BMW X4 xDrive28i Mスポーツ(4WD/8AT)
連勝なるか!? 2014.12.24 試乗記 市場で成功をおさめた「X6」に続く、“スポーツ・アクティビティ・クーペ”「X4」とは、どんなクルマなのか? エントリーモデル「xDrive28i」の試乗を通じて、その素顔に迫った。今までと違う“スポーツ”
望外に乗り心地がよい。まず、そのことに驚いた。東京・内神田にある『webCG』の駐車場から都道402号線に出るには、歩道を経なければならない。歩道と車道との間には段差がある。その段差を降りた、いわば第一歩こそ、ひとりの人間にとっては小さな一歩だが、ひとつのクルマの印象を決めるには大きな飛躍である。
X4は段差を難なく通過し、走り始めると、静かで洗練されていて、力強い。タイヤは前245/45R19、後ろ275/40R19という巨大サイズを履いている。銘柄は「ミシュラン・プライマシー3」で、ランフラットではあるけれど、実は快適性と走行安定性の両立を狙ったフツウのサマータイヤである。特にSUV用ではない。そこにX4の立ち位置というものがある。
足まわりは「柔らかめ」という判断を私は下した。くどいようだが、そのことに驚いた。だって見た目はオフロード4×4のクーペで、速そうで、おまけに「Mスポーツ」である。過去の経験に照らせば、「Mスポ」はたいてい「硬い」。シャコタンにして、標準モデルより大きなタイヤを履く、というのが基本姿勢である。例えば、セダンの「328i Mスポーツ」は標準仕様より10mm全高が低い。
それが「X4 xDrive28i Mスポーツ」ときたら……、特に車高は低くなってもおらず、もちろんフニャフニャではないけれど、ストローク感があって、洗練されている。タイヤとホイールハウスの隙間が十二分にとれるSUV種であることが足まわりのチューニングの自由度につながっているのかもしれない。
考え抜かれた個性派モデル
2013年春の上海モーターショーでデビューしたX4は、BMWの造語であるところの「SAC(スポーツ・アクティビティ・クーペ)」第2弾である。もちろん第1弾は兄貴分の「X6」である。
ニッチメーカーのBMWが、4WDのなかでも、オンロード重視で高性能な高級車、というジャンルに抜群の精度で投げ込んだのがSAV(スポーツ・アクティビティ・ビークル)第1弾の初代「X5」で、発売は2000年のことだった。はや15年近く昔のことだけれど、思い出すなぁ、まだ「カイエン」を出す前、来日したポルシェ社の重役に尋ねたことがある。カイエンは成功するでしょうか? だって、BMWもX5を出すんですよ、と。
「彼らはわれわれの道ならしをしてくれている」という意味のことを言って、ニッコリほほ笑んだ。「レンジローバー」の兄弟車だった初代X5は大ヒットとなり、カイエンはホームランとなった。
8年後、X5より屋根は低めで値段は高め、これは絶対暴投でしょ、という巨大SUVクーペ、X6を世に問う。エコの時代に逆行する、この存在の耐えられない重さをもつクーペは、発売来、累計25万台以上が販売された。車両価格が1000万円前後の高級車がこれだけの数売れたのだから、BMWマーケティングの圧倒的勝利である。
さらにそれから5年後に現れたのがX4である。ベースとなった「X3」より、全高が50mm低められ、25mm全長を延ばして、ファストバックのルーフラインを実現した。2810mmのホイールベースはカットされていない。ちなみに、このホイールベースは、「グランツーリスモ」の2920mmを除く「3シリーズ」と「4シリーズ」に共通する。
実用性もなかなか
クーペデザインの明白な犠牲は、トランク容量である。X3の550~1610リッター(後席折り畳み時)から500~1400リッター(同)に減っている。とはいえ、クーペはそういうものだし、絶対的には十二分に広い。なにしろ後席を立てた状態で、ワゴンの「3シリーズツーリング」の495リッターを上回る容量がある。巧妙なルーフラインの恩恵で、少なくとも前席の頭上空間は狭苦しくない。ただし、リアガラスを通してみる世界はそうとう狭い。我慢を強いられるから伊達(だて)なのである。
日本仕様のパワートレインは、すでに3シリーズでおなじみの245psの2リッター直4ターボと306psの3リッター直6ターボの2本立てで、ギアボックスはパドル付きの8段スポーツオートマチックのみだ。「xDrive 28i」と呼ばれる前者は674万円、「xDrive 35i」と呼ばれる後者は763万円。それぞれに、Mスポーツ仕様の設定がある。xDriveは4WDのことで、電子制御式多板クラッチをもつ。
で、筆者は純白のX4 xDrive 28i Mスポーツで、東京はるか郊外までのドライブを敢行したわけである。自分ちに帰っただけですけど。首都高速も大変快適で、高架道路の目地段差もほとんど気にならなかった。燃費対策というべき「ドライビング・パフォーマンス・コントロール」は標準装備される。
245psにチューンされた2リッター直4ターボは、「コンフォート」モードでも十分な加速性能を発揮する。「スポーツ」にすると、アクセルレスポンスの鋭さが強調されすぎているきらいもあるように感じられた。単に慣れの問題かもしれないけれど、都内を走るのには「コンフォート」がピッタリだと思った。
乗ればやっぱりBMW
車重はセダンの1560kgより300㎏重いX3より、さらに10㎏重い。オプションの電動ガラスサンルーフ等を装備する試乗車の場合、1890kgとさらに重い。しかし、そういう重さは単独で乗っている限り、ほとんどわからない。BMWがこだわる前後重量配分は、940対950kgとむしろリアヘビーになっている。低速ではバリアブル・スポーツ・ステリングのおかげで、切れ味鋭い。
2リッター直4ターボは、回転を積み上げると緻密な、いかにもBMWっぽい精密機械を思わせるフィーリングがある。BMWなのだから当たり前である。「BMWっぽい」という表現はなにも言っていないに等しい。それでもなお、そう言いたくなる魅力がある。
一般道に降りると、工事中の路面があって、そこを通過すると、にわかに乗り心地が悪く感じられた。タイヤがでかいので、路面が荒れていると正直に凸凹を伝えてしまうのだろう。まして、かつてほどの悪名を誇らなくなったものの、タイヤはランフラットである。
翌朝、私はその白いX4を横浜方面へと走らせた。速度が上がると2次曲線を描くように、足まわりが硬く感じられた。オプションの「ダイナミック・ダンピング・コントロール」がついているのかしら、と疑ったけれど、試乗車にはついていなかった。1510mm、X3よりは50mm低められているとはいえ、絶対値としては高い車高ゆえに、高速安定性を確保するにはこれくらいの硬さが必要なのだろう。風切り音もよく抑えられている。
BMW 3シリーズは、あれやこれやの分身の術を使い、グランツーリスモや独立した4シリーズも入れると8車型にも広がった。これだけ多様になると、中には親不孝者も出てきそうだ。X4なんて、どうなのよ……、と試乗前は思ったけれど、やっぱりBMWっぽいのだった。それでは何も言っていないに等しい? 「駆けぬける歓び」があります。標語を書いているだけじゃないか、ですって?
BMWがエライのである。
(文=今尾直樹/写真=郡大二郎)
テスト車のデータ
BMW X4 xDrive28i Mスポーツ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4680×1900×1625mm
ホイールベース:2810mm
車重:1890kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 24バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:245ps(180kW)/5000rpm
最大トルク:35.7kgm(350Nm)/1250-4800rpm
タイヤ:(前)245/45R19 98Y/(後)275/40R19 101Y(ミシュラン・プライマシー3)
燃費:13.7km/リッター(JC08モード)
価格:705万円/テスト車=784万2000円
オプション装備:アドバンスド・アクティブ・セーフティー・パッケージ(18万5000円)/電動ガラスサンルーフ(17万5000円)/BMWコネクテッド・ドライブ・プレミアム(6万1000円)/アダプティブLEDヘッドライト(14万5000円)/ネバダレザーシート+フロントシートヒーティング(22万6000円)
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:4667km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(9)/山岳路(0)
テスト距離:176.2km
使用燃料:20.8リッター
参考燃費:8.5km/リッター(満タン法)/9.5km/リッター(車載燃費計計測値)

今尾 直樹
1960年岐阜県生まれ。1983年秋、就職活動中にCG誌で、「新雑誌創刊につき編集部員募集」を知り、郵送では間に合わなかったため、締め切り日に水道橋にあった二玄社まで履歴書を持参する。筆記試験の会場は忘れたけれど、監督官のひとりが下野康史さんで、もうひとりの見知らぬひとが鈴木正文さんだった。合格通知が届いたのは11月23日勤労感謝の日。あれからはや幾年。少年老い易く学成り難し。つづく。
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