メルセデス・ベンツC63 AMGエディション507(FR/7AT)
さらなる高みへ 2013.10.18 試乗記 自然吸気6.2リッターV8エンジンを謳歌(おうか)する「スーパーCクラス」の大団円か? 一気に50psも強化され、507psものパワーを誇る「C63 AMGエディション507」でショートツーリングに出た。よくぞここまで
「Eクラス」や「Sクラス」の状況から考えて、自然吸気6.2リッターの“ロクサン”AMG用エンジンはおそらく遠からず消える。現行の「Cクラス」に使われているのが最後。でもって今回のこれ、「エディション507」の「507」とは最高出力507psの507。フツーのバージョンの「C63 AMG」のエンジンは457ps。50psアップは、出力特性をさらに高回転型に振ったことで実現した……のかと思ったら、ピーク出力発生回転数は変わってなかった。どっちも6800rpm。それと、最大トルクは5000rpmで。けっこう高い。かなり高い。でも、そんなことは知らずに運転。
457psのC63 AMGや先代「SL」マイナーチェンジ後の63AMGを運転したときの印象と比べて、今回のエンジンは第一印象、フツーだと感じた。ゆっくりおとなしく走らせているときの、排気量なりの馬鹿ヂカラっぽさ。余裕ありまくり感。それが比較的希薄だったので。
「C」モードで自動変速。7段もあるので無理もないともいえるけれど、シフトの刻みは細かい。アップ側がトトトンと早いのはいいとして、ちょっと「アレッ!?」だったのはダウン側。日常の街なかの運転でフツーにする程度のちょっとした加速要求に対してもスッとギアを落とす。落として、加速。ギアホールドで、つまり変速しないでグーッともっていってほしいのに。
ベチャッと踏むと速いとか上のほうまでブン回すと速いとかは、こんなエンジンなのだからアタリマエ。ものすごく速くても、その意味では驚かない。しばらくして同じ個体を借りて運転したら、常用域のトルクのたくましさがちょっと別モノみたいに……みたいなことになっていたらうれしい。このエンジンのホントの気持ちよさ、まだまだこんなものじゃないはず。
ただしというか、タダモノじゃないクルマを運転している感じは、ゆっくりおとなしく運転していても明瞭にある。要因としては、やたらと拘束感の強いシート。いかにもバネのレートが高そうな上屋やバネ下の揺れ具合。タイヤのゴツさ感。乗り心地は、ウゴウゴしまくりだった何年前かと比べたらいくらか、またはだいぶ、フツーに快適になった。よくぞここまで、というべきかもしれない。
アウトバーンがほしい!!
ロクサンAMGとはいえ車体はCクラスなので、日本の狭いクネクネ道も苦にならない。少なくとも、サイズ的には。ターボの加速がグワッとくるのを常にウオッチしながら気をつけてアクセルペダルを踏み込んでいくわずらわしさもない。当然ながら。でもやはり、良路専用度は、高そうか低そうかでいうと、高そう。
道の狭さを苦にしないサイズは、一方ではエンジン性能その他に対してちょっと窮屈そうなサイズという感もある。せっかくだから、もっとたっぷりしたフットプリントの、つまりホイールベースがもっと長くてトレッドももっとワイドなシャシーがほしくもなる。もっとデカいタイヤを履かせられるスペースがあったほうが……とかも。それとこのクルマ、デッカくはなくても重さはけっこうある。1.8トンぐらい。例えば「シボレー・コルベット」あたりと比べたら、200kgかもっと重たい。
「こんなチョコマカしたワインディングロードでいい汗かくのに、こんなすごい性能は要らない」とは、富士スピードウェイからちょっとニーヨンロク方向へいったあたりを左に入って山中湖方面へ抜ける峠道を走った際の感想。「フォルクスワーゲン・ゴルフ」の1.2でちょうどいいぐらいの道なので。ロクサンともなれば、例えば箱根のターンパイク。ていうかやっぱ、アウトバーンがほしい!! コーナーでものすごい横Gを出せればいいだけなら、もっとずっと安い金額のクルマで用が足りる。
ということで東名高速。自動変速を可能なかぎりキャンセルすべく、「M」モードへ。で、7速。勝手にギアを落とされちゃわない下限は、速度でいうと83km/hあたり。エンジン回転数でいうと1400rpmぐらい。そこから踏んでいく。踏んで、足を止める。また踏む。戻して、もういっぺん。さらにおかわり。周囲の交通の流れを乱さないところを探して。これはけっこう、あるいはかなり、プレジャーありまくり。もっと低いギアで同じようにやったらもっとプレジャーだったのかもしれないけれど。
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新車で買えるラストチャンスか
457psとか507psのパワーを上では出しつつ、1.8トン級かもっとの車重もへっちゃらなぐらい下ではガッツリと。となると、このぐらいの排気量は必要だったのでしょう。そういう自然吸気ロクサンV8エンジンのファイナル記念バージョンがエディション507。新車で買えるラストチャンス。ここはひとつ、そのように考えたい。
だいたい同じ最高出力のもので、例えば「日産GT-R」のエンジンは3.8リッターのターボ過給。こちらは6.2リッターの無過給。昨今の写真の世界でいったら、それこそ“シノゴ”の、つまり画面1枚のサイズが4インチ×5インチのフィルムを使ってるようなのに近い。ぜいたく。
ありあまるぐらいの、ものすごい高い動力性能がほしい。ただし過給モノのエンジンはゼッタイにナシ。わざわざ試乗などしなくても書けることではあるけれど、C63 AMGは、そういう信念(こだわり、といってもいいかもしれない)をハンパなく強くもっている人のためのクルマだといえる。
自然吸気ロクサンV8搭載モデルのなかでのこのクルマの強みは、ひとつには、まだ新車で買えること。それと、一家に1台のファミリーカーとして使えるカタチのクルマであること。でもって、サイズがコンパクトであること。あと、同系エンジン搭載モデルのなかでは新車の値段がすごく安いこと。
エンジンの気持ちよさ最優先の場合、新車で買えるというのは大きい。自分の運転できっちりナラシをやって最高の状態に仕上げることができる、というかその余地がまだバッチリあるから。
(文=森 慶太/写真=高橋信宏)
テスト車のデータ
メルセデス・ベンツC63 AMGエディション507
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4710×1795×1440mm
ホイールベース:2765mm
車重:1770kg
駆動方式:FR
エンジン:6.2リッターV8 DOHC 32バルブ
トランスミッション:7段AT
最高出力:507ps(373kW)/6800rpm
最大トルク:62.2kgm(610Nm)/5200rpm
タイヤ:(前)235/35ZR19/(後)255/30ZR19(ヨコハマ・アドバン スポーツV103S)
燃費:--km/リッター
価格:1210万円/テスト車=1210万円
オプション装備:なし
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:987km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:262km
使用燃料:41.1リッター
参考燃費:6.4km/リッター(満タン法)、6.9km/リッター(車載燃費計計測値)

森 慶太
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