第79回:BMW M3セダン(前編)

2014.12.12 水野和敏的視点 水野 和敏
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誰が「M3=ストレート6」と決めたのか?

前回まで「マツダ・デミオ」から「プジョー208」まで、Bセグメントのハッチバックを4台連続でテストしました。今回は打って変わって究極のスポーツセダンといえる「BMW M3セダン」を取り上げます。

いまさら言うまでもありませんが、M3はもともとツーリングカーレースを制するために生まれたクルマです。1986年に登場した初代M3(E30)は2.3リッター4気筒を搭載していましたが、2代目(E36)では3リッターおよび3.2リッターのストレート6を載せるに至りました。そして4代目となる先代型(E90)ではさらに大きな4リッターのV8を採用して話題になりました。

最新のM3は、ストレート6に回帰しました。3リッターエンジンはツインターボを得て、先代の8気筒を上まわる431psと56.1kgmを発生します。初代M3は195psでしたから、それを思えばずいぶんとパワフルなモンスターに育ったものです。

私は新型M3が再びストレート6を使うことについて、本音を言わせていただくなら、エンジニアとしては少々ドライな感想を持っています。今回の回帰は、「Mパワーは、やはり直6でないと……」というマーケットの反応を踏まえたものと思われます。

意地の悪い言い方をするなら、「ポルシェ911」がリアエンジンでないといけない、というのと同じではないでしょうか。エンジニアリングの本質で合理的に考えれば、ミドシップの「ケイマン」の方がスポーツカーとしては「正しい」のですが、911はエンジンをリアに積むしかない。それが、お客さまが決め込んだイメージだからです。

M3とストレート6の関係も同様で、メーカーや評論家たちがいくら議論しても意味がない。その組み合わせは、繰り返しますが「お客さまが決めたこと。市場の声」なのですから。ここらへんが、自動車ビジネスのおもしろさであり、お客さま主体の奥の深さと言えるかもしれません。なにせお客さまあってのマーケットですから……。私はこういうのがとても好きです!