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【スペック】全長×全幅×全高=4430×1810×1710mm/ホイールベース=2605mm/車重=1640kg/駆動方式=4WD/2リッター直4DOHC16バルブターボ(179ps/4500-6200rpm、28.6kgm/1700-4500rpm)/価格=389万円(テスト車=同じ)

フォルクスワーゲン・ティグアン スポーツ&スタイル(4WD/7AT)【試乗記】

SUV版“GTI” 2011.12.11 試乗記 下野 康史 フォルクスワーゲン・ティグアン スポーツ&スタイル(4WD/7AT)
……389万円


デビューから3年目のマイナーチェンジで、外観やパワートレインが刷新された「フォルクスワーゲン・ティグアン」。スタイリッシュな都会派「スポーツ&スタイル」で、その走りを試した。
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少数派のフォルクスワーゲン

水平基調の新しい「VW」グリルに変わったのが最新の「ティグアン」である。ひと足先に「トゥアレグ」もこの顔になったが、幅が広すぎて、水平ラインが間延びしすぎのように感じる。その点、ティグアンはちょうどいい。

新型では、よりオフロード仕立ての「トラック&フィールド」が落とされて、「スポーツ&スタイル」のみになった。2012年春、これに「Rライン」が加わると新ラインナップが完成する。

エンジンはこれまでどおりの2リッター4気筒ターボだが、10・15モード燃費(11.6km/リッター)を落とさずに出力を170psから179psに上げた。さらに変速機を6段ATから湿式の7段DSGに換装したのが新しいスポーツ&スタイルである。いまや「パサート」が1.4リッターのTSIで走るのだから、ティグアンもダウンサイジングできそうだが、本国にはある1.4リッターだとMTしか品ぞろえがない。かくして、いまやごく少数派の2リッター4気筒フォルクスワーゲンである。

パサート初出のドライバー疲労検知システムが装備されたのも新しい。最短10分前からステアリング入力でそのドライバーの運転操作をデータ化し、疲労や眠気で生じる特有の挙動を検知すると、警告音や計器盤内のサインで休憩を促すというもの。個人的に高速道路で居眠り運転しそうになることがたまにあるので、ぜひこのシステムの恩恵に浴してみたいと思うのだが、今回もあいにく運転中に眠くなることはなく、コーヒーカップの警告サインを見ることもなかった。


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エンジンは9psのパワーアップ。また従来、特別仕様車の「ライストン」と高性能版「Rライン」に採用されていた7段DSGが、「スポーツ&スタイル」にも採用された。
エンジンは9psのパワーアップ。また従来、特別仕様車の「ライストン」と高性能版「Rライン」に採用されていた7段DSGが、「スポーツ&スタイル」にも採用された。
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ドライバーの集中力低下をステアリング操作などから検出し、アラーム音と表示により休憩を促す「ドライバー疲労検知システム」が新たに採用された。装着されているカーナビは、ディーラーオプションの「720ナビ」(26万2900円)。
ドライバーの集中力低下をステアリング操作などから検出し、アラーム音と表示により休憩を促す「ドライバー疲労検知システム」が新たに採用された。装着されているカーナビは、ディーラーオプションの「720ナビ」(26万2900円)。
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ちょうどいい四駆SUV

ティグアンは、国産、輸入車を問わず、最もファン・トゥ・ドライブなコンパクトSUVだと思う。ソリッド感のある足まわりは、ワインディングロードで大入力を与えると、しなやかさを増し、四駆SUVにあるまじき(?)軽快さをみせる。アイポイント(視点)の高さとファン・トゥ・ドライブは、単純に反比例の関係にあると信じているが、ロードクリアランスをゴルフと35mm差に抑えたほどほどさが効いている。ショーン・レノンじゃないが、「ちょうどいい四駆SUV」なのだ。

活発に走らせると楽しいのは、エンジンによるところも大きい。旧型との9ps差は体感できなかったが、最初のひと踏みでグワっとスピードに乗せる力強さは、1.4リッター・ツインチャージャーによく似ている。それに加えて、トップエンドまで続く素直な伸びの気持ちよさに、やはり2リッターの余裕を感じる。トリセツにひっそり書かれたデータを見てびっくりした。最高速は213km/hも出るのだ。「ゴルフ」ベースのSUVというよりも、「ゴルフGTI」のSUVである。

今回、計測はできなかったが、もともと車重のわりによかった燃費はさらに向上しているはずだ。7段DSGのおかげで100km/h時のエンジン回転数は大台をきる1900rpmに下がった。試乗メモを調べると、6段AT時代は2750rpmだった。5速に落とした7段DSGと同じである。燃費でも音でも、高速道路を使う長距離ウィークエンダーには特に恩恵が大きいだろう。

標準のアルカンターラ&ファブリックシート。オプションで「レザーシートパッケージ」(27万3000円)も用意される。
標準のアルカンターラ&ファブリックシート。オプションで「レザーシートパッケージ」(27万3000円)も用意される。
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オンロード志向を強めた

トラック&フィールドがカタログ落ちしたのは、日本での現実のマーケティング(売れ行き)の結果だろうが、スポーツ&スタイルにもあった “OFF ROAD”ボタンが消えたのは残念である。雪道や泥濘(でいねい)路の坂道でスロットルを自動調整してハンドル操作に集中させてくれるヒルディセント・アシストもなくなった。ボタンを押すと、この半自動坂下り装置がオンになるだけでなく、スロットルや変速や電子デフロックのマップも変わる。オフで使う機能を定食のようにひとそろえにした便利な装備だったのだ。これにより、オフロード四駆としての能力は少し後退してしまった。でも、こういうカタチをしていて、実は2WDというクルマも増えてきたから、「4MOTION」が付いているだけでよしとすべきか。

ティグアンの真価を再認識したのは、早朝の山手通りを走ったときだった。もともとアップダウンのある地形に加えて、地下工事の影響で長い区間にわたって舗装がガタガタだ。工事現場の遮蔽(しゃへい)板の陰からはドライブシミュレーターみたいにクルマやバイクが飛び出してこようとする。そんな難所でも、ティグアンなら自信をもって飛ばせる。「東京砂漠」と歌ったのは前川清だが、東京もけっこうオフロードなのだ。狭い道ですれ違うとき、気軽に片輪を歩道に乗り上げて待てる、なんていうのもゴルフGTIにはできない芸当である。

価格は389万円。「BMW X1」の四駆は「424万円より」。2リッターの「アウディQ5」は574万円もする。価格競争力の高さはあいかわらずだ。

(文=下野康史/写真=荒川正幸)

水平基調のフロントグリルやLEDポジションランプを備えたヘッドライト、L字型のナイトデザインを持つリアコンビネーションランプは、上級SUV「トゥアレグ」からそのイメージを受け継いだもの。
水平基調のフロントグリルやLEDポジションランプを備えたヘッドライト、L字型のナイトデザインを持つリアコンビネーションランプは、上級SUV「トゥアレグ」からそのイメージを受け継いだもの。
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下野 康史

下野 康史

自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。

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