第17回:こんなんじゃ全然納得できない!!
「BMW 2シリーズ アクティブツアラー」FF化のナゾを直撃!
2014.08.19
小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ
もうFRにはこだわらないの?
“過ぎたことは忘れる”美意識というか、“いい人”主義がまん延する現代日本では、意外にサラっと見過ごされつつありますが、不肖小沢的にはな~んか納得できないっす! もうちょい答えが欲しいっちゅうか、ふに落としてほしいというか。いまだ「ブラジルW杯でザックジャパンがなぜにアッサリ負けたのか?」に納得のいく説明が欲しいようにね。
何の話って、それはBMWのFF化についてですよFF化! BMWといえば『webCG』でも1位2位を争う(?)人気ブランドで、まさにプレミアムスポーツのド定番。そして、BMWといえばなんといってもFR、つまりフロントエンジン・リアドライブの駆動レイアウトが自慢。前後重量配分50対50の不文律もそうだし、極端に言うと1917年の創業以来「FRじゃなきゃクルマじゃない!」みたいな勢いでやってきていたはず。一部リアエンジン車やミドシップもあったけどね。
それがこのたび「2シリーズ アクティブツアラー」であっさりFFを採用。今後どんどんこのシリーズは増やしていく予定で、中には3列シートミニバン(!?)の計画まであるらしく、本当にそれでいいのかと。
細かいインプレは他のジャーナリストに任せるとして、不肖小沢は、ラッキーにも行けたアクティブツアラー海外試乗会で、開発陣に面倒くさがられる直前までしつこく直撃してみました(笑)。
テーマは「BMWはなぜ今FFを選んだのか?」
小沢的には、ある仮説があったんですが……。
「飛び道具」はありません
まずお話を伺ったのは、ドライビングダイナミクス担当のクリスチャン・シャイノスト氏。この方、話し方がなかなかノラリクラリとしていて、ハッキリとモノを言わないタイプだった(笑)。
小沢:2シリーズ アクティブツアラー、乗ってみましたけど実によくできています。特にステアリングフィールがいい。一体、どうやってFF、FRの壁を打ち破ったんですか?
シャイノスト:ポイントはエンジンとステアリングギアボックスとタイヤの3つの関係で、特にフィードバックに関するシステムにあります。電動パワーステアリングのソフトウエアには基本的に「MINI」と同じモノを使っています。厳密に言えば違いはありますが、サプライヤーは同じです。
小沢:やはりMINIの影響は大きいですか?
シャイノスト:ノウハウは役にたっています。
小沢:今回、実はBMWはMINIの経験もあり、楽しいFFの極意というか、キモみたいのに気づいたんじゃないかと思うんですが。そのディテールを教えてください。
シャイノスト:グレードにもよりますが、前後重量配分は58:42から61:39の間。一般的な前輪駆動の作りで、それに合うソフトウエアにしています。それからステアリングギアレシオは15.7とクイックで、ピニオンギアは一般的なFFはデュアルですが、アクティブツアラーはシングルピニオンです。これにより、よりダイレクトな手応えが得られます。
小沢:なるほど。そのほかには。
シャイノスト:後はサスペンションに専用チューニングを施したのと、サスペンションまわりのフリクションを徹底的に取り去りました。本当にそれだけです。
小沢:ウーム……ありがとうございました。
一応、特別なチューニングというより、FFとしての基本性能を磨き、加えてパワステのフィードバックプログラム……つまり電子制御でフィーリングは相当良くなるということのよう。しかし、まだどこか納得いかない。そこで今度は、ヴィークル・インテグレーションのアグスティン・ゴンザレス氏に率直な言葉をぶつけてみた。
大事なのはBMWクオリティー
小沢:つまり、今やFFでも技術的にいいクルマ、走りが楽しいクルマを作るのは可能になったということなんでしょうけど、これまで「BMW=FR」でやってきて、ユーザーとしては多少裏切られたというか、ブランドイメージが壊れるような気もするんですけど、そこはいかがですか?
ゴンザレス:われわれは常にそう言われ続けてきました(笑)。SUVの「X5」に取り組んだ時にも、MINIを出した時にも「BMWらしくない」と言われましたが、実際はどうでしょう? BMWのイメージは薄くなってますか? なってないですよね。どんなクルマを作るにしてもBMWは走りの楽しさを追求してますし、それはお客さまがなによりご存じです。
小沢:今までMINIを10年以上やってきて、そのノウハウが蓄積されたからアクティブツアラーも出てきたと考えていいんでしょうか?
ゴンザレス:その質問には答えられません。ただ、どんなクルマを作るにしても、BMWのイメージを出すのが常に大切です。フィーリングはダイナミクスで決まるんです。
小沢:では強いてあげるとすると、BMWの開発現場はやはりテストドライバーの権限が強い。技術うんぬんよりテストドライバーが楽しいと思わない限りそのクルマを出さない。あくまでも最後は人間のフィーリングで判断するからBMWの楽しさは保証されていると。そう考えればいいんでしょうか。
ゴンザレス:その通りです。BMWはテストドライバーの意見を重要視していますし、なにより楽しさは理屈じゃなくて、感じるものですから。
……ってな具合に、最後は答えをゴーインに言わせちゃった感もあるが、要するに2シリーズ アクティブツアラーのFFっぽくない楽しさは、電制パワステのフィードバック技術などもあるようだが、それ以上にマジメな作り込みとBMWのセンスのたまものということのよう。いまだ不肖小沢としては、BMWがMINIで何がしかの黄金律というか、今までのFF車にはないキモを見つけたような気がしているが、それが本当にあったにせよ簡単には教えてくれないんでしょう。
BMWがFF化に踏み切ったのは、おそらくFFでも「BMWクオリティー」が実現できると踏んだからで、そこにはMINIの経験があったはず。実際、パーツの数多くはMINIとコンセプトを共有する。そこの関係は否定してもし切れない。
とにかくFRを超えた!? とまでは言わないが、FFとは思えないハンドリングの楽しさ、フィールの豊かさを味わわせてくれたアクティブツアラー。気になる方は、年内には入ってくるらしいので実際確かめてもらうほかはないですな!
(文=小沢コージ/写真=小沢コージ、webCG、BMWジャパン)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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