第105回:トヨタ・ヴェルファイア ハイブリッド エグゼクティブラウンジ(後編)

2015.06.19 水野和敏的視点 水野 和敏

これも日本のお家芸

それではいざ、ヴェルファイア ハイブリッドの7人乗り豪華仕様・エグゼクティブラウンジで試乗のコースに出てみましょう。このクルマを運転すると、ハイブリッドシステムが単に燃費向上だけを目的として使われているのではないことがわかります。

全長が5mに達しようかという大柄なミニバンが、モーターの太いトルクで静かに走りだし、そしてあるところでガソリンエンジンが始動して、パワーを上乗せしてきます。そこには、ガソリンエンジンだけでは作れない上質さというものが感じられます。ハイブリッドシステムが、クルマのクラス感を変えているんです。

運転していて、まず痛感させられるのは、「こんなにすごいクルマは日本にしかない!」ということです。ユーザーの嗜好(しこう)を見極めて、「豪華ミニバン」というコンセプトに割り切り、そしてスムーズなハイブリッドシステムで走らせる――。ヨーロッパにもアメリカにもこんなクルマはないし、おそらく作れないでしょう。

欧州のミニバンの多くが「実用志向のピープルムーバー」に徹しているのに対し、ヴェルファイアのエグゼクティブラウンジ仕様は、室内空間を見事に「ラグジュアリー」に変えてしまっています。こんなことができるのは、おもてなしという価値観を持つ日本の自動車メーカーだけではないでしょうか。

関連記事
  • トヨタ・シエンタ ハイブリッドZ(FF/CVT)【試乗記】 2022.12.16 試乗記 GRやレクサスのスポーツカーやラグジュアリーカーも元気だが、やはりトヨタの本分は実用車だ。ことに新型「シエンタ」の仕上がりは秀逸で、7人乗車が可能な5ナンバーミニバンとして、まず間違いのない選択といえるだろう。
  • BYDドルフィン(FWD)【試乗記】 2023.9.2 試乗記 小型SUVの「ATTO 3」で日本市場に進出したBYDの次の一手は、小型ハッチバックの「DOLPHIN(ドルフィン)」だ。何とも愛らしい見た目ながら、走りにも内外装の質感にもほとんど隙がない。われわれは中国の新興メーカー発という考えを捨て、襟を正さなければならない。
  • 新型トヨタ・シエンタ 2022.8.24 画像・写真 トヨタがコンパクトミニバンの新型「トヨタ・シエンタ」を発表! 従来型から全面刷新された3代目は、どのような進化を遂げているのか? メーカーが「コンパクトなボディーにやさしさをいっぱい詰め込んだ一台」とうたうニューモデルの姿を、写真で紹介する。
  • 大胆な挑戦と圧巻の全方位戦略! 新型「センチュリー」に見るトヨタの強み 2023.9.22 デイリーコラム トヨタがSUVタイプの新型「センチュリー」を発表。既成概念にとらわれないニューモデルの登場と、ステージを飾った4モデルものショーファーカーが示すトヨタの“底力”とは? 大胆な提案と全方位戦略で顧客の期待を超えていく、今日のトヨタの強みを解説する。
  • 日産セレナe-POWER AUTECH(FF)【試乗記】 2023.9.12 試乗記 「GT-R」をはじめとした「NISMO」ロードカーが人気だが、大人の上質感を狙う「AUTECH」も忘れてはならない。ことに「日産セレナAUTECH」は、ミニバンがずらりと並ぶ休日のショッピングモールなどで個性をアピールするのにぴったり。走行性能も先代とは一線を画す仕上がりだ。
ホームへ戻る