キャデラックCTSエレガンス(FR/6AT)
もはやフォロワーではない 2014.04.25 試乗記 アメリカが誇るプレミアムブランド、キャデラックのEセグメントモデル「CTS」がフルモデルチェンジ。強力なライバルに勝負を挑む、3代目の実力に触れた。ドイツ御三家と真っ向勝負
1999年に登場したコンセプトカー「エボーク」以来、その先鋭性を「アート&サイエンス」と表し、デザインの改革に取り組んできたキャデラック。CTSはそのフィロソフィーを最初にくんだモデルとして2003年にデビューした。
初代、そして先代の市場的なポジションは、DセグメントとEセグメントの中間的な車格を、Dセグメント側に近い価格で供するというもの。つまり、ドイツのプレミアムブランドとは微妙に一線を画していたと見て取れる。
が、昨年Dセグメントど真ん中の「ATS」を投入したことで彼らの戦略は明確になった。すなわちドイツ勢のフォーマットにそろえることで、本国以外のマーケットでも彼らと同じ俎上(そじょう)に乗っていくということだ。その戦略に沿って、3代目となる新型CTSはサイズを若干拡大し、「メルセデス・ベンツEクラス」「BMW 5シリーズ」そして「アウディA6」と完全に肩を並べることになった。とあらば、その上、「メルセデス・ベンツSクラス」が牛耳るLセグメントへの参入も当然視野に……というのはいささか早計な話だろうか。
特長は軽さと重量バランスのよさ
言い訳なしでEセグメント市場に打って出る新型CTSのウリは、軽さと走り。すなわち、かつてのキャデラックのイメージとはまるっきり反対の特徴を持ち合わせているということだ。アルミとスチールを効果的に配したハイブリッドアーキテクチャーはATSのそれをベースにしたもの。加えてボンネットやドアなどにもアルミパネルが用いられた結果、車重は同様のハイブリッド構造を持つアウディA6の2リッターFFモデルとほぼ同一の、1.7トンに抑えられている。組み合わされる2リッター直4直噴ターボエンジンは276psを発生し、0-100km/hを6.6秒で走り抜けるというから、軽量化の恩恵は動力性能にも十分に表れているといえるだろう。ちなみにそのエンジンは限りなく室内側に押し込まれており、前後重量配分は50:50と、パッケージ面でも走りにこだわった跡が見て取れる。
ホイールベースは2910mmと、同じFRレイアウトのライバルよりも長く取られているが、後席の居住性がずぬけているということはない。シートの肉厚などに工夫の余地はありそうだが、あえて足元空間よりも座り心地の方を選んだということだろう。ドイツ勢のそれよりも若干沈み込みの深い着座感に、懐かしい出自が伺える。それは前席も同様で、乗員をふわりと面で支える構成は、どちらかといえばレクサスのそれに近いかもしれない。
さすがはIT大国のクルマ
アメリカ車のウイークポイントでもあった内装の仕立ては、ライバルを凌駕(りょうが)するとは言わずとも、それにほぼ肩を並べたと言ってもいいだろう。ダッシュボードやセンターコンソールもしっかりと剛結されているだけでなく、アラの出やすいピアノラッカー調パネルの表面処理、トリムとメタル加飾のはめ合わせやその仕上げの質感など、総じて満足できるところにある。インテリア全体を包み込むレザーの張り込みにやや肉厚感があるのは、仕上げ精度よりもキャデラックならではのセンスとみるべきだろう。ちなみに上位グレードでは、ライバルがオプション扱いとするセミアニリン染めのレザーシートやリアルカーボンのトリムなどが標準装備となる。
さらにCTSの場合、インフォテインメントの充実も特徴のひとつとして挙げられる。タッチパネルインターフェイスの「CUE」は日本仕様のナビゲーションともしっかり連動し、計10台にも及ぶモバイルガジェットとのワイヤレス接続も可能。AC電源も備えるあたりは、さすがにIT大国のラグジュアリーカーといった趣だ。標準搭載されるボーズのプレミアムサラウンドシステムには、車内に進入するノイズと逆相の周波数を発することでそれを相殺する機能が盛り込まれている。これによって遮音材などの物量に頼らずとも静粛性は保たれ、ひいては軽量化につながる……というただし書きはちょっと大げさではないかと思いつつも、試乗ではその効果をしっかり体感することになった。
快適、かつアグレッシブ
基本的にはATSと同じ4気筒エンジン、そして6段ATを搭載するCTSの静粛性は、明らかにATSを上回っていた。加えて、ATSでは若干際立っていた中高回転域の荒っぽいエキゾーストノートもこちらは控えめにしつけられている。総じて音環境は、コンフォートとスポーティーとのバランスに長(た)けた、セグメントなりの上質なものになっているといえそうだ。
それは乗り心地もしかり。スポーティーなハンドリングを強く意識した一方で、大きめの凹凸や目地段差などではランフラットの硬質な突き上げが感じられたATSに対して、CTSのそれはやや柔らかいタッチで、ピッチングもマイルドに仕上がっている。試乗車はオプションの19インチタイヤを履いていたが、街乗り、高速巡航ともに若干の硬さを伝える程度で、著しい不快感を覚えることはない。さらに標準設定される17~18インチではさらにアタリが柔らかくなる……が、それでもライバルと比較すれば、若干締められた方向にセットアップされているという感触だ。マグネティックライドのダンピングレードをスポーツの側に振れば、クルマの動きはライバルを上回るほどカチッとしたものになる。ロール量ははっきりと少なく、入力をガンガン掛けても動じることのない中高速コーナーの振る舞いは、スポーツセダンとしてみてもかなり攻撃的な部類といえるだろう。
質感で肩を並べ、走りで差をつける
低回転域から分厚いトルクが放たれるエンジンと6段ATのマッチングは、このクルマに粘り強く息の長い加速感をもたらしており、アクセルを頻繁に底踏みせずとも十分な駆動力をキックダウンなしでもたらしてくれる。燃費は100km/h巡航で12~13km/リッター程度という車載燃費計の表示をみるに、ライバルより1割は劣りそうな印象だが、この扱いやすさとのトレードオフであると考えれば納得できる範疇(はんちゅう)だと個人的には思う。
総じてクラス水準のクオリティーを備えながら、その上でライバルをカモる勢いの運動性能を備え、それらを前衛的でありながら出自をきちんと感じさせるデザインで包んでいる。よもやそんなクルマがキャデラックを名乗るとは思わなかった……という方にこそ、CTSはぜひ試乗してもらいたいモデルだ。それは先んじて登場した「レクサスGS」にも当てはまるが「いつまでもフォロワーとは言わせない」という意気込みが、ここまでブランドをドラスティックに変えるのかと驚かされるはずである。
(文=渡辺敏史/写真=郡大二郎)
テスト車のデータ
キャデラックCTSエレガンス
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4970×1840×1465mm
ホイールベース:2910mm
車重:1700kg
駆動方式:FR
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:276ps(203kW)/5500rpm
最大トルク:40.8kgm(400Nm)/3000-4500rpm
タイヤ:(前)225/35R19 96Y/(後)225/35R19 96Y(グッドイヤー・イーグルF1アシンメトリック2)
燃費:11.8km/リッター(欧州複合モード)
価格:699万円/テスト車=802万400円
オプション装備:車体色<ブラックダイヤモンド>(12万9000円)/CUE統合制御ナビゲーションシステム(35万円)/フロアマット(5万9400円)/フロントグリルキット<ブラッククロム>(8万4000円)/19インチアルミホイールパッケージ(40万8000円)
※価格はいずれも8%の消費税を含む。
テスト車の年式:2014年型
テスト車の走行距離:1184km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
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渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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