ルノー・メガーヌ ハッチバックGTライン(FF/6AT)
「らしさ」は健在 2014.11.03 試乗記 ルノースポールがちょっとだけスポーティーに仕立てた「メガーヌ GTライン」がマイナーチェンジを受けた。1.2リッター直4ターボエンジンと6段DCTを得た新型の走りはどう進化した? ハッチバック仕様に試乗した。ルノー本来の味わいが残る
日本のルノーファンにとって、「メガーヌ」といえばまずは「R.S.」だろう。ニュルブルクリンクの北コース、ノルドシュライフェで量産の前輪駆動車としては最速となる8分7秒97をマークしたメガーヌ ルノースポールは最高出力265psを発生する4気筒2リッターターボを搭載。そのダイレクトでありながら懐の深いハンドリングは多くのファンを魅了してきた。
けれども、私にはR.S.以上に強く引かれるメガーヌがあった。その名は「メガーヌ エステートGTライン」。このモデルもルノースポールの作品とされるが、レースカーを頂点とする同社のモデルラインナップのなかではR.S.、そして「GT220」に続く最もベーシックな位置付けとなっている。いわば、スタンダードなルノーにちょっとだけスポーティーなお化粧直しをした程度の仕様なのだが、それだけにルノーの魅力がぎゅっと凝縮されており、私はまたたく間にそのトリコになってしまった。
なにが素晴らしいって、いかにもフランス車らしいたっぷりとしたホイールストロークを有するサスペンションの設定が素晴らしい。スプリングはやや柔らかめながら、上質なダンパーと組み合わせることでロードホールディング性はバツグン。どこまでコーナーを攻めても路面のギャップでクルマが横っ飛びすることがなく、実に安定したフォームに終始するのだ。
しかもフラットな姿勢を崩さないソフトめの乗り心地は快適そのもの。日産のMR20DE型エンジンを源流とするM4R型(4気筒自然吸気2リッターで140psを発生)と6段マニュアルモード付きCVTに個性がなくやや物足りなかったことを除けば、スペースユーティリティー、そして278万円の価格(2012年12月の発売時)含め、私の理想に限りなく近いCセグメントワゴンだったのである。
エンジンを1.2にダウンサイズ
そのマイナーチェンジ版として、新型のGTラインが発売された。ボディーはハッチバックとエステートの2タイプ。その第一の特徴は、新しいデザインのフロントマスクが与えられたことにある。左右のヘッドライトを緩やかな曲線を描く黒いグリルで結び、その中央にやや大きめで立体的に表現されたルノーマークを誇らしげに掲げた、いわゆる“ヴァン・デン・アッカー顔”に改められたのだ。なお、すでに「カングー」や「コレオス」も同様のデザインにフェイスリフトされているので、これで日本に導入されている全ルノーが“ヴァン・デン・アッカー顔”で統一されたことになる。
これに比べるとインテリアの変更は軽微で、シートは従来型のままだというが、なんといっても見逃せないのがパワートレインが一新されたこと。基本的には、新型「ルーテシア」と同じ直4 1.2リッター直噴ターボと6段DCTの組み合わせで、いわばヨーロッパの最新トレンドが移植された格好である。ただし、エンジンのスペックはルーテシアとは微妙に異なり、最高出力は12ps増しの132ps、最大トルクは15Nm増しの205Nm(20.9kgm)とされている。
価格はメガーヌ ハッチバックGTラインが275万9000円で、そのワゴン版にあたるメガーヌ エステートGTラインは285万9000円。今回は、このうちハッチバック版に試乗した。
必要にして十分
外観を眺めたときの第一印象は、「意外と“ヴァン・デン・アッカー顔”がしっくり馴染(なじ)んでいる」というもの。日本未導入の新型「トゥインゴ」などは、角張ったボディーに無理やり曲線的なフロントマスクが与えられたものだから、正面から見たときと横から見たときでずいぶん印象の異なるデザインになってしまったが、幸いにもメガーヌはもともとのエクステリアデザインが曲線的なため、“ヴァン・デン・アッカー顔”との相性は意外なほどいい。これには、ほっとひと安心した次第である。
いっぽう、エンジンは驚くほど静かで、交差点で信号待ちしているときなどは、「ひょっとしてアイドリングストップがついている?」と勘違いしかねないほどキャビンは静粛に保たれる。
この静けさは走り始めてからも変わらず、たとえ3500rpmくらいまで回してもエンジンノイズはほとんど耳に届かないほか、トップエンドの6500rpmまで引っ張ってもスムーズさ、滑らかさはまるで失われない。1.2リッター直噴ターボは寡黙に仕事をこなすのみ。しかも、低中速回転域で生み出されるトルクも必要にして十分。アンダーパワー好き(?)の筆者には、これ以上は必要ないと思えるほどの力強さだった。
DCTの作動はルーテシア同様、実に滑らかである。やたらシフト時間が短く、ダイレクト感を強調するフォルクスワーゲングループのDSGに比べると、ゲトラク製のこちらは半クラッチを多用する傾向にあるし、シフトの時間もやや長めながら、それがこのメガーヌというクルマの性格にぴったりマッチしているように思える。また、減速時に積極的にシフトダウンしてエンジンブレーキを強く利かす設定は、日本車にもドイツ車にもあまり見られない、フランス車ならではの個性として歓迎したいところだ。
「メガーヌ」は今が旬
サスペンションの設定は、先代のメガーヌ エステートGTラインに比べるとやや硬めで、別の言い方をすればスポーティーに感じられる。荒れた路面を低速で走ると、ちょっとした上下動を感じることもある。
けれども、コーナーをある程度まで攻めても内輪が浮き立つことはなく、外輪をしっかりと沈み込ませながらも内輪の接地性を稼ぐ姿勢にしつけられていて、なかなか安定感が高い。おかげでコーナリング中に鋭い突起に乗り上げても瞬間的にグリップが抜けることはなく、大きなうねりを強行突破してもステア特性が上下動にあわせて変わることはなかった。つまり、狙いを定めた方向にステアリングを切れば、多少の路面の変化などおかまいなしに、粘っこくグリップし続けるロードホールディングの良さが先代から受け継がれていたのである。
では、先代と新型のどちらがいいのか。これはいささか難しい問題だ。ハンドリング、乗り心地重視でいえば、明らかに先代に軍配が上がる。いっぽうで中低速域で力強く、ギアボックスに歯切れの良さがあり、静粛性にも優れるという点では新型が先代を凌(しの)ぐ。
個人的には、アルミを多用してボディーを軽量化したルノーの最新モデルのハーシュネスがなかなか好きになれないので、スチールらしい粘っこい感触を保ちながらコストダウンの影響を微塵(みじん)も感じさせないメガーヌのボディーは引き続き魅力的。そこに最新のパワートレインが加わったのだから、新型メガーヌも「いまのうちに乗っておきたい一台」に数え上げたいと思うのだが、いかがだろうか?
(文=大谷達也<Little Wing>/写真=田村 弥)
テスト車のデータ
ルノー・メガーヌ ハッチバックGTライン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4325×1810×1460mm
ホイールベース:2640mm
車重:1310kg
駆動方式:FF
エンジン:1.2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6AT
最高出力:132ps(97kW)/5500rpm
最大トルク:20.9kgm(205Nm)/2000rpm
タイヤ:(前)205/50R17 89V/(後)205/50R17 89V(コンチネンタル・コンチスポーツコンタクト5)
燃費:--km/リッター
価格:275万9000円/テスト車=280万3240円
オプション装備:メーカーオプションなし ※以下、販売店オプション ETC車載器(1万4000円)/フロアマット(3万240円)
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:2150km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(8)/山岳路(0)
テスト距離:104.0km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター(満タン法)/15.2km/リッター(車載燃費計計測値)

大谷 達也
自動車ライター。大学卒業後、電機メーカーの研究所にエンジニアとして勤務。1990年に自動車雑誌『CAR GRAPHIC』の編集部員へと転身。同誌副編集長に就任した後、2010年に退職し、フリーランスの自動車ライターとなる。現在はラグジュアリーカーを中心に軽自動車まで幅広く取材。先端技術やモータースポーツ関連の原稿執筆も数多く手がける。2022-2023 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考員、日本自動車ジャーナリスト協会会員、日本モータースポーツ記者会会員。
-
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD)【試乗記】 2026.8.31 フルモデルチェンジした「アウディQ3スポーツバック」に試乗。プラットフォームやパワートレインこそ従来型の改良版ではあるものの、内外装のデザインやインフォテインメント、効率性のすべてにおいて大幅な進化を遂げたという。その仕上がりやいかに。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(4WD)【試乗記】 2026.8.29 「トヨタbZ4X」にワゴンのようなロングボディーを持つ「ツーリング」が登場。ただ長くなっただけではなく、今回試した4WDモデルではパワーもアップ。乗り味にも微妙な影響を及ぼしているから見逃せない。経路充電を試しつつ、370km余りをドライブした。
-
BMW 120オリジナル(FF/7AT)【試乗記】 2026.8.25 BMWの主要モデルに新グレードの「オリジナル」が設定された。位置づけとしては新たなエントリーグレードということになるが、BMWらしさを損なうことなく装備を厳選し、価格を抑えたのがポイントだという。「1シリーズ」の「120オリジナル」の仕上がりをリポートする。
-
トライアンフ・スラクストン400(6MT)【レビュー】 2026.8.25 カフェレーサーの本場である、イギリスのトライアンフがリリースした「スラクストン400」。車名のとおり、カジュアルに楽しめる400ccクラスのマシンではあるのだが、その実物からは、エントリーモデルとは思えない本物の香りが漂っていた。
-
スズキeスカイ プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2026.8.24 スズキが満を持して世に問う、軽規格の新型電気自動車「eスカイ」。軽乗用車の本質である、生活の足としてのちょうどよい性能を追求したという一台は、どのようなクルマに仕上がっているのか? 2026年秋の正式発表を前に、プロトタイプモデルに試乗した。
-
NEW
第127回:新型BMW X5(後編) ―迷走するBMW 結局アナタは“ノイエクラッセ”でなにがしたかったの?―
2026.9.2カーデザイン曼荼羅その姿が明らかとなるや、賛否両論を巻き起こしている新型「BMW X5」。このクルマは既存のBMW製SUVとはなにがちがうのか? そもそもBMWは“ノイエクラッセ・デザイン”になにを託していたのか? カーデザインの識者と、迷走するBMWの明日を探った。 -
NEW
BMW X1 sDrive20iオリジナル(FF/7AT)【試乗記】
2026.9.2試乗記BMWのコンパクトSUV「X1」に新グレードの「オリジナル」が登場。走りの楽しさをはじめとしたBMWらしさをキープしつつ、装備の厳選によって価格抑制を図った新たなエントリーグレードだ。都市部におけるドライバビリティーとユーザービリティーをリポートする。 -
スポーツカーに未来はあるか?
2026.9.1あの多田哲哉のクルマQ&A年々、開発環境が厳しくなるといわれるスポーツカーは、この先も存在しうるのか? トヨタのエンジニアとしてさまざまなスポーツカーを開発してきた多田哲哉さんに“未来のスポーツカー像”を聞いた。 -
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】
2026.9.1試乗記2020年のデビュー以来、間断なく進化を続けてきたコンパクトスポーツの「トヨタGRヤリス」。一般ユーザーの間ではもちろん、コンペティションの世界でもチューニングのかいわいでも光を放つ一台は、2026年モデルでどう進化したのか? その走りを報告する。 -
“自然を連想する車名”の名車特集
2026.9.1日刊!名車列伝暑さが和らぐ一方で、台風シーズンとも呼ばれる9月。その風をはじめ、星座、景観など自然を連想させる名前が与えられた、世界の名車を日替わりで紹介します。 -
興味があるのはたったの3割!? 自動車業界を揺るがすSDVやAIって本当に必要なの?
2026.8.31デイリーコラム自動車も、スマホのように機能がアップデートできるようになる! ……ということで注目されるソフトウエアディファインドビークル(SDV)だが、日本のユーザーの多くが「いらない」と思っていることが判明! 急速に進むデジタル技術の、必要性について考えた。






























