第100回:ホンダS660α(前編)
2015.05.15 水野和敏的視点なかなか「わかっている」デザイン
今回の特集「水野和敏的視点」では、「ホンダS660」を取り上げます。久しぶりに登場する「軽」のスポーツカーとして、「ダイハツ・コペン」ともども、デビュー前からずいぶんと話題になっていました。
スポーツカーの存在する必要性とは何でしょう? 私は、実用車であるセダンやマルチパーパスなどに対して、2人しか乗れない、荷物も積めないなどの無駄を「自由」というキーワードに変え、「楽しさ、感動」といった感性の領域の心を創造するという、大切な存在意義があると思います。所有者の思いを受け止め、パートナー的な立場にまでなりうるのがスポーツカーという存在です。だからこそスポーツカーには実用車以上に所有者に対しての心の設計、いわば「もてなしや配慮」という思いやりの心が開発要素として大事なのではないのでしょうか。
一方でスポーツカーの販売状況は景気のバロメーターでもあります。販売される絶対的な台数は限られますが、ちょっと大げさに言えば、クルマ業界のみならず、見る人、乗る人、社会を元気づける存在ともいえましょう。
世界で日本人にしか作れない、日本のモノ作りの素晴らしさを象徴する「軽自動車」というカテゴリー、そして先に書きましたスポーツカーの存在する役割を考えた時に、今回のS660では指摘しなければならないこともあります。軽量小型な新顔スポーツカーの登場と開発に拍手を送りつつ、ちょっと厳しい評価となってしまっている点もあります。
まずスタイリング。これは頑張っていると思います。軽自動車の規格という限定されたサイズの中で、上手に前後のバランスを取って、ミドシップらしいプロポーションバランスとしているし、座席の後ろ、エンジンフードに二筋のコブをつけるヘッドフェアリングも、やや懐古調ですが、うまくディテールとしてこなしています。
フロア下端部からトランクリッド上面の高さまでの半分近くまでリアバンパーの上端線を上げ、さらにリアエンドの下半分を黒くすることにより、車両の下半身に視覚的な重量感を与える。ボディーカラーが塗られた上部の視覚的な配分を薄くすることで、全体の車高や安定感を低く見せる工夫がされています。軽規格はどうしても車幅が限られますから、何もしないと腰高に見えてしまうのですが、S660のリア処理は、この矛盾をうまく解いているデザインです。
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