BMW 428iクーペ ラグジュアリー(FR/8AT)
クーペの王道 2013.10.27 試乗記 「BMW 3シリーズ」からクーペが分家して「4シリーズクーペ」へ。BMWクーペの王道をいくスリークなスタイリングをまとった新しい2ドアクーペの走りやいかに? 2リッター直4ターボエンジンを搭載する「428iクーペ」に試乗した。「3」から「4」へステップアップ
サーキットで1000分の1秒を競い合うマシンなら、多少カッコ悪くても文句はいわないが、ひとりのクルマ好きとしてクーペを選ぶときはデザイン抜きで考えることなど無理な話。どんなに速くても、不細工なクーペには乗りたくない。気持ちのいい走りとスタイリッシュなデザインの両方がそろってこそ、食指が動くというものだ。その点、この「BMW 4シリーズクーペ」は、“芸術点”は余裕で合格ラインをクリア。洗練されたスタイルに仕上がっている。
ご存じのとおり、新登場の4シリーズは、F30系「3シリーズセダン」がベースのクーペで、先代までは「3シリーズクーペ」として用意されてきたものが、現行型からセダン系は3シリーズ、クーペ系が4シリーズに独立した格好だ。そこには、4シリーズは3シリーズの延長ではなく、ワンランク上のモデルシリーズであることをアピールしたいBMWの意図が表れている。3シリーズに対して、さらにパフォーマンスと美しさを高めたのが4シリーズ……というのが彼らの主張である。
3シリーズクーペの時代でも、セダンとクーペではボディーパネルをつくり分けていたBMWであるが、4シリーズになって明らかにその存在感が強まっているのは彼らの狙いどおり。3シリーズセダンに対して全幅が25mm広く、全高が65mm低くなったボディーは、真正面からの眺めこそそっくりだが、じっくり見るとワイド感が強調されているし、それ以外の角度からなら「これぞクーペ!」といわんばかりの美しいプロポーションを見せつけられる。イタリア車のようなセクシーさはないが、この端正さがドイツ車ファンにはたまらない!
さらに、フロントフェンダーの「エア・ブリーザー」やオプションのアダプティブLEDヘッドライトなど、3シリーズセダンにはないアイテムを手に入れて、4シリーズのスペシャル感をしっかりとアピールしているところがうまい。
では、“技術点”、すなわち、走りはどうか?
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全域で楽しめる2リッター直4直噴ターボ
運転席に着き、ドアを閉めると、シートベルトがせり出してくるおもてなし。いまや珍しい機能ではないが、クーペであることを実感する瞬間だ。インストゥルメントパネルのデザインは、基本的には3シリーズセダンと同じに見える。しかし、印象がだいぶ違うと思ったら、クーペの長いドアにあわせてつくりこまれたドアトリムに大胆なデザインのパネルが配されていて、優雅さを増していた。ちなみに、今回試乗したのはエレガントさを強めた「ラグジュアリー」。といっても、ごてごてと飾りたてた感じはなく、シックにまとまっているのがいい。
さて、日本で販売される4シリーズクーペには、2リッター直4直噴ターボを搭載する「428i」と、3リッター直6直噴ターボの「435i」が用意され、どちらも8段オートマチックが組み合わされる。今回試乗したのは428iで、最高出力245ps/5000rpm、最大トルク35.7kgm/1250-4800rpmを誇りながら、JC08モードで15.2km/リッターの低燃費を達成する実力派だ。
パワートレイン自体はすでに3シリーズでもおなじみで、低回転からしっかりとトルクを絞り出すおかげで、軽く流すような場面で実に扱いやすい。もちろん、それだけでは宝の持ち腐れで、高速の合流や追い越しといった場面で、アクセルペダルを深く踏み込むと、レブリミットの7000rpmまでよどみなく、力強い加速を見せてくれる。特に、4000rpmを超えたあたりから、428iクーペのキャビンはスポーティーなサウンドに包まれ、エンジンも勢いづく。これを楽しみたいばかりに、マニュアルモードに切り替えて、レブカウンターの針をつい高回転にとどめてしまう。
しかし、高速道路よりもっと楽しい場所がある。そう、ワインディングロードだ。428iクーペで来てよかった。
「駆けぬける歓び」も一歩先へ
スポーツカーではないといってもそこはBMW、ワインディングロードが退屈なはずがない。一般道の乗り心地は少し硬めだが、ゴツゴツとショックを伝えることはなく、リラックスできるだけの快適さを持ちあわせている。3シリーズセダンに比べると、サスペンションの無駄な動きが取り除かれ、スッキリとした挙動が実に好印象だ。
コーナーでは、ほぼ50:50の前後重量配分と軽量な4気筒エンジンのおかげで、ノーズの動きがとても軽快。ロールは抑えられているが、ストローク感は残されており、クルマの動きが把握しやすい。特筆すべきはステアリングの剛性感とダイレクト感で、3シリーズセダンとは別モノの印象。これが、コーナーを抜ける楽しさを倍増させている。3シリーズと異なり、この4シリーズではフロントアクスルにトーションバーが追加されるなど、剛性アップが図られているが、それが効果を発揮しているということだろう。
例によって、この428iクーペにもランフラットタイヤが装着されるが、多少ざらつく感じはあるものの、ゴロゴロと不快な感触を伝えてこないのは、長年の経験の成せる技だ。
ワインディングロードでのダイナミックな動きも、一般道、そして、高速での爽快なクルージングも、どちらも得意とするのがこの428iクーペの実力である。加えて、乗り込んでしまえば意外に広く快適なリアシートや、十分なサイズのラゲッジスペース、そして、標準装備の衝突回避・被害軽減ブレーキなど、実用性も安全性も納得の4シリーズクーペ。クルマもカッコいいが、これに乗ることはもっとカッコいい。4ドアクーペがもてはやされるいまの時代に、あえて選ぶ価値のある2ドアだと思う。
(文=生方 聡/写真=小河原認)
テスト車のデータ
BMW 428iクーペ ラグジュアリー
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4640×1825×1375mm
ホイールベース:2810mm
車重:1570kg
駆動方式:FR
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:245ps(180kW)/5000rpm
最大トルク:35.7kgm(350Nm)/1250-4800rpm
タイヤ:(前)225/40R19 89Y/(後)255/35R19 92Y(ブリヂストン・ポテンザS001 RFT<ランフラットタイヤ>)
燃費:15.2km/リッター(JC08モード)
価格:646万円/テスト車=721万2000円
オプション装備:バリアブル・スポーツ・ステアリング(4万2000円)/電動ガラス・サンルーフ(17万円)/リア・ウィンドウ・ローラー・ブラインド(4万8000円)/スルーローディング・システム(2万8000円)/アダプティブLEDヘッドライト(16万5000円)/レーン・チェンジ・ウォーニング(7万5000円)/アクティブ・クルーズ・コントロール(9万5000円)/パーキング・アシスト(4万9000円)/メタリック・ペイント(8万円)
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:1721km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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