フォルクスワーゲンe-up!(FF)
主張しすぎないEV 2014.11.20 試乗記 日本での受注が2015年2月に始まるフォルクスワーゲンの「e-up!」。電気自動車(EV)でありながら、あえて特別なモデルにはしなかったというメーカーの意図と、クルマの出来栄えをリポートする。日本メーカーのEVよりも日本的?
EVを特別なものにしない。これがフォルクスワーゲンの電動車両に対する考え方だ。そのため車体は専用設計とせず、「up!」と「ゴルフ」をベースに車両を開発している。どちらも設計段階からEVへの展開を織り込んであるとのこと。既存のエンジン車と同じように扱えることも長所に挙げられる。
と、プレスリリースを読む限りは良いことずくめだが、初めて運転したEVが1995年生まれの「プジョー106エレクトリック」だったり、人より少しばかりEV体験の多い僕は、ちょっと違う見方をしている。
EVと内燃機関自動車ではメカニズムのボリュームが違う。モーターはエンジンよりはるかに小さく、逆にバッテリーは燃料タンクより大きい。理想のパッケージングを追求すれば、専用ボディーに行き着くのは当然だ。「テスラ・モデルS」や「BMW i3」はそういう考えで生まれた。
つまり双方ともにメリットがある。ガソリンとディーゼル、前輪駆動と後輪駆動など、この種の話はクルマ業界にはいくらでもあるわけで、二者択一ではなく、ユーザーが嗜好(しこう)や目的に応じて選べば良いと思っている。
ただし、国としてEVを特別視していないのは、むしろ日本である。ドイツ政府は2020年までに100万台のEVやPHV(プラグインハイブリッド車)を普及させる目標を掲げているが、日本はなんと15~20%を目標としている。現在の保有台数を基に計算すると、少ないほうで見積もっても1000万台を軽く超える。
だからフォルクスワーゲンのEV戦略はドイツよりもむしろ、電動車両先進国である日本に合っているのかもしれない。そんなことを思いながら試乗会に向かった。