フォルクスワーゲン・パサートTSIハイライン(FF/6MT)
ヒットは決まったようなもの 2014.10.24 試乗記 フォルクスワーゲンの代表的セダン「パサート」がフルモデルチェンジ。日本にも導入が予定される、最新型の仕上がりは……? 発売に先駆け、イタリアのサルデーニャ島で試乗した。実は世界のベストセラー
昨今は、「ポロ」や「up!」の存在感も上昇中。とはいえ、「やっぱり代表格は『ゴルフ』でしょ」と答える人が圧倒的に多いのが、日本におけるフォルクスワーゲンだろう。
なるほど街で見回しても、目に付くモデルは、ゴルフやポロ。「フォルクスワーゲンって、ああいうカタチ(=ハッチバック)以外のモデルも作ってるの?」などと言われかねないありさまだ。
「ボルボV40」など、新たな参入者も現れてはいる。が、それでも多くの人にとって、輸入ハッチバックモデルを代表するのは、今も昔もゴルフであるはず。一方で、このモデルの存在がかくも偉大であるだけに、その陰に隠れて割を食っている印象が抜けないのが、ゴルフの兄貴分であるパサートだ。
だから、そんなモデルが「フォルクスワーゲングループでのベストセラー」と聞かされても、日本では正直、今ひとつピンとこない。
けれども、ゴルフ発売の前年となる1973年に初代モデルがデビューしてからの累計では、生産台数は2200万台に迫る。さらに、中国および米国市場向けの“派生モデル”を含めれば、昨2013年は世界で毎日3000台以上がコンスタントに販売された(!)という、フォルクスワーゲングループ最大の成功作なのだ。かようなわけで、「全ラインナップの中でも、ゴルフやポロに勝るとも劣らない重要なモデルなのです」と、フォルクスワーゲンの説明にも力が入る。
文字通りのフルモデルチェンジ
そんな“隠れたクリーンヒット作”でもあるパサートが、フルモデルチェンジされた。
従来型の登場は2010年。そこから計算すれば、まだ4年の歳月が経過したにすぎない。フォルクスワーゲンが「7代目」と紹介するその従来モデルは、見方によっては、さらに1世代前のモデルの“ビッグマイナーチェンジ版”という内容。つまり、今年のパリサロンで披露されたこの最新モデルは、実質的には「8年ぶりのフルモデルチェンジになる」とも紹介できる。
今回モデルチェンジが行われたのは、フォルクスワーゲン流に“ヴァリアント”と呼ばれるステーションワゴンと、スリーボックス……というよりは、クーペ風の流れるようなアーチ型ルーフラインを持つ4ドアセダンの2タイプ。いずれも、エンジン搭載位置からアクセルペダルまでの距離を統一規格としたモジュラー戦略、「MQB」にのっとった新構造を採用することが、トピックのひとつである。
ボディーサイズは従来型と同等ながら、ホイールベースを79mm延ばしつつ前後のオーバーハングを短縮。さらに、フロントフード高を下げ、Aピラー位置を後退させることで、流麗なプロポーションを実現させた。後席足元スペースが40mm近く拡大されたというのも、セリングポイントになっている。
搭載エンジンはすべて直噴のターボ付きで、ガソリンが5種類、ディーゼルが4種類。ガソリンエンジンにモーターを組み合わせたプラグインハイブリッド車もラインナップされる。そのうち、国際試乗会の場に用意されたのは、最高240psを発するツインターボ付きと190psのシングルターボ付きからなる、2種類の2リッターディーゼルと、最高150psを発する1.4リッターガソリンの計3タイプ。今回は主に、日本への導入が見込まれるガソリン車をテストドライブした。
質感の高さは“御三家”並み
新型パサートが出展されたパリモーターショーの会場から、試乗会のスタート地点であるサルデーニャ島へと移動し、再び目にした際の印象は、「見れば見るほどパサートらしい」というものだった。
従来型が好評だっただけに、イメージを大きく変える必要はないという判断が下されたことは事実だろう。全長はほとんど変えず、全幅は12mm増し。全高はセダンで14mm、ヴァリアントで2mmだけダウン。この変化の少なさも、従来型のパッケージングがすでに完成の域に達していたことを裏付ける。
セダンもヴァリアントも、「いかにも実直そうなルックス」であるのはパサートならではだ。その上で、前述のようにより伸びやかに、そして一見して従来型よりも質感高く見せているところが、新型の特徴だ。
具体的には、パネル同士の隙間の小ささや、エッジの利いたプレスラインなどが、見栄えを向上させている点の代表例。ヘッドランプ内側からAピラーへと続くフード上のプレスラインや、フロントのホイールハウス後方からドアハンドル上を通過し、リアのコンビネーションランプへと続くキャラクターラインのシャープな表現力などは、メルセデス・ベンツやBMWのトップモデルなどと比較しても、まったくヒケをとらないといえる。
インテリア各部における質感の高さもすばらしい。ダッシュボードの幅いっぱいに広がる、水平基調のベンチレーションストリップがもたらすワイド感も印象的だが、何より、思わず「これではアウディの立つ瀬がないナ」と口走りたくなるほどの、全般的なクオリティーの高さがすごい。
実はヨーロッパでは、多くのパサートがカンパニーカーとして顧客の元に届けられる。それゆえ、数あるライバルの中から選択候補として残されることを意識し、「ユーザーが誇りを持てるプレミアム性を表現すること」も、今回のモデルチェンジでの大きな目的だったという。
そうした狙いを聞くと、新型のインテリアの仕上がりにも、「なるほど」と納得。このあたりが、今回のフルモデルチェンジにおける最も分かりやすい変化だと感じられる。
走りの味もプレミアム
走りだしてみても、「プレミアム性を分かりやすく演じたい」という新型の狙いどころは明らかな印象だ。何しろ、静粛性の高さが際立っている。ドアを閉じた瞬間に伝わる、外界から隔絶された静かなキャビン空間の演出は、それだけでも従来型からの進化を実感させるものだ。
そして、ヒタヒタと滑るように走る、しなやかなフットワークにも感心した。端的に言って「これがフォルクスワーゲン車なのか!?」という驚きの感覚だ。
テスト車は大径18インチのオプションシューズを履く一方、電子制御式の可変減衰力ダンパー「DCC(ダイナミックシャシーコントロール)」を装着した仕様。それが、優れた乗り味の実現に貢献した可能性も、少なからずある。いずれにせよ、この“静かさ”と“しなやかさ”という2つの項目だけみても、初めて体験する人は「いいクルマに乗っているナ!」という実感がタップリ得られるに違いない。
実をいえば、エンジンを高回転域まで引っ張ると、それなりのノイズがキャビン内に飛び込んでくるし、ひどく荒れた路面に差し掛かると、ばね下重量の大きさが意外なほど目立ったりする。こうしたシーンでは、それまでの静かさやしなやかさに対する印象は、大きく低下してしてしまう。あるいは、「いかにヨーロッパの環境下でも、こうしたモデルをそのような厳しいシーンで使うことなど多くはないだろう」という読みが、開発陣の中にあるのかもしれない。
いずれにしても、比較的走行負荷が小さい範囲では、前述のように抜群の静粛性としなやかな乗り味を実現し、いかにも上質でプレミアムなテイストを演出するというのが、新型パサートの走りの個性だ。
その上で、時代の要請に応えるさまざまなドライバー・アシストシステムも用意される。かくも装備も充実させたモデルが、いわゆるプレミアムブランドの作品よりもはるかにリーズナブルな価格で手に入るとなれば、それが再び隠れたヒット作となることは約束されたも同然だろう。
(文=河村康彦/写真=フォルクスワーゲン)
テスト車のデータ
フォルクスワーゲン・パサートTSIハイライン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4767×1832×1456mm
ホイールベース:2791mm
車重:1387kg
駆動方式:FF
エンジン:1.4リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段MT
最高出力:150ps(110kW)/5000-6000rpm
最大トルク:25.5kgm(250Nm)/1500-3500rpm
タイヤ:(前)235/45R18/(後)235/45R18(コンチネンタル・コンチスポーツコンタクト5)
燃費:5.0~4.9リッター/100km(約20.0~20.4km/リッター)(欧州複合モード)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
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河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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