第441回:コージの勝手に“モーターショー論” ショーは“都市力”、クルマは“カルチャー”なのだ!!
2011.12.09 小沢コージの勢いまかせ!第441回:コージの勝手に“モーターショー論”ショーは“都市力”、クルマは“カルチャー”なのだ!!
東京ビッグサイトに場所を移して開催された、2011年の東京モーターショー。そこで小沢コージが感じたこととは?
ひとまずは大成功でしょ!
風向きがやっと追い風になってきたというか、まずは大成功の予感ですな。「東京モーターショー2011」!
わかりやすいところでは、入場者数だ。一般公開がスタートした12月3日から数えて、週末はほぼ10万人/日ペース。特に4日の日曜日は11万2500人とピークを記録した。
その後の平日は6万人を超えるペースで、なか日の水曜日は7万人を突破、木曜までの時点で計51万3200人! このまま土日の両日で10万人オーバーとなると、プレスデイも含めた10日間での大台100万人突破も見えてくる。全盛期の“1日平均10万人”に並ぶわけで、まあ成功。いや、クルマ離れと不況を考えると、これは“大成功”でしょう!
だが、俺が驚いたのは数字よりもその中身だ。プレスデイの2日間と週末の土曜日、さらに平日の火水に行った感じからすると、“幕張時代”とは客層がガラリと変わっていることに気付く。
まず、「カメラ小僧」が圧倒的に少ない。これは、昔のように美貌と露出だけを押し出すようなコンパニオンが減っているのと同時に、一部メーカーが女性だけの撮影を断っているからのよう。一方で、普通のカップルやファミリー、年配のお客さんが確実に多いのだ。
いくつかゲリラ的にコメントを取ったところ「むかし、晴海時代はよく行ってたんだけどね」という、年配に多い“リターン派”と、「え? 何でって……まぁ、取りあえず行ってみようかなと思って」という“なんとなく派”が多い。なかには、「モーターショーは初めて」という人もいたけれど。
つまり、フツーにフツーの人が来ているのだ。特別マニアックなクルマ好きでもなんでもない、フツーにクルマに乗る人だ。
展示内容もレベルアップ
今回の目玉のひとつ、新型ハイブリッド車「トヨタ・アクア」の周りには、「実は注文したんです。170万円でリッター40kmだったらお買い得かな。実車が見たくて来たんですが、リアシートはやっぱり狭いですね。でも悪くないですよ」という30代子持ちの「ヴィッツ」オーナーや、「170万円だったら『ホンダ・フィットハイブリッド』とあまり変わらないなぁ」という“比較検討派”もいた。
そのほか「今のエコカーをまとめて見たかった」とか「BMWとかメルセデスの輸入車が見たくて」という人も。それと、会社が自動車関係だったり。四国の自動車修理屋さんなど町のクルマ屋さんにも数多く出会った。
ブースの配置など、見易さも確実にアップしたと思う。自動車メーカーと部品メーカーがゾーンで完全に分かれておらず、適度にバラけていて、完成車の次にパーツ、その次は再び完成車という具合に観られるのはよかったし、全体に適度な凝縮感があった。会場全体は西館と東館に分かれていて、その“つなぎ”の距離が妙に長かったが、そこまで完璧を求めなくてもいいでしょう。
「夕方6時から閉館までなら500円」というナイター券もよかったし、説明員が意欲的なのもよかった。俺の場合、一般公開日にもちらちら行って各メーカーさんに話を聞いちゃったのだが、そこにはかなりの割合で、展示品の開発に直接かかわった人たちがいた。しかも、すごく真剣に解説してくれるのだ。これまでも居なかったわけじゃないだろうけど、この自動車クライシスの時代、より力が入っているように感じたのだ。早い話、しゃべりが“熱い”!
それと根本的な話、自動車そのものが持つ「コンテンツ力」は、一般に言われている以上に大きいのかもしれないとあらためて感じたのだ。
最近、クルマは“オタクアイテム”扱いされることすらあるが、やはりグルメ、ファッション……要するに、人の「衣・食・住」レベルに匹敵するほど大きい。それは、単に生活必需品ということにとどまらない。価格はもちろん、デザインやブランドに興味が湧いてくるし、クルマを作る側という人だって、世の中には多いのだ。
やっぱ“東京の”モーターショーでないと!
さらに思ったのは、モーターショーというのは世界の“都市力”の表れにほかならないということだ。考えてみればパリのオートサロンの会場は、花の都パリの中心部、15区にドカンとあるし、フランクフルトモーターショーも、フランクフルト中央駅から1駅くらいのところにあり、ジュネーブショーだって市街地の中心部からは少し離れるが、空港と隣接したところにある。
本来、モーターショーは大都市の中心、少なくとも最寄りでやるべきなのだ。千葉県の人には申し訳ないが、その点幕張は遠かった。それは羽田空港と成田空港の違いみたいなもので、事実、あるドイツメーカーの外国人スタッフの中には、「これから銀座のすし屋に行くんだ」とか「どこかいいレストランない?」と喜々として言ってくる人が少なくなかった。要するに、東京という都市は、なかなか魅力的ということだ。
そりゃそうだ。人口1000万人オーバーのメガロポリス東京はニューヨーク、パリ、ロンドンに匹敵する。文化の蓄積も膨大なら、具体的な施設だって、レストランに美術館、劇場や映画館、デパート、ブティック……ワンサカある。
で、自動車カルチャーの先駆者である欧米から来るとなると、東京はものすごく遠い。飛行機で10時間以上かかるわけで、ドイツからフランスに行く距離とはワケが違う。「たまにくる東京、せっかくだからいろんな体験したいじゃない?」「本場のすしでも食いたいじゃない?」は人情というものなのだ。
この不況、特にリーマンショックで参加企業が減ったこともあって、幕張からお台場に移った東京モーターショーだけど、こと場所に関しては確実にプラス要素だったと思う。高知県から来場したという年配の方の「近くに来たから、また寄ってみようと思ってね」というセリフは、非常に重い言葉だ。モーターショーとは、そういうものなのだ。
「クルマを見よう!」と構えるものではなく、「見てみっか?」ぐらいの感覚。となるといくら広くて工夫があっても、近くでやるショーにはかなわない。それは、マスコミやショーの関係者だってみんなが実感しているはずだ。
個人的には、事務所がある大田区からは、りんかい線を使うとわずか5駅(!)。そこから歩いて5分程度で、会場に到達できた。これだったら、「仕事帰りにちょいとモーターショー……」というのも大アリだ。
これはデカい。ホントにデカい。しかも帰りに新橋で飲むこともできる(!!)。やはり自動車ショーはいろんな意味でカルチャーそのもの。日本を代表する大都市、TOKYOを丸かじりしつつ、全身で味わうものなのだ。
という大原則を、あらためてかみしめた今回の小沢コージなのでありましたっ!!
(文と写真=小沢コージ)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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