第276回:スーパーカーで運転教室!? 「ランボルギーニ・ウインター・アカデミア」体験記
2015.02.16 エディターから一言2015年1月、カチカチに凍った女神湖の湖上で、ランボルギーニを使った“運転体験プログラム”が実施された。そんな環境でスーパーカーを走らせるのはなぜか? 会場では、どんなレッスンが行われたのか? イベントの内容を報告する。
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まるで映画のワンシーン
「うわ、スッゲー……」
集合場所に到着した参加者の口から、ため息が漏れる。
目の前に広がる、見事な雪景色。そこに最新のランボルギーニが、ずらりと並んでいるのだ。
「スノーリゾートにスーパーカー」なんて、まるで映画の『007』みたい……。これぞランボルギーニの運転体験プログラム、その名も「Lamborghini Winter Accademia(ランボルギーニ・ウインター・アカデミア)」の朝である。
同社は「ランボルギーニの運転ノウハウをドライバーに教えたい」「4WDスーパースポーツの魅力を伝えたい」との思いから、こうしたイベントを8年ほど続けている。ただ、日本国内で一般向けに開催されるのは、今回が初めて。会場には「良質な低ミュー路」として知られる、長野県・女神湖の凍結した湖上(!)が選ばれた。
参加するのに“猛牛の飼い主”である必要はない。世界的に開催地が限られるとあって(ほかには米コロラド州のアスペンと北イタリアのリヴィーニョ )、女神湖畔には、海外からも参加者がやってくる。実際、今回の日本ラウンドの一般参加者は、日本人12人に対して、外国人が18人。筆者は別途、報道関係者限定の取材日に、同じプログラムを体験することになった。
「今日一日で、しっかりスキルアップしてください」
ランボルギーニ・ウインター・アカデミアはまず、チーフインストラクターを務めるピーター・ミューラーさんのあいさつで始まった。その教官然としたたたずまいに、おのずと背筋がシャンとする。
“教習車”は、「ウラカンLP610-4」(4台)と「アヴェンタドールLP700-4ロードスター」(1台)。車両のスペックやインストラクター陣の紹介に続いて、各種ドライビングプログラムの手順とそのねらいが説明される。
「このランボルギーニ・ウインター・アカデミアで大事なのは、必ずしも速く走ることじゃない。クルマの限界を知ることが、とても重要なんです」と、ピーター氏。
見れば、メニュー項目のそこかしこに「Exercise」の文字がおどる。ジェームズ・ボンドの腕前になれるもなれないも、参加者の努力次第か……! いきおい、鼻息が荒くなる。
まずはランボの「振り回し方」から
プログラムは班ごとに分かれて実施される。各班1人のインストラクターに対して、生徒は2人だけ(この日は報道関係者の取材日につき、やや多めの3人)。少人数制の指導もランボルギーニのこだわりである。
最初のメニューは、「オーバーステア・エクササイズ」。クルマの横滑り=アブノーマルな動きに慣れる練習だ。
といっても、いきなりラリーやアクション映画のように、迫力のドリフト走行にトライしよう! というわけじゃない。10km/h程度の極低速でクルマを走らせては、パイロンを目印にUターン。これをひたすら繰り返すことにより、オーバーステアを体で理解するのだ。
具体的には?
(1)パイロンを回り込める位置までクルマを寄せ、ステアリングをイン側いっぱいに切る
(2)すかさずアクセルをふかし、クルマのテールをスライド(オーバーステアを発生)させて、向きを変える
(3)そのままスピンしてしまわないよう、アウト側にステアリングを切って(カウンターをあてて)、ターンを完了する
コツは(2)で強く、短くスロットルを開けること。(3)でカウンターを当てる際、軽くスロットルを開いて4輪に駆動力を伝えるのもポイントだ。
なんてエラソーに記しているが、これがなかなか難しい。なにせ相手は、610psのウラカンである。「ウォオッ!」と迫力の雄たけびが上がるや、ビビッて硬直してしま……わないよう、逆ハンドルを切り、しっかり前輪に駆動力を与えられれば、そこは四駆のランボルギーニ、オーバーステアはピタッとおさまってくれる。
「クルマの向きを変えるのはアクセル。その動きを止めるのもアクセル。ステアリングはもちろんですが、アクセルワークが要です」
とは、わが班のインストラクターを務めるラリードライバー 番場 彬さんの弁である。
番場さんは助手席に座り、乗り手に合ったアドバイスをしてくれる。「踏み込みが弱いですね」「怖がっちゃダメ」「カウンターをあてるのが遅い!」「最後のアクセルワークがお留守です」。ふぅ……。
そうしてUターンを続けること、50回以上。さすがに練習したという実感が持てる。カタチだけやってみて「はい、次の人」じゃないのは、うれしい。
■動画で見る「オーバーステア・エクササイズ」
乗って学んで、見て学ぶ
「でも、そんな低速のエクササイズじゃ物足りないな」という向きも、心配はご無用。続いては、より一般的な道に近い、外周路走行が実施される。
クルマは変わって、700psのアヴェンタドール。慎重に抑えて運転しているつもりでも、氷の直線路で50km/hは出る。コースには何カ所かきついカーブも設けられている。それこそオーバーステア・エクササイズの、成果の見せどころだ。
ところが、条件が変われば意識も変わる。カーブ手前の減速で、頭は真っ白。アクセルワークもちぐはぐに……。
クルマの動きを遠くから見守っていたのだろう、スタート地点に戻ってくると、ピーター教官が歩み寄ってきた。「ほら、肩に力が入ってるじゃないか。リラックス、リラックス!」
そこそこ雪道になじんできたら、次は定常円旋回に移る。ドリフトキープの状態で円形のリンクをぐるぐる回り続けるという、難易度の高そうなチャレンジだ。
実際、これは難しい(しかし、キマればカッコイイ)。
普通に周回している状態から、にわかにステアリングを切り増してアクセルオン。リアがアウトに流れたら、すかさずステアリングを戻しつつ、アクセルをオン、オン、オン!
それでドリフトし続けるはずだけれど、そう簡単にできやしない。セオリーとは裏腹に、ウラカンは外の雪壁へとはらむばかり。ますます体が硬くなる。
「思い出して。アクセルで向きを変えるんです」助手席の番場インストラクターも真剣だ。悪戦苦闘を続けるも、初トライはタイムオーバー。選手交代になってしまう。
とはいえ、他の人が運転している様子を見るのも大いに参考になる。フロントホイールの舵角(だかく)と排気音(=アクセルワーク)に注意しながら旋回の様子を観察していると、どうして外にはらむのか、なぜスピンしてしまうのかが、視覚的に推測できるのだ。
かくして2度目の定常円旋回。ようやく、番場さんから「いまのはいいですよ」の声が出た。傍らで見ていたピーターさんも「さっきよりマシになったぞ」。
「ただ、ステリングは動かしすぎだな。いいか、もっと抑えて、ストレート(ステア中立)な状態で回るんだ」
教える声も、次第に熱を帯びてくる。
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質も量もスペシャル
レッスンの後半は、サーキットラップ。練習の要素がすべて入った長めの雪上コースを、ウラカンで走る。ランボルギーニこだわりのイタリアンランチをはさんで、1kmのコースを8周と、1.5kmのコースを5周。
この日は昼間の気温が上がらず、特に午後からは、急速に路面が滑りやすくなってきた。
ブレーキングのたびにABSが利き、ラフに扱おうものなら車体は意図しない方向に向かおうとする。ストレートでの車速は、午前中のレッスンよりうんと高くなっている。コーナー手前では、集中して減速しないと……。
「ランボルギーニ・ウラカンは四輪駆動。普通のステリング操作でおとなしく運転している限り、問題はありません」と、番場さん。「ただ路肩のパイロンばかり見ていると、そちらに流れてしまいますよ。行きたい方向にしっかり目線をあわせて操縦するのが大事です」。
ブレーキにあわせて、シフトダウン。コーナーの進入では、オーバーステア・エクササイズを生かしてアクセルワークで向きを変え、カウンターのあともアクセルは残して――。
ちょっとほめられて気が緩んだか、途端にクルマが暴れだした。見せ場のコーナーでは、うまく姿勢が変えられない。続けざまに、ヘアピンでスピン。あれだけミッチリ習ったのに……!
悔しがる傍らで、しかし、番場インストラクターは笑顔だ。
「いろいろ身に付いたはずですけれど、これで“できた気”にならないほうが、スキル向上のためには、いいかもしれませんね(笑)」
さらなる仕上げのタイムアタック「ホットラップ」は、路面コンディション悪化のため、お預けになってしまった。でも物足りなさは感じられない。それもそのはず、気が付けばもう6時間ほどプログラムをこなしている。質はもちろん、ボリュームも相当なものだ。
そんなランボルギーニ・ウインター・アカデミアのメニューには、レッスン前日の豪華なウエルカムディナーと、リゾートホテルの宿泊も含まれる。
参加費は、40万円(税別)。決して安くはないけれど、それに見合った特別な体験ができる、またとない機会だとは思う。「自分もぜひ、猛牛でスキルアップを図りたい!」と思ったあなた。一度チャレンジしてみては……。
(文=webCG 関 顕也/写真=ランボルギーニ・ジャパン、webCG)
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関 顕也
webCG編集。1973年生まれ。2005年の東京モーターショー開催のときにwebCG編集部入り。車歴は「ホンダ・ビート」「ランチア・デルタHFインテグラーレ」「トライアンフ・ボンネビル」などで、子どもができてからは理想のファミリーカーを求めて迷走中。
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