ロータス・エキシージSロードスター(MR/6MT)
これぞロータスの本領 2014.10.06 試乗記 単にルーフを切っただけにあらず。「ロータス・エキシージS」のオープンバージョンは、走りに関してもクーペとは一線を画すものだった。「エキシージのオープン版」という矛盾
悦に入る、とはこういうことを言うのだと思う。
ロータス・エキシージSロードスター。その乗り味は、すでに登場していたクーペモデルとはまた違う、独特な“軽み”を持っていた。
正直このロードスターが登場すると聞いたときは、大きな違和感を持った。もともと、エキシージはいわば“クーペ版「エリーゼ」”であり、シャシーも同じ、ルーフのないアルミ製の「スモールプラットフォーム」を使用している。よってその屋根を取り去ることは容易ではあるのだが、「それで筋が通るの?」と疑ったからである。
とはいえエリーゼを大幅にワイドボディー化し、サブフレームまで新設して直列4気筒エンジンからV6スーパーチャージャーへと積み替えた現在のエキシージSは、もはやエリーゼとは別のクルマともいえる。一回り大きなスポーツカーをオープンモデル化することは、直接のライバルである「ポルシェ・ボクスター」への挑戦状にもなりうる。ラグジュアリー路線を拡大するなら、「エヴォーラ」をロードスター化する方法もあったわけで、とにかく安易に作ったのでなければよいのだが……と心配していたわけである。
先にも述べた通り、ロードスターはその基本構造をクーペモデルと共用している。というよりもそのルーフと、前後のスポイラーを取り去っただけで、あとは全く同じだ。しかしその印象は、良い具合にコンサバなエキシージSといった佇(たたず)まいで、もともと美しいプロポーションを持つ同車が、よりハッキリとそのセクシーな姿態を強調することに成功していた。
内装も素晴らしい。アルミ製のセンタートンネルや、インパネに貼り込まれたレザー(プレミアムパックに含まれる)は、薄皮一枚で一気にムードを盛り上げる。戦闘的なコックピットをさらりと装飾するだけで、そこには70年代のスポーツカーにも通じる、貴族的なストイシズムが少し漂っていた。
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ハンドリングがより軽やかに
しかし何より、エキシージSロードスターの素晴らしさはそのハンドリングにある。
ゼロ発進からのステアリングの重さはクーペと同じ印象。パワーステアリングを持たないロードスターのハンドルは、女性にとってはやや厳しく、男性にとっては“やりがいのある重さ”だ。そして走らせると、これがスウッと軽くなる。接地感が薄くなるのではない。いや、クーペに対してはかなり薄くなるのだが、ロードスポーツとして見ると、依然として高いレベルを保っている。
つまりクーペの接地感が、既存のスポーツカーと比べて高すぎたのだ。あの“ベッタリと路面をなぞる”ようなフロントのグリップ感が“重めの赤ワイン”だとしたら、ロードスターのそれは“フルーティーな白”のように、スッキリとした喉ごしならぬ“腕ごし”なのである。
リアセクションにも同様の感想を抱いた。3.5リッターのV6エンジン+トランスミッションを横置き搭載する関係からだろう、クーペは執拗(しつよう)にリアタイヤを路面に貼り付けていた。そしてこの前後バランスを総合すると、それは空恐ろしいほどのグリップ感となり、どんなにやっきになって飛ばしても、アマチュアドライバーにはまったく底が見えないスポーツカー、いやハンドリングマシンになっていたと筆者は思う。
それがロードスターになった途端、極上のスポーツカーとなってスイスイとコーナーを踊りだしたわけである。
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クーペからの変更は最小限だが
運転感覚は、エキシージSとエヴォーラの中間。まさにどっしりとしたエリーゼという印象だ。フロントスポイラーとルーフ、そしてリアのでかいウイングがなくなったことで、実際にはダウンフォースも減っているはず。しかし前後のロールバランスが整っており、ロールしていく様子がとにかくわかりやすい。グリップの推移が手のひらや腰からリニアに伝わってくるから、クーペよりも安心して350psを路面にたたきつけることができ、基本トラクション性能はすこぶる高いのだが、多少リアがスキッドしたとしても、それすらコントロールできてしまう。もしかしたらクーペに対して10kg軽い車重も、その操縦性に効いているのかもしれない。
ロータスからは「サスペンションのジオメトリーを見直し、低下したエアロダイナミクスを補うためにリアスタビライザー径を太くした」とだけしかアナウンスされていない。実際にそうなのだろう。こうした小変更を加えるだけで、エキシージSはスポーツカーにもレーシングカーにもなり得る。やはりここが、エンジニア集団であるロータスの本領なのだ。
ちなみに試乗車には、エンジンおよびスタビリティー制御を4段階に調整できる「レースパック」が装着される関係で、ビルシュタイン製の強化サスペンションが組み込まれていた。これは専用タイヤである「Pゼロ トロフェオ」に合わせて作られた足まわりだから、標準の全天候型タイヤである「Pゼロ コルサ」とのマッチングが気になったが、公道を走る状況ではサスペンションが突っ張ることもなく、不満は感じられなかった。
フルオープンとは言いがたいルーフレスなオープントップはしかし、窓を少し開けることで気持ち良い風が入り込んでくる。怒涛(どとう)のトルク&快音を背にして夢中で汗をかいたあと、ゆったり走ってクールダウン。思わず幸せをかみしめてしまうスポーツカーが現れたことを、筆者は素直に歓迎したい。
これは“ルーフを取っちゃっただけのエキシージS”なんかではない。
(文=山田弘樹/写真=荒川正幸)
テスト車のデータ
ロータス・エキシージSロードスター
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4070×1800×1130mm
ホイールベース:2370mm
車重:1170kg
駆動方式:MR
エンジン:3.5リッターV6 DOHC 24バルブ スーパーチャージャー付き
トランスミッション:6段MT
最高出力:350ps(257kW)/7000rpm
最大トルク:40.8kgm(400Nm)/4500rpm
タイヤ:(前)205/45ZR17 88Y/(後)265/35ZR18 93Y(ピレリPゼロ コルサ)
価格:972万円/テスト車=1079万4600円
オプション装備:メタリックペイント<アークティックシルバー>(16万7400円)/プレミアムパック(33万4800円)/レースパック(41万5800円)/ダイヤモンドカット軽量鋳造ホイール Yタイプ5本スポーク(8万1000円)/シートヒーター(7万5600円)
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:905km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
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山田 弘樹
ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦経験をもつ、実践派のモータージャーナリスト。動力性能や運動性能、およびそれに関連するメカニズムの批評を得意とする。愛車は1995年式「ポルシェ911カレラ」と1986年式の「トヨタ・スプリンター トレノ」(AE86)。
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