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ホンダ・オデッセイG・EX 7人乗り(FF/CVT)

乗ればたしかに「オデッセイ」 2014.01.22 試乗記 森口 将之 新しくなった「ホンダ・オデッセイ」に試乗。ミニバンらしいユーティリティーを重視した新型に、歴代モデルの魅力は受け継がれているのか?

カッコよさより機能性

僕を含めた現在50歳ぐらいの人たちが、若い頃ホンダの2代目「プレリュード」に憧れたように、現在30歳ぐらいのユーザーの中には、若い頃3代目「オデッセイ」に憧れた人が少なくなかった。

10年ほど前、いっしょに仕事をしていた一般情報誌の編集スタッフもそうだった。当時の彼は独身。なのになぜ3列シートなのか、僕には理解できなかったが、友だちと遊びに行くことを考えればミニバンですよ! という答えが返ってきた。
もちろんそれなら、他のミニバンでもいいわけだが、数ある中からオデッセイをお気に入りとしたのは、カッコよさだった。なにしろ全高1550mmと、タワーパーキングに収まる低さだったのだから。その点ではプレリュードに僕たちが憧れた理由と同じだ。ホンダらしさはカッコよさだったのだ。

ところがその後、オデッセイを含めたデザイン重視のミニバンは売り上げが急降下。一部は販売終了に追い込まれた。今の若い人たちはクルマをトランスポーターと捉える傾向が強い。それなら箱形に勝るものはないわけで、「トヨタ・アルファード/ヴェルファイア」や「日産セレナ」などは堅実に売れている。

一方のホンダは、昔から低いクルマに並外れたこだわりを持ってきた。でも悲しいかな、2代目「シティ」やプレリュードなど、低さにこだわったホンダ車は長続きしない。そんな状況下でオデッセイをどうすべきか、ホンダは悩んだだろう。新型の姿を前にすると、そんな内部事情が伝わってくる。

新型オデッセイは、アルファード/ヴェルファイアなどのライバルとして登場した「エリシオン」との統合モデルでもある。そのためもあって背を旧型より約150mmも高くし、スライドドアを採用した。でもホンダお得意の低床フロアを活用したおかげで、ライバルのような箱形にはなっていない。彼らなりの低さへのこだわりの気持ちを、抑えることができなかったのだろう。

上級ミニバンの「エリシオン」の後継も担うこととなった新型「オデッセイ」。3、4代目モデルの特長だった低い車高をやめ、広さ重視の箱型スタイリングを採用した。
上級ミニバンの「エリシオン」の後継も担うこととなった新型「オデッセイ」。3、4代目モデルの特長だった低い車高をやめ、広さ重視の箱型スタイリングを採用した。 拡大
ダッシュボードもシートも真っ黒な「アブソルート」に対し、標準車はシートやインパネなどにアイボリー、木目調パネルにブラウンを採用している。
ダッシュボードもシートも真っ黒な「アブソルート」に対し、標準車はシートやインパネなどにアイボリー、木目調パネルにブラウンを採用している。 拡大
ウオークスルーできることを優先し、前席のセンターコンソールは廃止。代わりに、必要に応じて引き出して使えるドリンクホルダー付きのトレーを装備している。
ウオークスルーできることを優先し、前席のセンターコンソールは廃止。代わりに、必要に応じて引き出して使えるドリンクホルダー付きのトレーを装備している。 拡大
3列目シートは「ステップワゴン」などと同じく床下に格納するタイプ。(写真をクリックすると、シートアレンジが見られます)
3列目シートは「ステップワゴン」などと同じく床下に格納するタイプ。(写真をクリックすると、シートアレンジが見られます) 拡大
ホンダ オデッセイ の中古車

ビジネスクラス顔負けのシート

キャビンに入ると、まず「劇画調」だったインパネまわりが、「レンジローバー イヴォーク」を思わせるほど上質になったことに目が行く。タッチ式エアコンスイッチは「歩きスマホ」を連想させるので個人的には好ましくないと考えるが、それ以外は大人っぽく落ち着ける仕立てだ。

3列7座あるシートのうち、特等席は間違いなく2列目だ。試乗した「G・EX」の7人乗りに装備されるキャプテンシートは、背もたれに連動して座面も傾き、背もたれは中折れ調節もできるという、航空機のビジネスクラスを思わせる仕掛け。シートベルトがシート内蔵なのでフィット感が高いことも好印象だ。椅子だけでも欲しいと思うミニバンユーザー、多いんじゃないだろうか。

それに比べると前席は、ややペタッとした着座感。3列目は、背もたれは短いものの、2列目のスライドを最後端にセットしても、身長170cmの僕にとっては足元、頭上とも余裕が残る。輸入車ではプラス2と割り切りがちなこの空間を、しっかり使える場所に仕立てた真面目さが日本らしい。

いつしか背が高くなったことや、スライドドアを使ったことなど忘れ、こういう進化もアリだと思ったが、走りだしたら違う部分で気になる点があった。

エアコンの操作はタッチパネル式。「G・EX」ではフロントシートの左右と、2、3列目席で、温度を個別に調整することができる。
エアコンの操作はタッチパネル式。「G・EX」ではフロントシートの左右と、2、3列目席で、温度を個別に調整することができる。 拡大
シートレイアウトには2列目キャプテンシートの7人乗り仕様と、同ベンチシートの8人乗り仕様を用意。7人乗り仕様では、フロントシートからサードシートまでの室内ウオークスルーが可能だ。
シートレイアウトには2列目キャプテンシートの7人乗り仕様と、同ベンチシートの8人乗り仕様を用意。7人乗り仕様では、フロントシートからサードシートまでの室内ウオークスルーが可能だ。 拡大

7人乗り仕様のセカンドシートには、背もたれの中折れ機構や内蔵式オットマンなどを採用。3列目シートをたたんでのロングスライドなど、シートアレンジも多彩だ。(写真をクリックすると、シートアレンジが見られます)


	7人乗り仕様のセカンドシートには、背もたれの中折れ機構や内蔵式オットマンなどを採用。3列目シートをたたんでのロングスライドなど、シートアレンジも多彩だ。(写真をクリックすると、シートアレンジが見られます)
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3列目シートの背もたれは、4:2:4の3分割で個別にリクライニングできる。
3列目シートの背もたれは、4:2:4の3分割で個別にリクライニングできる。 拡大

一級品のハンドリング、要改善の乗り心地

2.4リッター4気筒エンジンのスペックは旧型と大差なし。車両重量は1800kgちょうどで、旧型の同等グレードより約150kg重くなった。たしかに記憶の中にある旧型より、エンジンを回し気味の走りになる。

そのためか、街中と都市高速中心での車載燃費計の数字は7.3km/リッターにとどまった。その後借り出した「オデッセイ アブソルート」は、高速道路中心のルートや直噴エンジンの効率の高さが味方して、同じレギュラーガソリンで10km/リッターを出したので、全車アブソルート用ユニットにすればいいのにと思った。

もうひとつ気付いたのは、荒れた路面でドタバタする乗り心地だ。後ろのシートに移るほどそれが顕著になる。重く背が高くなったボディーに対し、サスペンション形式は先代の前後ダブルウィッシュボーンから前:マクファーソンストラット/後ろ:トーションビームに変わっているのだが、形式が悪いというより、熟成の途中という印象を受けた。
だからこそ意外だったのはハンドリング。ボディーサイズやシャシー形式の不利をみじんも感じさせず、ステアリングを切ったとおりに弧を描いていく。操舵(そうだ)感の自然さも、いい意味でミニバンらしからぬレベルだった。さらに着座位置が高く、Aピラーが手前に引かれたおかげで、車両感覚もつかみやすくなった。

カッコよさより広さや使いやすさを重視したような新型だが、その中で低さにこだわった成果は、シュアな走りにしっかり表れていた。乗ればたしかにオデッセイだ。

(文=森口将之/写真=荒川正幸)

標準車のエンジンのアウトプットは最高出力175ps、最大トルク23.0kgm。燃費性能は11.6~13.8km/リッター(JC08モード)と、動力性能、燃費ともに「アブソルート」に一歩譲る。
標準車のエンジンのアウトプットは最高出力175ps、最大トルク23.0kgm。燃費性能は11.6~13.8km/リッター(JC08モード)と、動力性能、燃費ともに「アブソルート」に一歩譲る。 拡大
標準車に搭載される、2.4リッター直4エンジン。燃料噴射技術については、「アブソルート」のエンジンが筒内直接噴射を採用しているのに対し、こちらはポート噴射となっている。
標準車に搭載される、2.4リッター直4エンジン。燃料噴射技術については、「アブソルート」のエンジンが筒内直接噴射を採用しているのに対し、こちらはポート噴射となっている。 拡大
標準車のタイヤサイズは、「アブソルート」より一回り小さな215/60R16。写真のアルミホイールは「G・EX」の専用品で、下位グレードの「B」「G」にはスチールホイールを設定している。
標準車のタイヤサイズは、「アブソルート」より一回り小さな215/60R16。写真のアルミホイールは「G・EX」の専用品で、下位グレードの「B」「G」にはスチールホイールを設定している。 拡大
 
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テスト車のデータ

ホンダ・オデッセイ G・EX(7人乗り)

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4830×1800×1695mm
ホイールベース:2900mm
車重:1800kg
駆動方式:FF
エンジン:2.4リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:CVT
最高出力:175ps(129kW)/6200rpm
最大トルク:23.0kgm(225Nm)/4000rpm
タイヤ:(前)215/60R16 95H/(後)215/60R16 95H(ダンロップSP SPORT 230)
燃費:13.4km/リッター(JC08モード)
価格:336万円/テスト車=343万3500円
オプション装備:マルチビューカメラシステム+スマートパーキングアシストシステム(7万3500円)

テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:1790km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(6)/高速道路(4)/山岳路(0)
テスト距離:128.2km
使用燃料:16.8リッター
参考燃費:7.6km/リッター(満タン法)/7.3km/リッター(車載燃費計計測値)
 

ホンダ・オデッセイG・EX
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森口 将之

森口 将之

モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車は「シトロエンGS」と「ルノー・アヴァンタイム」。

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