ポルシェ911タルガ4(4WD/7AT)
最新は最楽 2014.10.14 試乗記 1960年代の初代をほうふつとさせる、どこか懐かしいBピラーを備えた新型「911タルガ」。伝統あるタルガの名は、最新のメカニズムによってどのように受け継がれたのだろうか。3.4リッターのフラット6を搭載する「911タルガ4」に試乗した。原点回帰
「ポルシェ911」が誕生して50年が過ぎ、今までに生産された911は85万3000台に達する。「タルガ」仕様は1965年の登場以来、シリーズ全体の約13%を占めてきた。タルガとはイタリアのシチリア島で開催される「タルガフローリオ」というスポーツカーレースの名に由来するが、ポルシェはこのロードレースでは伝統的に強く、したがってタルガを名乗る正当な背景がある。
固定されたロールバー(Bピラー)で安全性を確保した上でオープンモデルの爽快さを得られるという、独特のスタイリングを持つタルガはポルシェ専用の固有名詞ともいえ、タルガルーフといえば車体形式のひとつとしてイメージが定着している。その最新のポルシェ・タルガは「911カブリオレ」をベースにして造られる。
911タルガのもともとの発想は、固定された幅広のBピラーが視覚的にもキャビンを強固に守り、ルーフのみ取り外し可能というものだった。またクーペモデルにはあるCピラーが取り去られ、リアウィンドウをボディーの側面まで回りこませたうえで固定するという成り立ちだった(ただし1967年にデビューした直後の最初期モデルだけは別で、リアウィンドウが開閉可能なアクリル製とされていた)。
19秒間の頭上のセレモニー
だから頭上のルーフパネルだけを取り去ればタルガとしての目的は達成される。しかし今回試乗した新型はカブリオレがベースとなっており、電動油圧機構が利用できることから、リアウィンドウごと持ち上げてルーフ(ソフトトップ)を折りたたんでしまい込むまで、スイッチ一つで簡単開閉する方法が採用された。ちなみにこの作業は19秒で完結する。
トップを外すだけならば手動で済ませる方法もあるが、あえて大仕掛けで見せるセレモニーもまた現代人にはウケる要素なのかもしれない。911は今では単なるスポーツカーではなく高価格な高級車でもある。2人乗りの豪華で快適なツーリングカー的要素も要求されるし、量産型スーパーカーでもあるのだ。
また当然、高性能車でもあり、「タルガ4」と「タルガ4S」の2仕様が用意され、「4」の文字からもお分かりのように4WD仕様のみの設定となる。タルガ4は排気量3.4リッターで350psと39.8kgm(390Nm)のパワー/トルクを発生、タルガ4Sは3.8リッターの400ps仕様となる。
フォルクスワーゲンのような小排気量化政策は採らないが、ポルシェは燃費向上には熱心であり、PDK(ツインクラッチ式の7段自動変速機)には負荷に応じてN(ニュートラル)を選択、アイドリングで惰性走行させるコースティングモードが備わっている。ポルシェをもってしてギアを抜いて転がすことには疑問の声もあろうが、それは無駄を省く時代の要請であり技術的成果といっていい。
誰にでも薦められる911
911はモデルチェンジのたびにサイズが拡大し、今やスリーサイズは全長×全幅×全高=4491×1852×1298mmに達する。車両重量は軽量化の結果、サイズや内容の割に軽く1580kgしかない。そこに350psであるから相変わらず走行感覚は活発で、フルスロットルを与えれば猛然とダッシュする。
7段PDKのギア比は伝統に従ってクロスレシオを採らないが、マニュアル仕様とは一部ギア比が異なり、3速を1.56から1.65に落として2速に近づけているし、7速は逆に0.71から0.62に早めて燃費対策している。ポルシェは初代「ターボ」の頃には4段のワイドレシオで済ませてきた歴史もあり、1~3速までの低いところをクロスさせることを嫌ってきたが、ここにきて少し流れに迎合する姿勢もみられる。いずれにせよ7段もあるし自動変速なので、一般的なドライバーにとってはあまり関心がないことかもしれない。
ともかく無頓着に運転でき、加速するにはただAペダルを踏み込みさえすればよい。少し強めに踏めば、PDKは一瞬の間をもってキックダウンが働き、自動的に車速に応じたエンジン回転数に合わされて、スムーズかつ強烈な加速を開始する。
この辺の動作は、自分のアシでクラッチを踏んでシフトも自分でやるマニュアル派にとってはやや緩慢な感覚もある。しかしティプトロニックATが登場して以降、ポルシェといえども一般化がすすんで誰にでも乗れるスポーツカーになっているから、安易で簡単な変速は歓迎すべきだ。
高性能エンジンを効率的に使うにあたり、隅から隅までキッチリ使い切らなくとも、ドライバーの意思に合わせて最適なところを機械が選んで、うまいところだけを使って走らせてくれるのだから、文句を言う筋合いではない。たとえギアを抜いて惰性で走っても、それは必ずしもドライバーの考えではないかもしれないが、ポルシェという車がドライバーの意思と判断した結果の選択なのだ。
ポルシェに4WDの歴史あり
4WDシステムについては、ポルシェという会社の四輪駆動に対する考え方の変遷が面白い。最初の四輪駆動車は1985年に発表された「ポルシェ959」で、前後軸へのトルク配分は電子制御とはいえ、基本はオン/オフのパートタイム方式だった。次の「964」(1989年発表)はプラネタリーギアによる固定配分のセンターデフを持つ初めてのフルタイム4WDとなった。筆者は当時の『Car Graphic』誌で、「カレラ4」の長期テストを担当していたこともあり、アレが一番四輪駆動らしかったと回想する。その後、「993」(1993年発表)でセンターデフにVCU(ビスカス・カップリング・ユニット)を使うことになり、よりスムーズな駆動が実現した。
現代の4WDはさらに駆動の簡素化が進んで、後輪駆動の余分だけを前輪に回すか、空転に対してはエンジン出力を絞ってしまう方式を採る。エンジン出力を自分のアシでコントロールする上では、勝手に燃料を絞られたりブレーキをつままれたりするのは余計なお世話であり、そうした意味でパワーを余すことなく伝えきることができたのはVCU式センターデフの時代だったと思う。
VCUはわずかな回転差であっても駆動力を反対側の軸に伝えてくれるから、捨てる部分はなかった。VCUをトルコンのように考えている人もいるが、オイルの粘性抵抗を利用してつながっているとはいえ、前輪後輪はほぼ同じ速度で走っているのだから、中間で空回りしてしまうわけではない。その微妙なトルクのやりとりがスムーズさにもつながり、頭の中で考えるにしても心理的にも一番自然で無理がない。数多いギアでキッチリ組まれた中にあって、バックラッシュだけでは吸収しきれないところもうまく逃がしてくれる。だから個人的にも好きな方式であった。
ファミリー随一の万能選手
翻って、現代の4WDを含む駆動系全体をみると、まず二駆か四駆かわからないほど駆動力はスムーズに伝えられ、無駄も感じられない。引き算理論の前後配分であるにせよ、絶対値がこれだけ大きければ不足もない。けれども、各種電子制御の介入は一瞬のタイムラグを伴い、しかも作動は大げさで繊細さに欠ける。直結されていた時代は操作するドライバーの技量によってはギクシャクしたりショックを伴ったりしたものの、ダイレクトにスッと反応するから待たされることはなかった。
この辺も、誰が乗ってもスムーズに操れる、一般性が求められる量販を考慮した結果である。最初は操作がぎこちなかったとしても、慣れてくればスムーズに運転できるようになり、そこに喜びを感じた時代を懐かしんでもしょうがない。たとえクルマに乗せられているという受動感覚があっても、それを甘んじて受け入れなければならない時代といえるだろう。
また、911の度重なるボディーの拡幅に戸惑う人もいるかもしれない。しかし操向(そうこう)関連の長年の課題であったバンプステア(タイヤが路面の状況により上下動すると、トーやキャンバーが変化する特性)は大きく改善されてきた。これもトレッドの拡幅やアーム長の延長による成果だ。腕力のあるドライバーならばバンプステアを抑えつけることなど容易かもしれないが、一般的な特性ではないから、歓迎すべき成果だろう。
タルガ4もまたAT免許で乗れるポルシェであり、初心者であっても容易に高性能を味わうことができる。素早く高速に達するだけでなく、ブレーキもよく利く。目線が低いことを承知で乗れば、前後左右の視界もいい。ルーフを格納すれば気持ちよいオープンカーの乗り味を存分に味わえる。代価として1500万円払える裕福なオーナーにとっては、納得できる買い物といえるだろう。
(文=笹目二朗/写真=小林俊樹)
テスト車のデータ
ポルシェ911タルガ4
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4491×1852×1298mm
ホイールベース:2450mm
車重:1580kg
駆動方式:4WD
エンジン:3.4リッター水平対向6 DOHC 24バルブ
トランスミッション:7段AT
最高出力:350ps(257kW)/7400rpm
最大トルク:39.8kgm(390Nm)/5600rpm
タイヤ:(前)245/35ZR20 91Y/(後)305/30ZR20 103Y(ピレリPゼロ)
燃費:8.7リッター/100km(約11.5km/リッター、NEDC複合サイクル)
価格:1500万円/テスト車=1845万3000円
オプション装備:ボディーカラー サファイヤブルーメタリック(21万4000円)/インテリアカラー エスプレッソ(ナチュラルレザーインテリア)(87万3000円)/LEDヘッドライト(ポルシェ・ダイナミック・ライトシステム・プラス<PDLS+>付き)(51万5000円)/電動可倒式ドアミラー(5万5000円)/ポルシェ・アクティブ・サスペンション・マネージメントシステム(PASM)(30万3000円)/スポーツクロノパッケージ(36万8000円)/パワー・ステアリングプラス(4万8000円)/20インチカレラクラシックホイール(45万4000円)/カラークレスト ホイールセンターキャップ(3万円)/シートヒーター(フロント左右)(8万6000円)/フロントベンチレーション(19万3000円)/フロアマット(3万3000円)/マルチファンクションステアリングホイール(9万6000円)/ブラッシュ・アルミニウム・インテリアパッケージ(14万1000円)/ブラッシュ・アルミニウム・センターコンソールトリム(4万4000円)
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:4912km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(5)/高速道路(4)/山岳路(1)
テスト距離:319.4km
使用燃料:47.3リッター
参考燃費:6.8km/リッター(満タン法)/7.0km/リッター(車載燃費計計測値)
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笹目 二朗
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