第254回:1週間限定のクルマ好きの桃源郷
カリフォルニアで催されたクラシックカーの祭典をリポート
2014.09.08
エディターから一言
年に一度の「イノチの洗濯」
今ではすっかり、モントレーの週末、ならぬ“モントレーのクルマ週間”になったようだ。8月の半ば、サンフランシスコから南に170kmの位置にあるモントレー半島の街では、ほぼ1週間にわたって、さまざまな自動車趣味イベントが開催されている。
1996年に初めて“モントレー”を体験して以来、お盆の時期は毎年、モントレーで過ごすようになった。自動車ライターである前に、いちクルマ好き(クルマバカ?)を自負する筆者にとって、それは年に一度の“イノチの洗濯”。古今東西の名車たちを“いやっ”というほど見て、音を聞いて、匂いをかいで、英気を養う(?)というわけだ。
今年も友人たち数人と連れ立って、いそいそと出掛けた。本当は週のアタマから繰り出して、クルマ趣味週間をフルに楽しんでみたいところだけれど、あいにく、お盆進行の締め切り週とぴったり重なる。今年も金土日のメインイベントを中心に、「モントレー・オートモービル・ウイークエンド」を楽しむことに。
スケジュールは、こんな具合だ。
木曜日にサンフランシスコ、またはサンノゼまで飛び、そこからレンタカーでモントレーへ。間に合えば、カーメル市内で行われているペブルビーチコンクール参加車両によるラリーランを見物。金曜日はクエイルロッジで「モータースポーツ・ギャザリング」、土曜日はラグナセカの「モータースポーツ・リユニオン」(時間があれば「コンコルソ・イタリアーノ」)、日曜日はペブルビーチのメインイベント「コンクール・デレガンス」、そして毎夜開催されるオークションも随時見物……。悠長にメシなど食ってるヒマもないほど、クルマ漬けの週末になるというわけ。
順を追って、イベント概要をリポートしてみよう。
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450ドルの入場料に見合う価値がある
金曜日に開催されるモータースポーツ・ギャザリングは近年、非常に人気の高まったイベントで、前売りチケットはほぼ瞬殺で売り切れる(購入希望者による抽選で、例年1月に決定)。ひとり当たり450ドルという高額にも関わらず、だ(去年より50ドルも値上がりした!)。イベントの“濃い”ナカミもさることながら、入場者数を3000人に制限しているためである。また、450ドルには場内全てのレストランにおける飲食費も含まれている。つまり、食べ放題飲み放題。そこまで考えると、確かに不当に高いとはいえないのだけれど。
イベント内容をひとことで言うと、「歴史的レーシングカーおよびスポーツカーの集まり」だ。例年、テーマを設けているのは他のイベントと同じで、今年はマセラティの100周年やマスタングのレースカーなどが主題となっていた。もちろんそのほかにも、毎年、最新スーパーカー特集やレアなフェラーリ特集、戦前~戦後のレーシングカー特集など、さまざまな企画が組み込まれている。
クエイルロッジ・ゴルフコースのフェアウェイを使った美しい芝生の会場で、歴史的な名車を見物しながら、飲んで食ってゆったりとした一日を過ごす。モントレーの週末を始めるにぴったりのイベントである。
近くで開催されるボナムスのオークションも必見。今年は有名なサンマリノの“マラネロロッソ・コレクション”から「250GTO」を含む10台の歴史的フェラーリがオークションにかかったため、いつになく盛り上がった。
翌土曜日には、コンコルソ・イタリアーノが開催される。その名のとおり、イタリア車だけの祭典(ちなみに、ドイツ車だけの祭典も金曜日にクエイルロッジ近くで開催されている)。年によってはフェラーリだけで300台以上集まる。毎年欠かさず見ていたのだが、今年から開催日が土曜に変更となったため、やむなく欠席。モータースポーツ・リユニオンの見物にラグナセカへ向かった。
往年の名車がコークスクリューを駆ける
コークスクリューが名物のサーキット、といえば分かるだろうか。世界でも屈指のチャレンジングなレーシングコースで開催されるモータースポーツ・リユニオン。年代や種別によってカテゴライズされた歴史的なレーシングカーが、本気モードでレースする。土曜日と日曜日でレース内容が異なるが、それぞれ7、8レースは開催されるから、お楽しみとしては十分。パドックをぶらつけば、全ての参加車両を見ることができるし、何より、セッティング中のマシンに近寄って、メカニズムを子細にのぞきこんでみたり、エンジンサウンドを生で聞けたりする体験が貴重である。オーナーに話しかけでもしようものなら、わが子を語るがごとく、熱く説明してくれることウケアイ。
今年は、例年おなじみの「日産フェアレディZ」に加えて、「ハコスカ」世代の「日産スカイライン」や「トヨタS800」も走った。日本人として、とても誇らしい気分に。
戦前戦後のレースカーも興味深い(特にブガッティのGPカーが大挙して走る様は壮観だ)が、見ていてレースとして面白いのは、トランザムレースやカンナムレース、グループCカーレース、グループ5レース、そして今年は開催されなかったけれどもオールドF1レースあたり。3リッター以上のスポーツカーレースも注目で、毎年「フェラーリ250GTO」をはじめとするマニア垂涎(すいぜん)のスポーツカーが大挙して出場する。
ジェントルマンレースとはいえ、レースはレース。時にはエキサイティングなバトルが繰り広げられて、しまいにクラッシュということも……。真剣勝負を見るのは、いつだって楽しいものだ。
また来年も来たくなる
そして、日曜日。早起きしてペブルビーチである。霧が立ちこめ、朝露が芝生をぬらしているような時刻(だいたい7時ごろまで)に、コンクール・デレガンスの会場に入れば、続々入場する参加車両たちの走る姿を間近で見て、音を聞き、排ガスの匂いをかぐことができる。
朝早く行くことには、もうひとついいことがあって、入場料280ドルのハイクラスイベントながら9時過ぎにはもうかなりの人出となり、クルマの撮影はおろか人気モデルには近づくことも難しくなる。その点、正式なオープン前(でも入場できる)ならば、走る姿を見ることができるうえに、霧が太陽を隠してくれるから車両撮影もばっちり、しかも展示車両をゆったり見物できるというわけで、まさに“早起きは三文の得”、なのであった。
コンクールのテーマは、ここでもマセラティの100年と、ラクストン、ロールス・ロイス、デューセンバーグ、「フェラーリ・テスタロッサ」などなど。そのほか、戦前戦後のスポーツカーやレーシングカーが、かの有名なペブルビーチ18番ホールのフェアウェイにずらっと並ぶ。壮観である。
以前は午前中だけペブルビーチで過ごし、午後は再びラグナセカに戻って日曜のレースをどん欲に見物したものだが、最近はペブルビーチで一日をゆっくり過ごすことにしている。一台一台をじっくりと観察したいということもさることながら、午後から繰り広げられる表彰セレモニーが楽しいからだ。
今年も審査員を務めた日産自動車の中村史郎さん、そしてグランツーリズモの山内一典さんと一緒に、審査の裏話を聞きながらセレモニーを最後まで見学。セレモニーは午後2時頃に始まって、5時前に今年の“ベスト・オブ・ショー”が発表された。集まったみんなでショーの行方を予想しあいながら、シャンパン片手にセレモニーを見守っていれば、「今年もここに来られてよかった、来年もまた来られるように頑張ろう」という気持ちになってくる。それが、いい。
クルマ好きなのだ。クルマをモチベーションにするのがスジというものだ。
最後は、会場の裏道に繰り出して、全車が退場するシーンを見物。これが実は、一番面白かったりする。今年などは「フェラーリ250テスタロッサ」の大渋滞が起こってしまい、坂道発進で爆音をとどろかせていた。コンクールを終えて、緊張の解けたエントラントたちが、笑顔で愛車をドライブしながら、帰っていく。手を振って、手を振りかえす。同じクルマ好き同士、心地よい連帯感を味わいつつ、“また来年!”を誓う、のだった。
来年のメインテーマは、おそらく……。10年ぶりの、跳ね馬だというウワサ。ホテルと飛行機の予約を、お早めに。
(文=西川 淳/写真=林 剛直)
→「モントレー・オートモービル・ウイークエンド」の写真はこちら
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西川 淳
永遠のスーパーカー少年を自負する、京都在住の自動車ライター。精密機械工学部出身で、産業から経済、歴史、文化、工学まで俯瞰(ふかん)して自動車を眺めることを理想とする。得意なジャンルは、高額車やスポーツカー、輸入車、クラシックカーといった趣味の領域。
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