータスじゃない!」という声が聞こえてきそうな新型「エキシージS」。
ただしそんなことは、当のロータスも重々承知していることだった。
そして彼らは今回のエキシージSで、「これでも文句あるか!」という、強烈な回答を用意したといっていいと思う。はっきり言ってこのクルマは、もはや初代エキシージSとは、別物である。
ただしそれは、「まったくの別物」でありながら、「まごうかたなきロータス」だからややこしい。今回はこれを筆者なりに、がんばって説明してみたい。
新型エキシージSの性能を決定付けているのは、やはりフットワークである。その核となるのは、ご存じ初代「エリーゼ」から継続しているアルミ製のバスタブシャシーだ。ちなみに新型エキシージSに使われているのは、エリーゼと同じ「スモールプラットフォーム」。サイズが大きくなったからといって、「エヴォーラ」用の「ラージプラットフォーム」を使っていないことろがミソである。
だからその着座感や、視界に見える風景は、エリーゼや先代エキシージと似ている。違うのは、インパネごしに隆起したフロントフェンダーが見えること。
つまりエキシージSがサイズアップした理由は、一般的な安全基準への適合というよりも、純粋に性能を追い求めた結果なのだ。フロント側は1499mmのトレッドを実現するために、限界といえるほどアームを延長したという。リアはV6エンジンを搭載するためにサブフレームを新設計して、やはりトレッドとホイールベースが伸ばされている。
現代的なレーシングスポーツカー
これによって得られたコーナリング性能は、もはや「バスタブ世代随一」といってよい。
機械的なアシストのないステアリングは、路面からの突き上げや、キックバックを正直に受け入れる。しかし広げられたトレッドによって、わずかに増えたサスペンションストロークが衝撃を最小限に抑え、ドライビングに必要な情報を、小さなステアリングに伝えてくる。試乗車にはオプションのサスペンションシステム(レースパック。ベーシック仕様はビルシュタイン製ダンパーとアイバッハ製スプリング)が装着されており、タイヤはピレリと共同開発した「Pゼロ トロフェオ」(通常は「Pゼロ コルサ」)を履いていた。このトロフェオは排水性を犠牲にしたハイグリップタイヤだというが、変に角が立ったグリップを発揮するタイヤではなく、レースパックの剛性に対して見事なマッチングを見せていた。そのハンドリングは、シャープというよりダイレクト。きっと大メーカーなら「これじゃ疲れちゃうでしょ」とNGを出すレベルだが、ロータスがこれをよしとしたのは、そのハンドリングこそが、エキシージSの生命線だとわかっているからだろう。
対してリアの挙動も、これまでのロータスにはない落ち着きっぷりである。コックピットの後ろに、V6エンジンとスーパーチャージャー、さらにはトランスミッションまで横置きで積み重ねているにもかかわらず、少なくとも公道においては、それが遠心力となってリアタイヤを滑らせてしまう気配がない。むしろ直列4気筒スーパーチャージャーを搭載した先代エキシージSの方が、重心が高く、リアのロール量も大きかったように思う。
こうした前後バランスが組み合わさることで、エキシージSは現代的なレーシングスポーツカーになった。ドライバーは205幅のフロントタイヤにブレーキングやアクセルオフで荷重を乗せて、そのグリップ感を確かめながらコーナーに入って行けばいい。リアは杭で打ったように地面に張り付き、エンジンのあたりを中心にグイグイと旋回していく。
マネジメントしきれる速さ
そんなエキシージSの“最後の演出”がエンジンだ。
パワーユニットはエヴォーラと同じトヨタ製の「2GR-FE」型。3456ccのV型6気筒VVT-iに、スーパーチャージャーを装着し、最高出力は350ps、最大トルクは40.8kgmにまで跳ね上がっている。ちなみに通常のレブリミットは6600rpm。インパネのダイヤルで「スポーツ」もしくは「チェッカーフラッグ」(レースモード)を選ぶことで、これが7000rpmにまで引き上げられ、トップエンドで350psの最高出力が発生する仕組みになっている。
リミッターを引き上げたエキシージSのダッシュ力は、ひとことで表せば「リアルな速さ」だ。
「日産GT-R」や「ポルシェ911ターボ」のような、「人知を越えたカタパルトダッシュ」ではない。しかしこれを、スポーツドライビングとして自分がマネジメントしなければならないとするならば、誰も「パワーが足りない」なんて言わないと思う。
スーパーチャージャーゆえに高回転での伸び感は乏しいが、その分低中速トルクが強烈で、これをクロスした6MTがカバーするから、アッという間にエンジンは吹け切ってしまう。排気系にタービンが介在しないことから、サウンドもNAに近い炸裂音が楽しめる。リニアな操縦性に、これだけ速くて柔軟性のあるエンジンが加われば、頭が真っ白になるまでドライビングに集中することができるはずだ。
V6エンジン搭載の意味
ではなぜこのV6エンジン搭載を“演出”と言ったのかといえば、筆者的にはこのシャシーに、2リッター程度まで排気量をアップした4気筒スーパーチャージャー付きエンジンを搭載してもよいと思ったからだ。確かに現状でもエキシージSのシャシーは、V6エンジンの慣性重量を感じさせない仕上がりになってはいる。だがこのシャシーに、より軽量な4気筒エンジンを搭載したら、さらに異次元のハンドリングが得られたはずである。物理の法則は、絶対だ。
しかしロータスはそれをしなかった。その理由は、エミッションコントロールのしやすさや、ドライバビリティーの向上などさまざまだろう。しかしなにより彼らが一番重要視したのは、“はったり”だと思う。なぜならこの新型エキシージSで彼らは、ポルシェをはじめとしたライバルたちと肩を並べなければいけないからだ。仮に直列4気筒を縦置きしたとしても、これはものすごいことなのだが、現実には大して売れないだろう。
生き残りを賭けてV6エンジンを搭載し、なおかつロータスらしいハンドリングを与えることに精力を注いだ結果、この新型エキシージSは素晴らしいスポーツカーになった。この判断が吉と出るか否かは今後の注目すべきポイントだ。これは筆者の想像にすぎないが、ロータスはかつての「エスプリ」で「4気筒のスーパーカー」といわれた轍(てつ)を踏まないようにしているように思えた。
(文=山田弘樹/写真=田村弥)
テスト車のデータ
ロータス・エキシージS
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4080×1800×1130mm
ホイールベース:2370mm
車重:1180kg
駆動方式:MR
エンジン:3.5リッターV6 DOHC 24バルブ スーパーチャージャー付き
トランスミッション:6段MT
最高出力:350ps(257kW)/7000rpm
最大トルク:40.8kgm(400Nm)/4500rpm
タイヤ:(前)205/45ZR17 88Y/(後)265/35ZR18 93Y(ピレリPゼロ トロフェオ)
価格:850万円/テスト車=945万円
オプション装備:プレミアムスポーツインテリアパック(30万円)/レースパック(38万円)/コントラストステッチ(5万円)/ダイヤモンドカット軽量鋳造ホイール Yタイプ5本スポーク(7万円)/ピレリPゼロ トロフェオ タイヤ(15万円)
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

山田 弘樹
ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦経験をもつ、実践派のモータージャーナリスト。動力性能や運動性能、およびそれに関連するメカニズムの批評を得意とする。愛車は1995年式「ポルシェ911カレラ」と1986年式の「トヨタ・スプリンター トレノ」(AE86)。
-
レクサスES350h(FF/CVT)【試乗記】 2026.10.24 「レクサスES」がフルモデルチェンジ。8代目となる新型ではボディーがググッと大きくなったほか、デザインも一気に現代的に。さらにトヨタグループでは最新鋭のパワーユニットを積むなど、中身も外身も刷新されている。2.5リッターハイブリッドモデルを試す。
-
マツダCX-30 25エアエディション(4WD/6AT)【試乗記】 2026.10.23 マツダのコンパクトクロスオーバー「CX-30」に、一部改良で2.5リッターガソリンモデルが登場。新たなパワートレインを得た最新型は、過去のモデルからどのような進化を遂げているのか? 装備全部盛りの最上級グレードで確かめた。
-
フェラーリ12チリンドリ マヌアーレ(FR/8AT)【海外試乗記】 2026.10.21 MT車が長らく不在となっていたフェラーリ。そこに突如として現れファンを驚かせたのが、MT車と同じ変速動作で運転できる「12チリンドリ マヌアーレ」だった。果たして、その乗り味は? 名コースで試乗した西川 淳の第一報。
-
トヨタ・ランドクルーザー“300”GRスポーツ(4WD/10AT)【試乗記】 2026.10.19 トヨタの「ランドクルーザー“300”」にハイブリッドパワートレイン搭載モデルが登場。環境負荷低減のために牙を抜かれた……どころか、電気の力を味方に、さらに力強さを増しているから面白い。愛知県のオフロードコースで乗った印象をリポートする。
-
三菱eKクロスEV P(FWD)【試乗記】 2026.10.17 三菱の軽乗用電気自動車(EV)「eKクロスEV」が、一部改良でデザインを刷新! 2022年発売の古参の一台は、台頭するライバルをどう迎え撃つのか? 最新モデルと比べても、キラリと光る魅力はあるのか? 軽EVのパイオニアが擁する一台の実力を確かめた。
-
NEW
2026-2027 Winter webCGタイヤセレクション
2026.10.262026-2027 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2026-2027のウインターシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけたスタッドレスタイヤか。各社自慢の最新モデルの実力を検証する。 -
NEW
新山千春 ダンロップのWINTER MAXX ICE ProとSYNCHRO WEATHERを試す
2026.10.262026-2027 Winter webCGタイヤセレクション<AD>俳優/タレントとして活躍し、クルマ好きとしても知られる新山千春さんが、ダンロップの最新スタッドレスタイヤ「ウインターマックス アイスプロ」とオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」を乗り比べ。キャラクターの異なる2つのタイヤは、それぞれどんな人におススメか? -
NEW
試して分かったブリヂストンのSUV向け冬用タイヤ「ブリザック アイスピーク」の実力
2026.10.262026-2027 Winter webCGタイヤセレクション<AD>ブリヂストンからSUV向けとなるスタッドレスタイヤの新製品「ブリザック アイスピーク」が登場。氷上・雪上性能を高め、摩耗ライフも大幅に向上させたというその実力を、モータージャーナリストの斎藤 聡さんと自動車ライターの伊藤 梓さんがチェックした。 -
NEW
第347回:カーマニア的に隠れた名車
2026.10.26カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。「トヨタ・アクアGRスポーツ」を夜の首都高に連れ出した。実はこう見えて初代「アクア」の元オーナー。最初期型のハンドリングは「フェラーリ458イタリア」を彷彿させたが、最新モデルの走りはどうか。 -
NEW
フォルクスワーゲン・ゴルフGTI(FF/7AT)/ゴルフRアドバンス(4WD/7AT)【試乗記】
2026.10.26試乗記1976年に誕生し50周年を迎えたフォルクスワーゲンのホットハッチ「ゴルフGTI」と、333PSの出力とハイテク満載の4WDシャシーを武器とする高性能モデル「ゴルフR」にサーキットで試乗。両者の違いとそれぞれの特徴を報告する。 -
NEW
ホンダが次世代ハイブリッドの名称を「Honda Hybrid」に決定 命名の理由とその背景を探る
2026.10.26デイリーコラム本田技研工業が2027年からグローバルで用いる次世代ハイブリッドシステムの名称を発表した。その名は「Honda Hybrid」である。「i-MMD」から「e:HEV」へと変更されて6年。慣れ親しんできた名称が変更される理由と、その背景を探る。






























