第229回:「ハズミ」と「デミオ」の関係は?
「マツダ跳(HAZUMI)」のチーフデザイナーにインタビュー
2014.03.14
エディターから一言
拡大 |
ジュネーブショーで注目を浴びているマツダのコンセプトカー「跳(HAZUMI)」。次期「デミオ」の予告編と見られるこのクルマの造形のポイントを、チーフデザイナーの柳澤 亮氏に聞いた。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
チーターが飛びかかる瞬間を表現
――より小さなクルマで「魂動(こどう)デザイン」を表現するうえでテーマの修正はありましたか?
魂動デザインを立ち上げてから「CX-5」「アテンザ」「アクセラ」と市販車が生まれてきました。それに続く「跳(HAZUMI)」も生命がもつ美しさ、力強さ、ダイナミックな動きをクルマで表現していくというコンセプトやフィロソフィーの根底は変わることはありません。とはいえ魂動デザインも進化させていく必要がありますし、コンパクトなBカー(Bセグメントカー)での表現というのもチャレンジではありました。
――デザインに際し、より力を入れたところはどこでしょうか?
跳で魂動デザインとして進化させたのは表情づくりです。これまでは全身で生命感を表現してきましたが、今回はフロントエンドでの表現に力を入れました。最初のコンセプトカーの「靭(SHINARI)」やアテンザなどはチーターがテーマになっていましたが、跳では同じチーターでも、もっと若いチーターのイメージ。ヘッドランプは獲物を狙う目つきをしっかりと表現し、グリルからヘッドランプにつながるシグネチャーウイングはクロムのパーツを立体的で深い造形にするべくこだわりました。獲物をクッとにらんで今まさに飛びかかるぞっていうシャープな表情を表現できていると思います。
――同じ魂動デザインでも、靭と跳では表現のテーマが異なるのですね。
靭は全身での生命感や躍動感の表現が伸びやかでわかりやすいですよね。あれはチーターが全力疾走しているさまをイメージしてます。足が伸びきっているような前後の動きでハイスピードな印象を出していますけど、それをそのままBカーでやってしまったら、なんだかちょっとおかしなことになるわけです。いろいろと試行錯誤しましたが、跳では今から獲物に狙いを定めてグッとかがみ、筋肉に力をためてバッと飛びかかろうとする瞬間のイメージ。同じ魂動デザインでも表現の仕方が違うのです。
踏ん張ったリアビューに自信
――フォルムを描くうえで、こだわったところがあれば教えてください。
フォルムは、キャビンをコンパクトに見せて後方にグッと引き、ロングボンネットを強調することにこだわっています。走りの喜びを生み出すスカイアクティブのエンジンがボンネットの下に入ってますよということを訴求するように考えているのです。そのためにAピラーの付け根はなるべく後方にしています。現行「デミオ」ですとAピラーの延長線上がフロントタイヤの前方になりますが、跳ではタイヤのセンターに突き刺さっていきます。それでも乗降性をしっかり確保するためにAピラーの角度としては少し立ち気味になりますが、ほどよいバランスのところに落ち着いたんじゃないでしょうか。
――ここに注目してほしいという箇所はありますか?
コンパクトなBカーで魂動デザインを表現するのはチャレンジではあるのですが、それを逆手にとってうまく仕上がったのがリアエンドです。斜め後ろからみると後足(リアタイヤ)がグッと大地に踏ん張っている感じが強調されていますよね。他のモデルもこういった表現には取り組んでいて、靭の場合はかなりのワイド・アンド・ローなので実現されてますが、アテンザではあそこまでいけていません。ハッチバックのほうが有利でしょうが、「アクセラスポーツ」は意外とリアオーバーハングがあります。跳は後ろからみるとリアタイヤがばっちり見えるぐらいにショートオーバーハングというのが幸いしていますね。
――市販されている現行型デミオから継承させた部分はありますか?
現行デミオもリアエンドの評判は良かったんです。特に女性のお客さまからは印象的でいいねと言われていました。そこで跳にも少しだけですが、現行デミオを意識したところを残しています。ヒップがキュッとした感じですね。また、女性からはこの跳の顔つきも「これはこれでカワイイね」と言われています。現行デミオはどちらかというと優しい雰囲気で跳は野性的なのですが、若いチーターの、ちょっと小生意気な感じがカワイイという感覚になり、愛着がわくんでしょうね。
インテリアにもこだわる
――柳澤さんのデザイナーとしての経歴を教えてください。
実は私、チーフデザイナーとしては珍しいことにインテリアデザイナー出身なのです。ですからインテリアにもこだわりましたよ。当社は“Be a driver.”というコミュニケーションもしていますが、ドライバーへはそういった走る喜びを最大限に提供したい。そこでコックピットゾーンをしっかりと造りました。それに対して助手席のゾーンは、シンプルで横にスカッと広げて開放感を表現しています。この2つのゾーン分けというのはアクセラでも採り入れてますが、跳ではよりシンプルに、強調してます。
――そのほかに見どころはありますか?
カラーにもこだわりました。一目見ただけでハッとするようなカラーコーディネーション。他のモデルは落ち着いた方向性ですが、Bカーならばこれぐらいの大胆さが似合うでしょう。ショーカーだからここまでできたということはありますが、ゆくゆくは市販車にもこういったテイストを採り入れたいと思っています。
――ずばり、跳は次期デミオと見ていいのでしょうか?
跳が市販車になっていくかどうかは、現時点では明言はできないのですが、まあ、「雄(TAKERI)」とアテンザの関係に近いといえばご想像いただけるんじゃないでしょうか。期待を裏切らないよう頑張りますので楽しみにしていてください。
(文=石井昌道/写真=石井昌道、マツダ)

石井 昌道
-
第876回:“ヨコハマ史上最高”が目白押し SUV向けスタッドレスタイヤの新製品「アイスガード8 SUV」を試す 2026.10.2 2026年9月1日に販売が開始された横浜ゴムのSUV用スタッドレスタイヤ「アイスガード8 SUV」。従来製品との比較で氷上性能を14%、雪上性能を4%、耐摩耗性能を11%アップさせたというその実力を、一足先に冬のテストコースで確かめた。
-
第875回:キモは氷上性能! ダンロップの新しいスタッドレスタイヤ「ウインターマックス アイスプロ」を試す 2026.7.1 違いは氷の上で表れる! ダンロップの新しいスタッドレスタイヤ「WINTER MAXX ICE-Pro(ウインターマックス アイスプロ)」に、冬の北海道で試乗。氷上性能を徹底的に追求したという新製品の、パフォーマンスの一端に触れた。
-
第874回:自動運転からワイパーまで! 自動車を支えるメガサプライヤー ボッシュのあくなき挑戦 2026.6.27 世界屈指のメガサプライヤー、ボッシュが開発中の新技術を披露! 市街地での高度な運転支援技術に、日本の方言にも対応した対話型AI、サーキット走行のノウハウを教えてくれるコーチング機能等々……興味深いその中身をリポートする。
-
第873回:ウエット路面に強み ミシュランの新タイヤ「パイロットスポーツ5エナジー」と「プライマシー5エナジー」を試す 2026.6.19 2026年1月29日に導入が発表されたミシュランの新製品「パイロットスポーツ5エナジー」と「プライマシー5エナジー」。これまでの特徴に加え、低燃費性能や耐摩耗性、ウエットグリップ性能のアップをうたう両モデルの走りを、クローズドコースで確かめた。
-
第872回:「フォレスター」がJNCAPで最高評価を獲得! “安全”に対するスバルの不断の取り組みに迫る 2026.6.6 相対速度100km/hの衝突後でも、普通にドアが開く!? 人気のSUV「スバル・フォレスター」が、日本の自動車アセスメントで最高評価を獲得した。安全なクルマづくりを第一とするスバルの取り組みを、群馬製作所で行われた衝突試験デモの様子とともにリポートする。
-
NEW
三菱eKクロスEV P(FWD)【試乗記】
2026.10.17試乗記三菱の軽乗用電気自動車(EV)「eKクロスEV」が、一部改良でデザインを刷新! 2022年発売の古参の一台は、台頭するライバルをどう迎え撃つのか? 最新モデルと比べても、キラリと光る魅力はあるのか? 軽EVのパイオニアが擁する一台の実力を確かめた。 -
NEW
写真で解説する「フィアット・グランデパンダ」
2026.10.16画像・写真ステランティスが「フィアットブランドの大きな柱のひとつとなる重要なモデル」と位置づける「グランデパンダ」が日本上陸。その具体的な見どころを、写真とともに解説する。 -
NEW
フィアット・グランデパンダ ハイブリッド ラプリマ(FF/6AT)【試乗記】
2026.10.16試乗記欧州を代表するコンパクトカーの一台である「フィアット・パンダ」が第4世代に進化。新たに「グランデパンダ」を名乗り、日本にやってきた。ずばり新型の見どころは車両の随所にちりばめられた初代モデルへのオマージュである。上位グレード「ラプリマ」の仕上がりをリポートする。 -
スズキの未来を徹底検証! 技術戦略説明会から“10年先のスズキの姿”を夢想する
2026.10.16デイリーコラム年間生産500万台で、Dセグメントまでカバーする巨大メーカーに!? スズキが発表した「10年先を見据えた技術戦略2026」を徹底検証。技術開発に製品開発、インドを核としたグローバル戦略などの中身を通して、「10年先のスズキの姿」を予想した。 -
賢い選択 ――キャデラック「LYRIQ」フラットプランのすゝめ――
2026.10.15投資家も太鼓判! 「キャデラック・リリック」×フラットプランという最適解<AD>クルマが変わり、時代も変われば“持ち方”だって変化する? お金のプロである投資家が、「キャデラック・リリック」の残価保証型リースを勧める理由とは? 夢の「2台持ち」をかなえる、最新電気自動車の賢い選び方を考えた。 -
間もなく正式発表 ミツオカの新型2シータースポーツカー「LA1」を予測する
2026.10.15デイリーコラム光岡自動車が2026年11月26日に正式発表を予定しているアメリカンスタイルの新型2シータースポーツカー「LA1」。現在公開されているLA1の画像とティーザーサイトに掲載された情報から、その特徴を分析する。
