ダイハツ・コペン ローブ(FF/5MT)
「黄色ナンバー」と侮るなかれ 2014.08.21 試乗記 走りも意外や本格派? 初代から受け継がれたリトラクタブルハードトップや、話題を集める「着せ替えボディー」だけにとどまらない、新型「コペン」の魅力に触れた。買って、乗って、着せ替えて
新型コペンの車種構成は単純明快だ。迷うとしたら、CVTか5段MTか、だけである。
12年前に出た初代モデルは、取り外し可能なハードトップも選べたが、2代目は“伝統”のアクティブトップのみ。トランクリッドには“Robe(ローブ)”という名が記してあるが、それはこのカタチのコペンの総称である。ローブじゃないコペンは今年秋に「X(クロス)モデル」(仮称)という、やたらオーバーフェンダーを強調したモデルが出るらしい。さらに2015年には、初代に似た丸目ノーズも加わるとか。
しかし、なぜそんな買い手を躊躇(ちゅうちょ)させるような“あと出し”戦略をあえてとるのかといえば、新型コペンの大きな売りがボディー外板の着せ替えだからである。
ローブを買って、とてもコペンの芸風とは思えないアストンマセラティみたいな顔にやっぱりなじめなかった場合、1年くらい待てば、丸目顔に換えることができる、かどうか、まだ出ていないのでここで確約はできないが、そういうふうに、買ったあとも楽しんでくださいというのが新型コペンのメッセージである。それなら、無料着せ替え券みたいなものを付けて売ったらどうかなと思う。
今回、約570km試してみたのは、5段MTモデル。数が出ないので、182万円の価格はCVTより約2万円高い。MTモデルにはアイドリングストップ機構はなく、カタログ燃費(JC08モード値22.2km/リッター)はCVTより1割ほどドロップし、エコカー減税のランクも下がる。それでも、発表以来、受注の2割はMTが頑張っているそうだ。
シフトフィールは特筆もの
軽のマニュアルのスポーツカーといえば、直近で一番楽しませてくれたのがケータハムの「セブン160」である。コペンはあのネイキッドスポーツカーとはもちろんキャラクターの異なるクルマだが、結論を言うと、ファン・トゥ・ドライブの点ではそう見劣りしない。
まず手近なところでは、改良された5段MTのシフトタッチがイイ。節度があって、剛性も高いが、ハガネチックな渋さはない。信号待ちのとき、意味もなくカシカシ動かしたくなる。このシフトフィールは、積極的にMTを選ぶ理由になる。
その一方、クラッチを踏む左足はちょっと残念だった。踏力(とうりょく)はとても軽いのだが、踏み込んでいる最中に、エンジンの微振動が足裏に伝わり、それが品質感を落としている。ただ、のちに乗った別の個体は、このクルマほど気にならなかった。買う場合、もしディーラーにMTの試乗車があったら、チェックしてみてください。
旧型から大きく進歩したのは、シャシーである。新型の開発には片山右京がアドバイザーとして参加している。白いナンバーにあって黄色いナンバーにないものはない、というくらい、軽には上級車の技術がすぐに降りてくるが、F1ドライバーを開発アドバイザーに起用した日本車というのは、白いナンバーのクルマでもそう多くはない。実際、この新型軽スポーツカーの“走り”は本格派である。
どこでも走りを楽しめる
新型コペンの乗り心地は堅い。座り心地のよいファブリックシートに救われているとはいえ、低速でも高速でもけっこう上下に細かくズンズンくる。ひと昔前まで、「BMW 3シリーズ」にMスポーツのサスペンションをチョイスすると、こんな感じに堅かった。
だが、コペンの足まわりのそんなハードさは、スポーティーな操縦性とのトレードオフである。ワインディングロードで前のめりに走ると、軽であることを忘れさせるほど限界が高い。大入力を与えても、軽のイッパイイッパイなところがないのだ。剛性感の高いステアリングは、カシカシきまるマニュアルシフトとバランスして、コペンドライブのお楽しみセットという感じだ。行きは高速道路で遠出しても、ずっと下道(したみち)で帰ってきたくなるクルマである。
3気筒ターボに替わったエンジンは、不満なしだ。ひとことで言えば、新しいコペンによく合っている。
7200rpmあたりまでしか上がらないCVTに対して、MTは自分で8000rpm近くまで引っ張れる。7000rpmを超すとトルクがしぼんでゆくエンジンだから、CVTのほうが賢いには違いないのだが、今どきクラッチペダルを踏もうなんていう人は“MTバカ一代”なのだから、ほっといてもらいたい。
インテリアは良いのだけれど
この小さいクルマが20秒でハードトップクーペからフルオープンに変身する。アクティブトップは相変わらず見事である。
ソフトトップで我慢すればトランクももっと広く使えるだろうし、価格も安くできただろうが、そうしなかったところがコペンの矜持(きょうじ)である。ヒョウは降るわ、竜巻は起こるわ、雷は落ちるわ、そしてもうあたりまえになった夏の熱射。といった厳しい自然を考えると、堅い屋根はなによりという気もする。
冬のオープン走行時にはありがたいシートヒーターは標準装備。一方、ラジオはオプションである。ちょっとやりすぎの感じもするが、しかしそのおかげで、ダッシュボードがすっきりしている。
内装の質感も、先代モデルよりだいぶ向上した。標準の内装色はシート表皮も含めてブラウン。黒はオプションというのも日本車の、ましてや軽にはなかった思い切りだ。
週末にレザーキャップをかぶったオジサンがニコニコしながら運転しているのがコペンのイメージだが、新しいコックピットの雰囲気はますます大人好みに落ち着いている。
ならば、コテコテ輸入車テイストの外観はもう少しなんとかならなかったかな、なんていうのはまたしても個人の感想です。
(文=下野康史<かばたやすし>/写真=郡大二郎)
テスト車のデータ
ダイハツ・コペン ローブ(5MT仕様)
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3395×1475×1280mm
ホイールベース:2230mm
車重:850kg
駆動方式:FF
エンジン:0.66リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:5段MT
最高出力:64ps(47kW)/6400rpm
最大トルク:9.4kgm(92Nm)/3200rpm
タイヤ:(前)165/50R16 75V/(後)165/50R16 75V(ブリヂストン・ポテンザRE050A)
燃費:22.2km/リッター(JC08モード)
価格:181万9800円/テスト車=191万9873円
オプション装備:フロントスーパーLSD(3万2400円)/ブラックインテリアパック(3万2400円)/※以下、販売店装着オプション ETCユニット(1万7280円)/カーペットマット(高機能タイプ)(1万7993円)
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:2316km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(5)/山岳路(2)
テスト距離:570.2km
使用燃料:41.0リッター
参考燃費:13.9km/リッター(満タン法)/14.6km/リッター(車載燃費計計測値)
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下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
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