BMW 218iアクティブツアラー ラグジュアリー(FF/6AT)
使いこなす歓び 2014.12.03 試乗記 BMWブランド初のFFモデル「2シリーズ アクティブツアラー」がいよいよ日本の道に降り立った。その走りに“BMWらしさ”は宿るのか。1.5リッター直3ターボエンジンを搭載する「218iアクティブツアラー」で箱根のワインディングロードを駆けぬけた。初めてのFF
クルマ好きにとっては今年一番の注目モデルかもしれない。何しろ2シリーズ アクティブツアラーはBMWブランドとして初めての前輪駆動(FWD)モデル。これまで後輪駆動のスポーツセダンにこだわってきたプレミアムブランドが、ついに手を染めた“FF”である。どのような車に仕上がっているのか、という興味以前に、あのBMWが作るならばFWD車にも“駆けぬける歓び”はあるのか、あるいは他の多くのFWDモデルとは違ってBMWならではの特徴があるのか等々、議論好きのエンスージアストたちの酒の肴(さかな)として格好の題材になっているはずだ。もちろんそれはBMWも先刻承知だろうが、新型車は主に、おそらく駆動方式の違いなど気にも留めない新しいカスタマーに向けた新ジャンル商品であることも事実だ。まずは虚心坦懐(たんかい)を言い聞かせて、箱根での試乗会に赴いた。
例によってBMWは“スポーツ・アクティビティ・ツアラー(SAT)”という独自のネーミングで呼ぶのだけれど、新しい2シリーズ アクティブツアラーは、その形態で言えばわれわれ日本人には見慣れた背の高い5ドアハッチバックである。キドニーグリルやL字型のテールランプ、ボディーサイドのシャープなアクセントラインやリアクオーターウィンドウの切り方など特徴的なディテールがBMWらしさを巧妙に演出しているが、あえてそれを見ないようにすればフォルムそのものはいわゆるミニ・ミニバン、大きめの「ホンダ・フィット」といってもいい。
ボディーの全長×全幅×全高は4350×1800×1550mm、ホイールベースは2670mmというもの。直接的なライバルであるはずの「メルセデス・ベンツBクラス」に比べると、全長だけはわずかに短いが、それ以外はひと回り大きい。ただし、日本仕様は車高が10mm低くなるスポーツサスペンションを備え、全高を1550mmに抑えて一般的なタワーパーキングにも対応するように仕立てられている。また「3シリーズ」と同様、全幅が1800mmという点も日本市場を考慮してあることがうかがえる。このぐらいのサイズが日本でコンパクトといっても通用する上限だろう。
ユーティリティー抜群
室内は明るく、広々としている。いかにもBMWらしくすっきりクリーンなインストゥルメントは上質な手触りで使いやすく、ドライビングポジションも文句なし。後席は足元も天井も十分な余裕がある。シート座面がちょっと短く感じるものの、着座位置が高く自然だから、まず快適に過ごせるはずだ。単に広くルーミーなだけでなく、後席の多彩なシートアレンジが2シリーズ アクティブツアラーの特徴。日本のミニバン顔負けというぐらい、痒(かゆ)いところに全部手が届くような気配りに溢(あふ)れ、使い勝手に優れている。
例えばリアシートは左右別々にスライド調整可能(前後に13cm)であり、またバックレストのリクライニング調整もほぼ直角の-1.5度から28.5度まで3段階に調節できる。もちろんそのバックレストは40:20:40の比率で分割可倒式、しかも荷室側にもリモートスイッチが左右別々に備わり、ワンタッチでバックレストを倒すことができる。ラゲッジスペースの容量は通常状態で468リッター(最大では1510リッター)と十分だが、スライドやリクライン機能を使えば、乗車人数や荷物に合わせてどんな状況にも対応できるというわけだ。実際に操作する時にうまく噛(か)みこまない、引っかかりがある、などといったガタツキが一切ないところも非常に好ましい。ちなみに荷室容量はウィンドウラインまでの容量だから、ランフラットタイヤ(ブリヂストン・トランザT001 RFT)が標準装備であるためスペアが省略されたフロア下の物入れは別勘定である。さらにこの車は「コンフォート・パッケージ」(14万4000円のオプション)付きだったのでテールゲートは電動開閉式、しかも「コンフォート・アクセス」機能も付いており、キーを身につけていれば足先をリアバンパー下に入れて動かすだけでハッチが開閉する。実に至れり尽くせりである。
必要十分な3気筒ターボ
日本仕様のパワーユニットは当面2種類用意されている。「MINIクーパー」と同じ3気筒1.5リッターターボ(136ps<100kW>/4400rpm、22.4kgm<220Nm>/1250-4300rpm)を搭載する218iはスタンダード(332万円)と「ラグジュアリー」(381万円)、それに「Mスポーツ」(368万円)の3種のトリムラインが用意されており、いっぽう231ps(170kW)/4750rpmと35.6kgm(350Nm)/1250-4500rpmを生み出す4気筒2リッターターボは4WDの「225i xDriveアクティブツアラー Mスポーツ」(494万円)に積まれ、3気筒版は6AT、4気筒は8ATと組み合わされている。今のところガソリンモデルのみだが、本国では当然ディーゼルターボもラインナップされている。ディーゼルモデルの導入に積極的なBMWだけにさほど遠くない将来にディーゼルの「218d」も追加されるだろう。
もっとも試乗会に用意されていたのは3気筒ターボの218iアクティブツアラーだけだった。アイドリング時のカラカラという乾いた音はなぜかMINIクーパーよりも大きく感じたが、わずかでも動き出せば途端に消えうせ、アイドリングに近い回転域から湧き出す十分なトルクのおかげでスルスルと身軽に走りだす。安全装備などが充実しているせいか、車重は1490kgと少々重めだが、洗練された6ATがトルクのおいしいところを選んで滑らかに変速し、気持ち良く走ることができる。MINIと同様、いったん走りだせば3気筒ゆえの振動やノイズなどが一切感じられないことは言うまでもない。ちなみにヨーロッパ仕様の0-100km/h加速は9.2秒というから、このセグメントとしてはなかなかの駿足(しゅんそく)と言えるだろう。
越えられない壁はある
時間も試乗コースも限られたものだったが、少なくとも218iアクティブツアラーのハンドリングも乗り心地についても、このようなボディーを持つFWDとしては第一級の出来栄えであることが確認できた。ただし、滑らかに気持ち良くすがすがしく走るとはいうものの、目いっぱい飛ばして操縦それ自体に面白さとかやりがいを見いだすようなタイプではない。熱いエンスーたちは肩を落とすかもしれないが、いかにBMWとはいえ、FWDのエントリーモデルを3シリーズなどと同レベルに仕立て上げるような魔法を使えるはずがない。物理法則は揺るがない。もしそれを曲げられるとしても、とんでもないコストと手間がかかるのが世の常識である。
フロントタイヤのグリップを掌(てのひら)で探るような滑らかで緻密なステアリングフィールや、直進状態に戻る際の繊細な反力感などは、やはり後輪駆動特有のものと言わなければならない。そうでければ、むしろこれまでBMWが後輪駆動にこだわってきた意味が問われてしまうというものだ。2シリーズ アクティブツアラーが、ワインディングロードを駆けぬけることに歓びを見いだす車でないことは、その形と使い勝手を考慮した数々の工夫を見ればおのずから明らかである。それよりも私は、このようなユーティリティー抜群のFWD車を初めて手掛けたにもかかわらず、まったく隙を見せずに見事に仕上げたBMWの腕前に驚かされたのである。ディーゼルのxDriveなどは最高のスキーエクスプレスになるんじゃないだろうか。
(文=高平高輝/写真=小林俊樹)
テスト車のデータ
BMW 218iアクティブツアラー ラグジュアリー
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4350×1800×1550mm
ホイールベース:2670mm
車重:1490kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:136ps(100kW)/4400rpm
最大トルク:22.4kgm(220Nm)/1250-4300rpm
タイヤ:(前)205/55R17 91W/(後)205/55R17 91W(ブリヂストン・トランザT001 RFT)
燃費:16.8km/リッター(JC08モード)
価格:381万円/テスト車=462万3000円
オプション装備:アドバンスド・アクティブ・セーフティ・パッケージ(13万円)/コンフォート・パッケージ(14万4000円)/アドバンスド・パーキング・サポート・パッケージ(14万7000円)/BMWコネクテッド・ドライブ・プレミアム(6万1000円)/17インチ マルチスポーク・スタイリング 481アロイ・ホイール(9万2000円)/電動パノラマ・ガラス・サンルーフ(20万9000円)/ファインライン・ショアー・ウッド・トリム パール・グロス・ハイライト(3万円)
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:967km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

高平 高輝
-
ベントレー・ベンテイガ スピード(4WD/8AT)【試乗記】 2026.7.17 「ベントレー・ベンテイガ」に最上級グレードの「スピード」が登場。ブランドの在り方をストレートに伝える名称のトップパフォーマンスモデルだが、従来型との最大の違いはその心臓部にV8エンジンが積まれていることだ。およそ不満のあろうはずもないが、最新モデルの仕上がりをリポートする。
-
フェラーリ849テスタロッサ スパイダー(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.7.15 歴史ある車名が与えられた「フェラーリ849テスタロッサ」は、従来型から大幅な進化をとげた高性能スポーツカーだ。では、そのオープントップバージョンの走りはどうか? 日本での発売を前に、フェラーリ通として知られる西川 淳が試乗した。
-
ポルシェ・カイエン ターボ エレクトリック(4WD)【試乗記】 2026.7.15 ポルシェ最新の電動ハイパフォーマンスSUV「カイエン エレクトリック」。そのラインナップのなかでも、最高峰に位置するのが「カイエン ターボ エレクトリック」だ。最高出力1156PS、最大トルク1500N・mという、とてつもないパフォーマンスの一端に触れた。
-
プジョー308 GTハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】 2026.7.14 マイナーチェンジで内外装がブラッシュアップされた「プジョー308 GTハイブリッド」に試乗。大胆なデザインのフロントフェイスに目を奪われるが、ステランティス自慢の1.2リッター直3マイルドハイブリッドを搭載する最新モデルの仕上がりと走りやいかに。
-
日産キックスG(FF)/キックスX e-4ORCE(4WD)【試乗記】 2026.7.13 日産のコンパクトSUV「キックス」が、いよいよフルモデルチェンジ! デザインもパワートレインもプラットフォームも刷新された新型は、見ても乗っても長足の進化が感じられる力作となっていた。日産の再生を担う重要モデルの仕上がりを報告する。
-
NEW
ホンダCB750ホーネット(6MT)【レビュー】
2026.7.18試乗記ホンダのスポーツネイキッド「CB750ホーネット」が、話題の「E-Clutch」を獲得。ライディングの幅を広げる自動クラッチシステムは、パンチの利いた2気筒のストリートファイターにどんな走りをもたらすのか? その仕上がりを確かめた。 -
人気沸騰「ランクル“FJ”」を手にするもうひとつの方法
2026.7.17サブスク「KINTO」で「ランドクルーザー“FJ”」に乗る<AD>2026年5月に発売されるやオーダーが集中し、受注停止となってしまった「ランドクルーザー“FJ”」。しかし、あきらめるのはまだ早い。“FJ”とのカーライフを実現できる、トヨタの新車サブスクリプションサービス「KINTO」という手段があるのだ。 -
新型「アルピーヌA110」はどんなクルマに? グッドウッドを駆けたテストカーから読み解く
2026.7.17デイリーコラムアルピーヌが次期型「A110」を示唆する「A110フューチャー」を初公開。グッドウッドで走る姿を披露した。そこから分かる未来のA110の姿とは? 電動化がアナウンスされているが、エンジン車の設定はあるのか? 公式発表とテストカーの姿から深掘りする。 -
ベントレー・ベンテイガ スピード(4WD/8AT)【試乗記】
2026.7.17試乗記「ベントレー・ベンテイガ」に最上級グレードの「スピード」が登場。ブランドの在り方をストレートに伝える名称のトップパフォーマンスモデルだが、従来型との最大の違いはその心臓部にV8エンジンが積まれていることだ。およそ不満のあろうはずもないが、最新モデルの仕上がりをリポートする。 -
写真で解説する新型「日産エルグランド」
2026.7.16画像・写真新型「日産エルグランド」は、日本伝統の美をデザインに生かしながら、同社独自の最新技術を組み合わせて“走りのよさ”も徹底追求したという意欲作。その見どころを写真とともに解説する。 -
第970回:クルマの背中に浮かぶ文字たち――空いた字間が語るもの
2026.7.16マッキナ あらモーダ!アナタは自動車のボディー背面に施されたメーカー/ブランドのロゴについて考えたことがあるだろうか? 字間を詰めたり、広げたり、時代によって変わるそのトレンドと、その背景にあるメーカーの思惑を、自動車史にも精通する大矢アキオが語る。





























