MINIクーパーS 5ドア(FF/6AT)
スポーツ路線もいいけれど 2015.01.07 試乗記 注目すべきはユーティリティーだけにあらず。「MINIクーパーS 5ドア」の試乗を通して感じた、3ドアモデルにはない魅力と可能性とは?ドアの数が増えただけではない
「もっと早く出してくれればこっちにしたのに」と、MINIオーナーたちのうらやむ声が聞こえてきそうだ。なにしろ日本は、ドアの数もイスの数も多ければ多いほど良いという国。例えば「レンジローバー イヴォーク」も、ヨーロッパに行くとしばしば目にするあのカッコいい3ドアのクーペを選ぶ人は、ごくわずかだという。
でも最初から5ドアがあったら、特にこの国ではオリジナルの3ドアが売れなくなってしまうから、このタイミングでの登場はマーケティング的には妥当だ。
5ドアのグレードは当初「クーパー」と「クーパーS」の2タイプで、最近ベーシックな「ONE」が追加された。今回乗ったのはクーパーS。実車を目の前にして、さすがプレミアムブランドだと思った。オリジナルの3ドアを含めた他のMINIファミリーとの作り分けが絶妙だったからだ。
ただドアの枚数を増やしただけでなく、ホイールベースは70mm、全長は165mm延ばしててあり、後者は4mを超えた。全高も15mm高めてあるのだが、第一印象はやっぱり長さが目立つ。いまにして思えば、「クロスオーバー」はMINIらしいプロポーションを維持するために全方位的に拡大したんだと納得。こちらは全高が低めなままなのが効いている。
でもよく見れば、リアウィンドウの角度を3ドアより寝かせているので、バランスは悪くない。このあと登場するはずの次期「クラブマン」が、たぶん垂直に近い建て付けの観音開きリアゲートを継承してくるので、それとのすみ分けも考えたのだろうが、細部まで気を配った造形だと感心した。
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80kgの重量増もなんのその
キャビンは、前席まわりは3ドアと同じ。ということで小さなリアドアを開けて後席に座ると、そこはホイールベース延長の恩恵を受けて、少し広くなっていた。着座位置は前席より高めで、座面や背もたれの角度は絶妙。荷室も奥行きが明らかに増えている。その気になればファミリーカーも務まるだろう。
この後席、2人掛けの3ドアに対し、5ドアは3人掛けになっていることも特徴だ。ただセンタートンネルの後方に後席用カップホルダーが備わっていたので、中央席はエマージェンシー用として考えたほうがいいかもしれない。
最高出力192ps、最大トルク28.6kgmを発生する2リッター直列4気筒ターボエンジンは3ドアと同じ。ボディーは80kg重くなっているが、このサイズに2リッターターボは力が有り余っているという表現がピッタリ。いつどこでアクセルを踏んでも圧倒的なダッシュを披露してくれる。
3ドアの全グレードに乗った経験から言えば、80kg程度の重量増であれば、1.5リッターターボのクーパーはもちろん、1.2リッターターボのONEでも不満のない加速を示してくれるはずだ。
足まわりの感触も3ドアのクーパーSに似ていて、硬めの乗り心地も、鋭いステアリングレスポンスも、ほぼ同じだった。開口部が増えたことで、ボディーの剛性感が失われた印象もない。ただし操舵(そうだ)のあと、コーナーで車体が向きを変える際の動きは、全長とホイールベースの長さが関係しているのだろう、少しゆったりしていた。
注目すべきは「フォーマルさ」
もちろん同クラスの他の5ドアに比べれば、MINIならではのゴーカートフィールは堪能できる。でも、その面を極めたい人には3ドアのほうをオススメしたい。あちらは6段ATだけでなく6段MTが選べるということもあるけれど、そういうアドバイスをしておかないと、日本から2ドアや3ドアがなくなってしまいそうだから。
今のMINIにはクロスオーバーもあるから、ファミリー向けはあちらに任せ、5ドアはスポーツセダンっぽさを強調したのかもしれない。ただ、5ドアはSUVのクロスオーバーよりフォーマルな雰囲気を備えていることを忘れてはいけない。
そこで思い出したのが昔の「ADO16」。バンデン・プラやMGなど、当時のBMC(ブリティッシュ・モーター・コーポレーション)が擁していた多くのブランドで販売された、クラシックミニ(ADO15)の兄貴分だ。2ドアしかなかったクラシックミニに対して、こちらは4ドアもあった。
ADO16には「MG 1100」のようなスポーティーモデルもあったけれど、同時代のクーパーSに比べればはるかにおとなしかった。それよりもウォールナットとコノリーレザーを用いて、「ベビー・ロールス」と呼ばれた「バンプラ」こと「バンデン・プラ・プリンセス」のほうが有名だろう。
先代のMINI 3ドアをベースにロールス・ロイスのエッセンスを取り込んだ、現代版バンプラといえる限定モデルがあったけれど、あのようなモデルは間違いなく5ドアのほうが似合う。前回のような限定車ではなく、シリーズモデルとして用意すれば、MINIの新しい可能性を切りひらくのではないだろうか。
現行MINIの3ドアと5ドアの関係は、ADO15と16のそれを思わせる。だからこそ、スポーツ路線一辺倒ではない発展を期待したいのである。
(文=森口将之/写真=荒川正幸)
テスト車のデータ
MINIクーパーS 5ドア
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4015×1725×1445mm
ホイールベース:2565mm
車重:1320kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:192ps(141kW)/5000rpm
最大トルク:28.6kgm(280Nm)/1250-4600rpm
タイヤ:(前)205/40R18 86W/(後)205/40R18 86W(ピレリ・チントゥラートP7)
燃費:16.4km/リッター(JC08モード)
価格:350万円/テスト車=497万5000円
オプション装備:スポーツサスペンション(3万2000円)/ランフラットタイヤ(3万円)/18インチアロイホイール コーンスポーク ホワイト(17万1000円)/スポーツ・オートマチックトランスミッション(2万4000円)/John Cooper Worksレザーステアリング(5万1000円)/コンフォートアクセス・システム(4万5000円)/ホワイト・ボンネットストライプ(1万7000円)/クロムライン・インテリア(2万4000円)/ビジビリティー・パッケージ(3万9000円)/リアビューカメラ(3万9000円)/電動パノラマガラスサンルーフ(14万円)/ETC車載器システム内蔵自動防眩(ぼうげん)ルームミラー(6万9000円)/ストレージコンパートメント・パッケージ(2万6000円)/カラーライン/シャドーグレー(1万5000円)/MINIエキサイトメント・パッケージ(3万9000円)/MINIドライビングモード(4万4000円)/ライトパッケージ(2万4000円)/LEDヘッドライト アダプティブヘッドライト(2万4000円)/ドライビングアシスト(11万4000円)/パーキングアシスト・パッケージ(12万3000円)/ヘッドアップディスプレイ(5万8000円)/シートヒーター(4万5000円)/スポーツシート<レザー クロスパンチ、カーボンブラック>(22万3000円)/メタリックペイント/エレクトリックブルー(5万9000円)
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:1811km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(7)/山岳路(0)
テスト距離:115.3km
使用燃料:11.0リッター
参考燃費:10.5km/リッター(満タン法)/10.1km/リッター(車載燃費計計測値)
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森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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