マツダ・デミオXDツーリング Lパッケージ(FF/6AT)/XD(FF/6AT)/13S Lパッケージ(FF/6AT)/13S Lパッケージ(FF/5MT)
欲を言わせていただくならば…… 2014.10.22 試乗記 舞台は箱根のワインディングロード、新型「デミオ」のフットワークに“死角”はないのだろうか? 1.5ディーゼルと1.3ガソリンの両方を都合4モデル試乗し、じっくりと考えた。いつもの道ではあるけれど
「CX-5」「アテンザ」「アクセラ」の成功を経て、スカイアクティブ第4の“タマ”として4代目デミオが登場した。マツダが目指す領域は「クラスを超えた小型車」。兄貴分たちのクオリティーをそのまま受け継ぐBセグメントカーとして「世界レベルに挑戦する」と、マツダの鼻息は相当に荒い。果たしてマツダの考える「世界レベル」とはどういったものなのか?
今回の試乗会は、参加したジャーナリストの「早いモン勝ち」で試乗枠が埋められていく方式だった。4人兄弟の末っ子に生まれた筆者には「好きなものは真っ先に食べる」というクセが染みついているから、いわばデミオのラインナップの主役である1.5リッターディーゼルターボの「XDツーリング Lパッケージ」と、1.3リッター自然吸気ガソリンの「13S Lパッケージ」をすぐさま選んだ。トランスミッションはともに6段オートマチック。もちろんマニュアルにも大いに関心があるが、悲しいかな、いまや日本国内で販売されるクルマ全体の1割にも満たない台数であるから、二の次になるのは仕方がない。
XDグレードで見るべきは、デミオという小型車の全体像と、1.5ディーゼルターボエンジンの出力特性。そしてこのパワー&トルクが、シャシーにどう影響を及ぼすかの3点である。
ところでマツダは、どうして今回の試乗ステージに箱根を選んだのだろう? 確かにココは、クルマの評価が頻繁に行われる試乗コースの定番ではある。しかし、ことデミオのような小型車にとっては、いくらXDの1.5リッターディーゼルターボが2.5リッターガソリン並みのトルクを生み出すとはいっても、ちょっと場違いである気がするのだ。なぜなら、山道ゆえにきついアップダウンが連続するココでは、自然とアクセルの全開率が高くなりすぎ、消費者が最も知りたいアクセル開度領域を置き去りにしてしまいがちだからである。だったら飛ばさなければいいだろう、という話ではあるのだが……。
回して気持ちいい1.5ディーゼル
まずは、XDツーリング Lパッケージで試乗会場を後にした。ここからワインディングロードまで比較的平坦(へいたん)な道が続くのだが、ディーゼルターボの出力特性とトランスミッションとの相性の素晴らしさをすぐに感じ取ることができた。デミオにとって初めての採用となる6段ATは、1500rpm~2500rpmという最大トルクの発生回転域を常に使えるだけの細かいステップ比になっていて、ディーゼルの弱点である“頭打ち感”を露呈させない。
AT任せで走るのもいいけれど、トルクがグワッと盛り上がったところでパドルシフターをパチンと押せば、このグワッが小気味よく何度も続いて、見る見る速度が上がっていく。もはやこれを味わってしまったらATセレクターでのシフト操作など、おっくうでしかなくなる。ATのレスポンスも素晴らしく、デュアルクラッチの必要性はまったく感じなかった。
ターボによるトルクの出方もいい。例えば、日本に輸入される欧州の小型車の多くは、いま1.2リッター3気筒ないし4気筒のガソリンエンジンにターボを装着し、これにセミATを組み合わせているが、ゼロ発進加速において唐突にターボを利かせなくてはならず、どうしても動きだしに“ガサツさ”を伴うことが多い。
対してデミオの1.5ディーゼルターボは、走りだしからしっかり“フツー”している。「分厚いトルク」と言うと大げさになるが、Bセグメントの小型車としては十分以上の低中速トルクで、1130kg(ガソリンモデルと比べて約100kgも重い!)の車体をスイーッと発進させてくれるのである。これが1498ccの排気量とディーゼルという内燃機関のアドバンテージなのだと思う。
しかし、もっと驚いたのは、このエンジンは高回転まで引っ張っても気持ち良かったことだ。105psの最高出力を発生する4000rpmを過ぎても、トップエンドの5000rpm付近まできっちり回る。性能曲線を見ると、4000rpm以上では実際のパワーは落ち込んでいるが、車速のノリは衰えないから、スピードに対する不満を感じない。
もっとも、箱根のワインディングロードでは、やはりこうしたウマミをじっくりと味わうことができなかった。試乗ルートは上り坂が急で、どうしてもアクセルを床までフラットアウトしてしまう。下りは下りで車速がどんどんノッてしまい、それがエンジン特性によるものなのか判然としない。平坦な道路環境で、もっとアクセルのパーシャル領域を使ってねちっこい走りをしてこそ、このエンジンの良さがより引き出せると感じた。
山道ならガソリン仕様に軍配
フットワークはどうだろうか。ディーゼルモデルはガソリンモデルに対して100kg以上重く、その重量はすべて前軸にのしかかっているから、コーナーで確実に影響が出る(前後の重量配分は、XDツーリング Lパッケージが770/370kgであるのに対し、13S Lパッケージは660/370kg。いずれも車検証記載値)。
試乗したXDツーリング Lパッケージは標準の185/60R16サイズのタイヤ(トーヨー・プロクセスR39)を履いていたが、随所でステアリングの応答遅れが目立った。まっすぐ走っている分にはグランツーリスモ的な座り感があり、まさに「ひとクラス上」の質感がステアリング越しに醸し出されていたのだが、いったんコーナーに差し掛かると、ステアリング操作とクルマの動きにズレが生じてしまう。
ごく初期の反応は“ピッ”と素早いマツダ味なのだが、実際に荷重が掛かってくる中間領域からはフロントが無反応になり、クルマだけがグラッと傾く。そしてサスペンションがロールしきると、バンプラバーがつぶれだして応答性がよみがえる。それがダンパーのせいなのか、タイヤのせいなのか、あるいはその両方なのかはわからなかったが、簡単に言えばフロントのロール剛性が足りないと感じた。だから真剣に走ると、ちょっと怖い。
ただ不思議だったのは、最後に乗った15インチタイヤ(ヨコハマ・ブルーアースA)を履く「XD」グレードは、素晴らしくバランスが取れたハンドリングを持っていたことだった。タイヤの差と言ってしまえばそれまでだが、クルマの個体差や、ダンパーのこなれ方もあるのかもしれない。はっきり言えばナゾである。
それに対して、ガソリンモデルである「13S」グレード(こちらもタイヤは15インチ)は、明らかに鼻先が軽いため、この動きがだいぶ軽減されていた。ただし基本的なロール特性はXDと同じだった。
どうやらマツダは、フロントで軽快感を演出するため、加えて乗り心地の良さのために、あえてフロントのロール剛性を落としているようである。多分ダンパーの圧側減衰力をもう少し上げてやるだけで、こういった場所での印象は随分と変わるはずだ。その証拠にリアセクションは、XD、13Sともにシッカリとタイヤの接地感を持っていた。だからこそ、街中と高速道路を中心にした試乗会を行えばいいのに、と思った次第である。
ちなみに、この後に乗った13Sの5MTモデル(15インチ)は、ジャーナリストにしごかれてタイヤの内圧を0.4kg/cm2も上乗せしていたのだが、この状態で乗ったときに、ベストなハンドリングが得られたことも併せて報告しておきたい。
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もうひと磨きを望む
1.3リッターのガソリンエンジンは、正直言ってディーゼルターボのトルクを味わった後では見劣りした。排気量の違いといえばそれまでだが、今回の走行環境でそれなりの速さを維持するためには6段ATもへったくれもなく、アクセルを床まで踏みつけ続けなければならない場面が続いた。さすがにこうなると、ガソリンを垂れ流しているような罪悪感すら覚える。
ただ、その澄んだ音色や、軽い吹け上がりはディーゼルエンジンには望めないものである。だからこうした“気持ち良さ”を購入動機としてガソリンエンジンを選ぶ意味はもちろんあるし、その場合は5MTを選んだ方がいいと思えた。どうせなら自分の意思で、アクセルを踏みつけたいじゃないか。
デミオを純粋な移動のアシとして考え、経済性を第一に考えるのなら、XDと13Sの価格差である約30万円をどれだけ乗り倒して埋められるかが勝負どころとなるだろう。とはいえ2014年9月の段階で、約7000台の受注の実に7割をXDが占めたらしいから、皆さんがXDを経済性だけで選んでいるわけではなさそうではある……。
さて、ここで最初のテーマに戻ろう。デミオは「世界基準の小型車」なのか?
基礎体力としては十分に世界基準をクリアしていると思う。味付けも、このクラスのベンチマークである「フォルクスワーゲン・ポロ」をまねるのではなく、マツダならではの軽快感を表現しようとしている姿勢が頑固で素晴らしい。
ただ、それがまだ昇華しきれていないと筆者は感じた。筆者も相当に頑固なのである……。
(文=山田弘樹/写真=高橋信宏)
テスト車のデータ
マツダ・デミオXDツーリング Lパッケージ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4060×1695×1500mm
ホイールベース:2570mm
車重:1130kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:105ps(77kW)/4000rpm
最大トルク:25.5kgm(250Nm)/1500-2500rpm
タイヤ:(前)185/60R16 86H/(後)185/60R16 86H(トーヨー・プロクセスR39)
燃費:26.6km/リッター(JC08モード)
価格:204万1200円/テスト車=222万4800円
オプション装備:セーフティーパッケージ(ブラインド・スポット・モニタリング+ハイ・ビーム・コントロールシステム+車線逸脱警報システム)(8万6400円)/CD/DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー(フルセグ)(3万2400円)/i-ELOOP(6万4800円)
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:2474km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
マツダ・デミオXD
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4060×1695×1500mm
ホイールベース:2570mm
車重:1130kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:105ps(77kW)/4000rpm
最大トルク:25.5kgm(250Nm)/1500-2500rpm
タイヤ:(前)185/65R15 88S/(後)185/65R15 88S(ヨコハマ・ブルーアースA)
燃費:26.4km/リッター(JC08モード)
価格:178万2000円/テスト車=199万8000円
オプション装備:LEDコンフォートパッケージ(LEDヘッドライト+アドバンストキーレスエントリーシステム+オートライトシステム+レインセンサーワイパー<フロント>+クルーズコントロール+フルオートエアコン)(9万7200円)/セーフティーパッケージ(ブラインド・スポット・モニタリング+ハイ・ビーム・コントロールシステム+車線逸脱警報システム)(8万6400円)/CD/DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー(フルセグ)(3万2400円)/i-ELOOP(6万4800円)
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:2383km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
マツダ・デミオ13S Lパッケージ(6AT)
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4060×1695×1500mm
ホイールベース:2570mm
車重:1030kg
駆動方式:FF
エンジン:1.3リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:6段AT
最高出力:92ps(68kW)/6000rpm
最大トルク:12.3kgm(121Nm)/4000rpm
タイヤ:(前)185/65R15 88S/(後)185/65R15 88S(ヨコハマ・ブルーアースA)
燃費:24.6km/リッター(JC08モード)
価格:171万7200円/テスト車=174万9600円
オプション装備:CD/DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー(フルセグ)(3万2400円)
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:2724km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
マツダ・デミオ13S Lパッケージ(5MT)
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4060×1695×1500mm
ホイールベース:2570mm
車重:1010kg
駆動方式:FF
エンジン:1.3リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:5段MT
最高出力:92ps(68kW)/6000rpm
最大トルク:12.3kgm(121Nm)/4000rpm
タイヤ:(前)185/65R15 88S/(後)185/65R15 88S(ヨコハマ・ブルーアースA)
燃費:21.8km/リッター(JC08モード)
価格:179万2800円/テスト車=182万5200円
オプション装備:CD/DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー(フルセグ)(3万2400円)
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:2834km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

山田 弘樹
ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦経験をもつ、実践派のモータージャーナリスト。動力性能や運動性能、およびそれに関連するメカニズムの批評を得意とする。愛車は1995年式「ポルシェ911カレラ」と1986年式の「トヨタ・スプリンター トレノ」(AE86)。
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