MINIクーパーSD クロスオーバー(FF/6AT)
愛着を寄せられるクルマ 2014.10.16 試乗記 「MINI」のSUVモデルである「クロスオーバー」に、クリーンディーゼルエンジン搭載車が登場。新しいパワーユニットによって付加された魅力と、いつの時代もMINIが持ち合わせている不変のキャラクターに触れた。お財布にも優しいのが今のMINI?
もう誰も知らないと思うけれど、その昔『MINI freak』というMINIの専門誌があって、僕はその創刊の1990年から丸9年間びっしり携わった。途中からは編集長も務めさせてもらった。そういう古い話を『webCG』の誰かが覚えていて、「じゃアイツに書かせれば」ということになったらしい。けれど言うまでもなく僕がよく知っているのは、旧とか先代とかオリジナルというような前置詞が付いていなかった頃の、つまりは1959年発売当時ほぼそのままのMINIだ。だからMINIについて何か語ろうとすれば情緒優先で独善的になっても仕方ない。とはいえ大人ですし、今のMINIについて思うところもあるのでこのお仕事、引き受けました。というのが前置きです。よろしくお願いします。
てなわけで、5ドアSUVモデルのMINIクロスオーバーがマイナーチェンジと同時にクリーンディーゼルエンジンを搭載。それに乗ってこいというのが今回のお題。MINIにディーゼルエンジンは国内初。プレミアムコンパクトクラスとしても初の出来事だそうだが、MINIに軽油を注ぐなんてかつては想像もできなかったなあ。っていちいち感傷的になるな!
先にラインナップを紹介します。新しいMINIクロスオーバーは全6モデル。その中で新規の直列4気筒2リッターターボディーゼルエンジンを採用したのは、価格バンドの中核をなす「クーパーD」「クーパーD ALL4」、上級グレードの「クーパーSD」の3種。前者2モデルは112ps版、後者1モデルは143ps版がそれぞれ搭載される。ちなみにクーパーSDは今回のディーゼル化で16.6km/リッター(JC08モード)の燃料消費率を達成し、従来の同型ガソリンモデルより約19%も燃費がよくなったという。
お財布に優しい話題をもうひとつ。このクリーンなディーゼル車は、いわゆるエコカー減税により取得税などの軽減措置が適用されるようで、ディーゼル最安価のクーパーD(341万円)と、1.6リッター直4ガソリンエンジン+6段ATの「クーパー」(321万円)との差額20万円は、なんと5万円まで縮まるそうな。さらにその5万円も1万5000kmの距離を走れば、燃費や油種の違いでチャラにできる計算が成り立つという。なんだか深夜のテレビショッピングみたいな説明だが、僕の知っているMINIでは聞くことのなかった情報だ。時代、なんだなあ……。
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このエンジンだけでも売ってほしい
試乗用に提供されたのは、「ジャングルグリーンメタリック」と呼ばれるボディーに、ブラックルーフのクーパーSD。「クーパーS」でディーゼルエンジンだからSD。ふむふむ。いちいち面倒くさいカラミ方をするのはやめて、いざ芦ノ湖スカイラインへ。
いやいや坂道グングン登りますよ。「さぁターボです」ってタイミングも絶妙で頼もしくて、このディーゼルエンジンだけでも売ってくれないかと思ったほどだ。
これも蛇足情報だけど、僕は「ランドローバー・ディフェンダー」という次の車検で20年の付き合いになるクルマに乗っている。これがまた前時代的なディーゼルターボで、それと比較したら失笑以前に退場を言い渡されそうだが、クーパーSDのモリモリトルク感は僕の中のディーゼルイメージを完全に一新させました。
そりゃそうですね。今回のクリーンディーゼルエンジンは、タテヨコ配列の違いはあれど「BMW 3シリーズ」で使われているものがベースなのでパフォーマンスも信頼性も折り紙つき。音も存外に静かだった。ちょっと前のエンジンってこれくらいの振動と音があったよなと、むしろよろこばしくなるような感覚で、少なくとも僕は一切の不快を感じなかった。ただ、料金所でサイドウィンドウを下ろしたとき、前方からガラガラというようなディーゼルらしいサウンドがかすかに響いたときは、ふふふっとほくそ笑んでしまった。屈折していてスミマセン。
記しておきたいのは乗り味だ。旧MINI支持派の残党みたいに思われている僕だが、実は「ニューMINI」が発売される際、縁あって国際試乗会に参加させてもらった。ミュンヘンで1泊し、翌日チャーター機でイタリアのペルージャへ。中田ヒデが現地のクラブに在籍していた頃だったが、サッカースタジアムなどに寄ってもらえるはずもなく一気に峠道へ連れて行かれた。そこで運転した新しいMINIは、キビキビ走るめちゃくちゃおもしろいクルマだった。
BMW初の前輪駆動車なのにとか、あるいはBMWだからこそこのハンドリングが実現したんだとか、同行したジャーナリストはあれこれ語っていたけれど、一台のクルマとしてこれほどステキに生まれ変わっていたことが切ないくらいに衝撃的だった……。
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今は亡きレジェンドに代わってお礼を
というようなしょ~もない感傷も先送りにしますが、その初代のニューMINIが披露した楽しくてワクワクするような乗り味が、最新のMINIクロスオーバーでも感じられたのは何よりうれしかった。ラインナップではSUVに位置付けられているが、ハンドリングを犠牲にしていない点は素晴らしい。
ベーシックな3ドア(現行モデル)にくらべて全長で27cm、ホイールベースで10cmほど長いMINIクロスオーバーだが、それでもたつくようなそぶりは一切見せず、ギュンギュンとコーナーに切れ込んでいく。すこぶる快調なディーゼルエンジンと相まって、MINI=笑顔になるクルマの図式は何ら変わっていなかった。いいところにお嫁に行ったなと、嫁いでからずいぶんたつのにそんな感慨を持つ。って、オレは誰目線なんだと自らに突っ込むのだけど、MINIに関してはそういう複雑というか誰にもわかりようがない感情が自然と湧き上がってしまう。
MINIは今でもこの国でちょっと特別に愛されているという。BMWの担当者がこんな数字を教えてくれた。世界各国のBMWブランドとMINIブランドの昨2013年の販売比率は160万台対30万台。つまり85%対15%。対して日本は、BMW4万6000台に対してMINI1万7000台で73%対27%となり、世界でもまれに見るMINI比率の高い国なのだという。
そうしたMINIへの認知または理解は、おそらく旧MINI最後の10年となった90年代に礎が築かれたと、僕はそう思う。無論、当時のMINIと今のMINIは全然違う。かつてなかったディーゼルエンジンモデルや5ドアがつくられて、いろんなニーズに応え得る存在になっている。
ただ、愛着を寄せることのできるクルマという昔と変わらない位置にいることは、20年前に真剣にMINIと向き合った僕にすれば、今は亡きアレック・イシゴニスやジョン・クーパーやアレックス・モールトンになり代わってお礼を言いたい気分になるのだ。って一体全体、本当に誰目線でものを言ってんだ?
(文=田村十七男/写真=荒川正幸)
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テスト車のデータ
MINIクーパーSD クロスオーバー
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4120×1790×1550mm
ホイールベース:2595mm
車重:1420kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼルターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:143ps(105kW)/4000rpm
最大トルク:31.1kgm(305Nm)/1750-2700rpm
タイヤ:(前)225/45R18 91V/(後)225/45R18 91V(グッドイヤー・エフィシエントグリップ)
燃費:16.6km/リッター(JC08モード)
価格:387万円/テスト車=513万円
オプション装備:スポーツサスペンション(4万1000円)/マルチファンクションステアリング(3万6000円)/ランフラットタイヤ(1万9000円)/18インチアロイホイール 5スター・ダブル・スポーク・コンポジット アンスラサイト(19万円)/コンフォートアクセス(8万8000円)/ブラック・ボンネットストライプ(1万7000円)/クロームライン・インテリア(2万3000円)/ブラック・リフレクターヘッドライト(2万6000円)/ピアノブラック・エクステリア(3万2000円)/電動ガラスサンルーフ(18万5000円)/ラゲッジセパレーションネット(2万6000円)/アームレスト(2万6000円)/スポーツボタン(3万1000円)/PDC<パークディスタンスコントロール>(6万2000円)/MINIビジュアル・ブースト(12万3000円)/レザー・グラビティ・シート(27万8000円)/メタリックペイント<ジャングル・グリーン>(5万7000円)
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:395km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
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田村 十七男
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