第224回:最新のポルシェが大集結
ポルシェ フルモデルレンジ試乗会(前編)
2014.02.05
エディターから一言
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総勢18台のポルシェが並んだ駐車場は壮観だった。
これを「どうぞご自由にお乗りください」というのだから、大盤振る舞いである。
これが普通のクルマだとしても、豪華な「バイキング食べ放題」なのに、目の前に並んでいるのは最新のポルシェなのだから、「ステーキ食べ放題」に「フォアグラ食べ放題」がくっついちゃったくらいのインパクトだ。
「さあ、どれから食べようかしら」と迷いながら、「ポルシェオールスターズ」の中から計8台に試乗した。
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ポルシェ911カレラ(RR/7MT)……価格=1145万円/テスト車=1541万3000円
最初に乗り込んだのは、「911カレラ」。頭の中ではメディア向けの試乗会だとわかっていても、「いつか万が一新車のポルシェを購入する機会に恵まれたなら」などというようなことを、ついつい想像してしまう。そんな私の「想像上の購入候補」筆頭が「カレラ」である。同意してくれる方も多いと思うが、私にとってポルシェといえば911で、911といえばカレラだ。
試乗車はポルシェ車の例に漏れず、これでもかというほどオプションがてんこ盛りで、その額およそ400万円。「素の911」というには装飾過多な気もするが、基本のキであるこのクルマにまずは試乗した。
ポルシェの運転席に座ると、ギュッと引き締まった気持ちにさせられる。
歌手がステージ衣装に袖を通す時は、きっとこんな気分なんじゃないだろうか。「よし、走るぞ」と、どこかのスイッチが入る感じは、911オーナーに話を聞くと、長年所有していても変わらないらしい。
その理由は、エンジンの性能とか、ボディー剛性の高さとか、サスペンションセッティングの良さとか、いろいろな理由があるのだろうけれど、いざ走りだすとそんな細かいことはどうでもよくなって、いつまでもこのみなぎる興奮に身をゆだねていたくなる。
やっぱりいいな、911は。
ポルシェ・ケイマンS(MR/6MT)……価格=773万円/テスト車=1194万3000円)
911にするか、「ケイマン」にするか。買えもしない私でさえ悩むのだから、買おうとする人はさらに悩ましい選択だろう。ちょっと無理して911にするか、それとも思う存分オプションを装着した「ケイマンS」を買おうか。
911カレラの7MT(1145万円)とケイマンSの6MT(773万円)の価格差は、標準の状態で372万円。高級ミニバンが買えちゃうほどの差額があるが、オプションを付けるとその差はぐっと縮まる。
テスト車のケイマンSも総額421万3000円のオプションを装着しているが、そのどれもが魅力的である。スポーツバケットシートは、巨人の手で背中をぐっとつかまれているようなホールド感があるし、「ポルシェ セラミックコンポジットブレーキ(PCCB)」はペダルとブレーキパッドが直結しているかのようなダイレクトさが気持ちがいい。どれも「付けといた方がいいな」というオプションばかりである。
で、「素の911カレラにするか、フル装備のケイマンSにするか」という、いつか私の身に降りかかってくるかもしれない大問題の、私なりの回答は「フル装備の911カレラにしよう」である。
走りの好みでいえば、ケイマンSの方がより軽快で「遊べる」感じがするので好きなのだが、乗り比べてみると、やっぱり911カレラが欲しくなってしまう。
狭いながらも後席が付いているので荷物を置くことができる、ちょっとだけパワーがある、5連メーターがかっこいい、トランスミッションが7段もあるなどなど、911の利点は数え上げればきりがないが、最終的には911という名前に魅力があるということなのだと思う。
なので「ちょっと頑張って911カレラが買えるなら、もっと頑張って911カレラにオプションを盛ろう」というのが、この時点で出した結論だった。「どっちにしろ買えないけど」という前置き付きならではの、無責任な結論ではあるけれども。
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ポルシェ・ボクスター(MR/7AT)……価格=643万円/テスト車=762万4000円
「どっちにしろ買えないけど」とは言いつつも、テレビの前で大島優子がいいか、はたまた篠田麻里子がいいかを悩んでいるわけではない。クルマは売り物である以上、価格の安い方が、可能性としては手に入りやすいのは確固たる事実である。
その観点からすると、「ボクスター」は私にとって一番身近なアイドルということになる。
でも、手に届きやすいというだけで、好きになってしまっていいものだろうか。
果たしてそれは本当の愛なのか。
結論から言うと、ボクスターは愛すべき存在であった。
試乗したのはPDKのモデルでオプションを含めた価格が762万4000円のクルマ。オプション総額119万4000円と、ポルシェにしては控えめである。
シンプルでストイックでピュアな、今回試乗したポルシェの中では、最も「ポルシェ原理主義的」な一台だった。ほどよいパワーと軽い身のこなしは、じっくり付き合っても飽きがこなさそう。
こんなクルマと、何十年も暮らせたら最高だろう。年式が古くなり、あちこちガタも出始める。でもそれはオーナーも同じこと。一緒に年齢を重ねた、古女房のような関係になりたい。愛に満ちた幸せな家庭を築きますので、お嬢さんを僕にください! と返却時、ご両親にごあいさつしたくなってしまった。今日はヒゲをそって背広を着てくるべきでした。
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ポルシェ・ボクスターS(MR/6MT)……価格=740万円/テスト車=1023万3000円
ボクスターと「ボクスターS」。この違いは、単純にパワーの差や価格の差だけではないように感じた。試乗したボクスターSは、「ポルシェ・トルク・ベクトリング」(23万2000円)や「ポルシェ・アクティブサスペンション・マネージメント」(25万3000円)など、走りに寄ったオプションで仕上げられているせいもあるのだろうけれど、いつも本気で付き合わなければならないような気にさせられる。
もちろん、スポーツカーなのだからそれが理想的なのだが、「気が置けない仲」になるには、私自身のスキルアップが必要だ。
ただ、ボクスターSに乗っているうちに自分がより成長するという可能性も考えられなくはない。「ここはちょっと背伸びをしてもいいのかも」という誘惑を感じる。この甘いささやきに乗る覚悟こそが、「スポーツカーを所有する」ということなのだろうか。
ところで、先ほどのボクスターはPDKモデルで、このボクスターSはMT車だ。購入するならPDKかMTか。
私も、自動車好きの端くれとしては胸を張って「MT!」と声高らかに宣言したいところだが、ボクスターのPDKに乗ってしまうと、そうも言い切れない気持ちになってしまう。
私程度の運転スキルだったら、間違いなくPDKの方が速く走らせられるだろうし、シフトミスの危険もぐっと少なくなる。それに、なんといっても楽だ。
けれども、やすきに流れようとする自分が情けなくもある。
ここはやっぱり背伸びをするべきだろうか。甘い誘いの先には、花園が広がっているのか、その答えを想像するだけでもニンマリとしてしまうんだから、やっぱりクルマっておもしろい。
ここまで4台のポルシェを楽しんだが、後編でも引き続き、ポルシェの魅力にニンマリとさせられながら、さらに4台を試す。
(後編につづく)
(文=工藤考浩/写真=田村 弥)
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工藤 考浩
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