第236回:「ガヤルド」を超えるか?
「ランボルギーニ・ウラカン」を学ぶ“テックデイ”に参加
2014.04.12
エディターから一言
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ランボルギーニ史上、最大の成功作となった「ガヤルド」の後継車なら、“守りのモデルチェンジ”という選択肢もあっただろう。しかし、彼らは新作「ウラカン」を世に送り出すにあたり、進化の手をゆるめはしなかった。ランボルギーニの本拠地、サンターガタ・ボロネーゼでウラカンの構造を学ぶ「テックデイ」が開催された。その“攻め”の内容には、ただただ感服するしかなかった。
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直噴とポート噴射を使い分けるV10エンジン
ジュネーブショー開幕直前。筆者はサンターガタ・ボロネーゼのランボルギーニ本社を訪れていた。2013年末、ランボルギーニ社創立50周年という節目の年の締めくくりとして発表された新型スーパーカー「ウラカンLP610-4」の全容を明らかにするテックデイが開催されたのだ。
いつものように、チェントロスティーレ(デザインセンター)でカンファレンスが始まる。今回はなんと、アウディの研究開発部門のトップであるウルリヒ・ハッケンベルク氏の熱い語りでスタートした。そして、社長兼CEOのステファン・ヴィンケルマン氏が登壇したのち(インタビュー記事はこちら)、具体的なプレゼンテーションがスタート。
まずは、ウラカンのエンジニアリングトピックについて、ランボルギーニの研究開発部門のディレクター、マウリツィオ・レッジャーニ氏が解説する。
「競合車よりも高性能であること。つまりこのクラスにおけるベンチマークになることを目標にしました。そのために、重量を増やさずボディー剛性を50%以上引き上げて、次元の違う性能を実現しようとしたのです。カーボンファイバーとアルミニウムのハイブリッドボディー構造こそ最良の解決策でした」
スーパーカーの肝心であるエンジンは、5.2リッターのドライサンプV10である。とはいえ、「ガヤルド」や「アウディR8」用とは(現時点では)違って、デュアルインジェクション・システムを備えた最新バージョンである。
このシステムは、負荷状態に応じて燃料の噴射方式を変えるというもの。発進や加速といった高負荷時には燃料を直接シリンダー内に噴射(=直噴)して12.7:1という比較的高めの圧縮比とする一方で、一定速走行などの低負荷時にはポート噴射を使って燃料消費を抑え、排ガスをクリーンにする仕掛けだ。中間の負荷走行域では、両方の噴射システムを効率よく使用する。これにより、自然吸気(NA)V10エンジンをユーロ6排ガス規制に対応させた。
ちなみに、首脳陣は大排気量NAエンジンを「欠くべからざるランボルギーニの魅力だ」と語ったが、ハッケンベルク氏は将来のダウンサイジングを否定しなかった。
デュアルクラッチ・トランスミッションを採用
ウラカンLP610-4の最高出力は、車名にもあるとおり610psである。最大トルクは57.1kgm(560Nm)だ。ガヤルドの最終モデルと比べて大幅に性能アップさせながら、1000rpm以下で最大トルクの75%を発生するという柔軟さも備えた。しかも、6000rpm以上のパワーと6500rpm以下のトルクで、ガヤルド用V10を上回る強力なエンジン特性が与えられている点にも注目したい。
トランスミッションでは、「eギア」(2ペダルのシングルクラッチ・システム)をついに諦めて、7段デュアルクラッチ・トランスミッションの採用に踏み切った。効率の向上とシフト時間の短縮といったハードの実益よりも、ユーザーが喜ぶというソフト面でのメリットが大きいかもしれない。猛牛らしい“剛直”、かつ豪快な変速フィール(ショック)を失った可能性も、なきにしもあらずだが……。
4WDシステムも、従来のVT(ヴィスカス・トラクション)方式をやめ、「アヴェンタドール」と同じ電子制御式多板クラッチで前後輪をつなぐシステムとしている。通常走行時は前30:後ろ70の駆動力配分で、最大で前輪に50%、後輪には100%のトルクを配分する。
シャシー関係にも見どころは多い。鍛造アルミニウム製のダブルウィッシュボーン・サスペンションに、ランボルギーニとしては初めてマグネティックライド(磁性流体ダンピング制御)ダンパーをオプション設定した。
また、ステアリングシステムも新しく、エレクトロメカニカル(電動)パワーアシスト付きのラック・アンド・ピニオン式で、ギアレシオは16.2:1とされた。さらにオプションで、「ランボルギーニ・ダイナミック・ステアリング(LDS)」と呼ばれる電動モーターによる可変ギアレシオシステムを装備することも可能だ。
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シャシーが「魂」を持った!?
シャシー関係で最大のポイントは、最新の電子プラットフォームと接続されているということ。このシステムは、「ランボルギーニ・ピアッタフォルマ・イネルツィアーレ(LPI)」(直訳すれば「ランボルギーニ慣性プラットフォーム」の意)と呼ばれるもの。車体の重心近くに加速度センサーとジャイロスコープが備わり、ローリング、ピッチング、ヨーイング、および加減速といった車両の挙動を常に把握。これらの情報を、高速ネットワークを経由してすべての電子制御系へと伝達することで、常時、最高のダイナミック性能を発揮させる。
電子制御をこれだけたっぷり導入したということは、当然、ドライブモード切り替えも装備される。ランボルギーニはこの機構を新たに「アニマ」(イタリア語で「魂」の意)と呼び、アヴェンタドールと同様に「ストラーダ」(ノーマル)、「スポルト」(スポーツ)、「コルサ」(サーキット)の3モードの中から好みのキャラクターが選べるようになっている。
足元には、骨太なデザインの20インチ・アロイホイールが備わる。その隙間から、カーボンセラミックディスクをもつ強力なブレーキシステムが見えてくる。タイヤはピレリPゼロのウラカン専用品だ。
最後に、レッジャーニ氏が最も熱く語ったボディーストラクチャーに注目してほしい。アルミニウムとカーボンファイバー強化樹脂(RTM成形CFRP)のハイブリッドボディー構造としたのだ。
ヌードボディーが展示されていたが、フロアやセンタートンネル、サイドシル、リアバルクヘッド、Bピラーの一部といった具合に、ドライバーまわりにCFRPを配置しているのが分かる。それらは、ステンレススチールのファスナーを介してアルミニウムボディーと接着・接合されていた。
これによりレッジャーニ氏が目標とした数値、すなわち従来のガヤルド用アルミニウム・スペースフレームよりも10%軽く、50%高剛性のボディー構造を実現した。CFRPをドライバーまわりに使用することで、ダイナミック性能面のみならず、側面衝突時における衝撃吸収にも役立つという。
パワーウェイトレシオは2.33kg/psで、最高速は325km/hオーバー。0-100km/h加速は3.2秒。ガヤルドの最強仕様をサーキットテストコースで圧倒したという。
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デザインはランボらしさをクリーンに表現
レッジャーニ氏がメカニズムを熱く語ったあとは、チェントロスティーレのボス、フィリッポ・ペリーニ氏がウラカンのデザインを語る番だ。ペリーニ氏は、実は「アルファ・ロメオ8C」もデザインした実力者で、フォルクスワーゲングループ全体のデザインを統括するワルター・デ・シルヴァ氏のまな弟子である。ランボルギーニでは、ガヤルドのマイナーチェンジ以降、アヴェンタドールはもちろん、数々のコンセプトカーの指揮を執っている。
「チェントロスティーレのスタッフたちには、最初にこう指示しました。ランボルギーニらしさをクリーンに目指せ。要素をミニマムに抑えることで、より純粋さを表現してみようと言ったのです。その結果が、シングルモーションの特徴的なデザインとなって表れていると思います」
なるほど、ウラカンのフォルムはワンモーションで描けるもので、(アグレッシブさが売りとなりがちな)スーパーカーの世界ではとても新鮮に映る。ガヤルドのようなショルダーラインがまるでなく、すっきりとなで肩の柔らかいライン構成とした。ある意味、フォルムは女性的ですらある。
けれども、ディテールの表現は完全なランボルギーニテイストだ。迫力のマスクはもちろん、リアからの眺めは猛牛のスーパーカー以外の何モノでもない。ディテールのモチーフは、限定販売が決まっている「セストエレメント」から、その多くを採りいれた。ちなみに、前後バンパーやサイドシルといった樹脂製パーツを除き、ボディーパネルはほぼすべてアルミニウム製である。
インテリアはどうか? 実際に座ってみた第一印象は、とてもラグジュアリー。と同時に、空間的にもガヤルドより開放的で、前方視界が素晴らしい。見栄えと機能性で、スーパーカーというよりも上質なGTに乗っている感覚だ。
ダッシュボードまわりの見栄え質感では、アヴェンタドールを完全に上回っている。ステアリングホイールの向こうには12.3インチのTFT液晶パネルがあり、3種類のスクリーンモードに切り替え可能だ(画面をすべてマップにしてナビを展開することもできる)。センターコンソールにも小さなTFTパネルが備わる。
サプライヤーと一体となってまったく新しい品質管理システムを採用したことも、ウラカンの内外の見栄え質感を引き上げた要因だ。クラスナンバーワンのクオリティーを目指している。
生産は、従来のガヤルドと同様に、パワートレインとハイブリッドボディーがドイツからイタリア本社工場へ送られてくる。23のワークステーションをもつ最終組み立てラインは、ガヤルドより20%も効率的な組み立てが可能になっているという。現時点では日産13台を計画。全世界で既に1000台以上のオーダーを受けているというから、しばらくは納車待ちの列ができそうだ。
日本上陸は早くて2014年の秋ごろだろう。ちなみに価格は2750万円(税抜き)と発表されている。
(文=西川 淳/写真=ランボルギーニ)
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西川 淳
永遠のスーパーカー少年を自負する、京都在住の自動車ライター。精密機械工学部出身で、産業から経済、歴史、文化、工学まで俯瞰(ふかん)して自動車を眺めることを理想とする。得意なジャンルは、高額車やスポーツカー、輸入車、クラシックカーといった趣味の領域。
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