スズキ・アルトラパンX(FF/CVT)/アルトラパンG(FF/5AT)
“うさぎ印”の是非を問う 2015.06.29 試乗記 唯一無二の魅力か? それとも購入をためらわせるハードルか? 女性比率9割という“うさぎ印”の軽乗用車、新型「スズキ・アルトラパン」に横浜で試乗。丸くて四角い3代目の実力と、伝統の「うさぎマーク」に対する世の反響(?)をチェックする。マークのことはひとまず忘れて……
「40過ぎの女がうさぎマークのついたクルマに乗るなんて、イタ過ぎでしょう!」
20~30代の女子を中心に、ユーザーの約9割を女性が占めるという「アルトラパン」。初代から2代目へと受け継がれたシンプルな箱型ボディーは、遠目から見ても“ラパン”とわかる特徴的なもので、個人的には好きな形でした。でも、唯一「買えないな」と思っていた理由が、初代から採用されている「うさぎマーク」。
2002年に初代が登場してから10年余り、ラパン女子たちは、年齢を重ね40~50代になっても、引き続きこのクルマに乗り続けることができるのでしょうか? 先代は「うさぎ小屋か!?」というほど、一台のなかに50匹ものうさぎをあちこちに飼っていたんですよ。そんなファンシーなクルマにイイオトナが乗るっていうのは、中高生の娘とおそろいのミニスカート履いて出掛けるぐらい、イタさ全開でしょう!?
エンブレムの「うさぎマーク」の件はいったん忘れ、それ以外のデザインに目を向けていきます。エクステリアは、角張ったデザインが特徴的だった先代に比べ、パンのようにふっくらした、スズキいわく「まる しかくい」フォルム。「ずいぶん丸くなったなぁ」とも感じますが、真横から見ると四角いフォルムは健在で、しっかり“ラパンしている”んですよね。ヘッドランプと一体感を持たせたシルバーのグリルも、上品で好感が持てます。ブラウンとネイビーという2色のモールで“裾まわり”をモールディングしたり、ホイールを花のモチーフでドレスアップしたり、洋服をコーディネートするようにカラーやパーツを選べるのも、自分だけのおしゃれにこだわる女子にはうれしい工夫です。
ドアを開けると、明るいベージュのインテリアに気分も上々。キルティング加工風の天井や、「まる しかくい」エアコンの吹き出し口、ナチュラルな木目調のテーブルもオシャレ。中央のタッチパネル式モニターは画面が大きく操作もしやすいし、運転席からはしっかりとフロント左右角が見下ろせ、見切りがいいのもポイント高いです。
中でも、私のイチオシ装備は、スピードメーター。トンネル内でライトを点灯させると、白い文字盤がキラッと光るなか、数字が浮き上がって見えて、とってもキレイ! 聞けば、通常、文字盤とガラス面のみで構成されているところに、数字を印字したガラスを1枚挟むことで、文字盤を立体的に見せているのだとか。こういう細かい仕掛けに、女子はときめいちゃうんですよね~。
激しく気にしていた「うさぎマーク」はというと、新型ではかなり数が抑えられ、インテリアで目につくところはメーター内程度と控えめになっていました。これなら、エンブレムさえなんとかなれば、オーバー40でも恥ずかしくなく乗れるかも?
トランスミッションは5AGSがおすすめ
かわいい系軽のラパンでは、ユーザーのほとんどがCVT仕様を選ぶのでしょう。でも私は、断然「5AGS」(5段オートギアシフト)仕様をおすすめします。スズキのAGSは不快なギクシャク感がなく、デキがいいことに加え、1台で2通りの楽しみ方ができるんです。ドライブモードにすればCVTと遜色ないほど滑らかに加速していきますし、マニュアルモードにすれば、ギアチェンジの度に音や加速の変化が楽しめ、操作のダイレクト感や疾走感が味わえます。同じFF車で比べると、CVT仕様より車重が30kg軽いこともあって、走りは軽快そのもの。例えるなら、かわいいのにすばしこい、野うさぎタイプですね。低価格な「G」グレードのみに採用されているので、エアコンがマニュアル式になったり、タッチパネル式のモニターが選べなかったりという違いはありますが、私なら迷わず5AGSを選びますね。
一方CVT仕様はというと、穏やかでシームレスな加速と燃費の良さが魅力。ふわんとしたソフトな乗り心地で、とってもよく走ってくれます。アクセルを全開にすれば、それなりにエンジン音が大きくはなるものの、ほとんど気にならないレベル。アイドリングストップ時の挙動も自然だし、ステアリングは安定していて、左右に切ると穏やかにロールする感覚も心地よい、癒やし系の走りです。
ちなみに、高速道路8割、一般道2割程度で合計20km走ったところ、平均燃費は17.8km/リッターでした。高速道路ではかなりアクセルを踏み込んで走った結果のこの燃費ですから、「エネチャージ」をフルに活用して一般道を走るとすれば、燃費はもっとよくなるはずですね。ご参考までに。
優しい走りのCVT、アグレッシブな走りも得意な5AGS、アナタならどちらを選びますか?
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
40を過ぎても“LAPIN”はOKか?
冒頭で触れた、“40を過ぎても「うさぎマーク」のクルマに乗れるのか?”問題について、私以外のオーバー40な女子たちは一体どう感じるのか、こぢんまりと緊急アンケートをとってみました。
うさぎ好きライターAさんは「色さえ選べば、40代でも余裕で乗れるよ! うさぎマークもやりすぎてないし、さりげなくうさぎ好きが主張できて、いい感じ。71歳の母にも教えてあげよう」と好意的に受け止めた様子。編集者Wさんは、悟りの境地でこうおっしゃる。「40を過ぎてからは『私らしくないから無理!』というのがなくなったね。かわいいし乗れなくはないかな~」 そんなポジティブな反応がある一方、化粧品会社勤務Oさんからは「かわいいけど、私のような熟女には、もっとエロいクルマじゃないと!」との辛口意見が。さらに、思わぬツッコミを入れてくれたのが「クルマを買うなら『MINI』」という空間デザイナーのSさん。「なんでうさぎなの? 人によって『私は猫派』とか『犬派!』とか、動物キャラには好き嫌いもあるでしょう?」 確かに。さらに彼女の指摘はつづき、「とにかく、最初にコンセプトをうさぎにしようって決めた会議からやり直そうよ!」ときました。これまでに64万1000台を販売していますが、もしかして違う動物だったら、もっと売れていた!? 最後に男性の意見として編集者Yさんから一言。「うさぎの存在を知っちゃうと一気に女子グルマ度が上がるよね。クルマそのものは『日産キューブ』みたいにMONO感あっていいけど」と、うさぎの存在は少々気になる様子。
というわけで、私と同世代となる40代前半の女子+男子に意見を聞いた結果、意見は5者5様で、「うさぎマーク」のクルマに乗れるか、乗れないかは、おそらく年齢の問題ではなく、個人の好みによるのではないかという結果になりました。うさぎマーク容認派のみなさま、冒頭での「イタい!」発言、どうもすいませんでした。
個人的には、「うさぎマーク」には抵抗があり、もし購入した場合はエンブレムを気合で剝がすしかない、と思ったりもしますが(笑)、実際に見たり乗ったりしてみると、冒頭のように激しくほえたくなる気分は、おさまってしまったんですよね。
というのも、ラパンって気分がゆるふわっと女の子気分になれるんですよ。私のように、徒歩圏内はすっぴんで歩き回り、今にもヒゲが生えてきそうな生活をしているオッサン女子には、手っ取り早く女らしさを取り戻せる、女性ホルモンに似た効果が期待できそうです。それに、全体に丸く膨らんだフォルムも甘すぎず、「うさぎマーク」が気にならないのであれば、男性でも乗れそうなデザインでもあります。気に入った人なら、20代の男子でも、オーバー70のおばあちゃまでも、かわいくオシャレに乗りこなせてしまうのではないでしょうか。
あくまでも「うさぎマーク」は圏外を決め込む私ではありますが(笑)、家族が購入した場合は喜んで乗らせていただきます!
(文=スーザン史子/写真=荒川正幸)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
スズキ・アルトラパンX
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3395×1475×1525mm
ホイールベース:2460mm
車重:680kg
駆動方式:FF
エンジン:0.66リッター直3 DOHC 12バルブ
トランスミッション:CVT
最高出力:52ps(38kW)/6500rpm
最大トルク:6.4kgm(63Nm)/4000rpm
タイヤ:(前)165/55R14 75S/(後)165/55R14 75S(ダンロップ・エナセーブEC300+)
燃費:35.6km/リッター(JC08モード)
価格:138万9960円/テスト車=159万3918円
オプション装備:ホワイト2トーンルーフ(4万3200円)/全方位モニター付きメモリーナビゲーション(11万8800円)/※以下、販売店オプション フロアマット(2万142円)/ETC車載器(2万1816円)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
拡大 |
スズキ・アルトラパンG
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3395×1475×1525mm
ホイールベース:2460mm
車重:650kg
駆動方式:FF
エンジン:0.66リッター直3 DOHC 12バルブ
トランスミッション:5AT
最高出力:52ps(38kW)/6500rpm
最大トルク:6.4kgm(63Nm)/4000rpm
タイヤ:(前)155/65R14 75S/(後)155/65R14 75S(ブリヂストン・エコピアEP150)
燃費:29.6km/リッター(JC08モード)
価格:107万7840円/テスト車=111万9798円
オプション装備:※以下、販売店オプション フロアマット(2万142円)/ETC車載器(2万1816円)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

スーザン史子
-
日産エクストレイルNISMOアドバンストパッケージe-4ORCE(4WD)【試乗記】 2025.12.3 「日産エクストレイル」に追加設定された「NISMO」は、専用のアイテムでコーディネートしたスポーティーな内外装と、レース由来の技術を用いて磨きをかけたホットな走りがセリングポイント。モータースポーツ直系ブランドが手がけた走りの印象を報告する。
-
アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.12.2 「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。
-
ドゥカティXディアベルV4(6MT)【レビュー】 2025.12.1 ドゥカティから新型クルーザー「XディアベルV4」が登場。スーパースポーツ由来のV4エンジンを得たボローニャの“悪魔(DIAVEL)”は、いかなるマシンに仕上がっているのか? スポーティーで優雅でフレンドリーな、多面的な魅力をリポートする。
-
ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.29 「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。建て付けとしては「ウラカン」の後継ということになるが、アクセルを踏み込んでみれば、そういう枠組みを大きく超えた存在であることが即座に分かる。ランボルギーニが切り開いた未来は、これまで誰も見たことのない世界だ。
-
アルピーヌA110アニバーサリー/A110 GTS/A110 R70【試乗記】 2025.11.27 ライトウェイトスポーツカーの金字塔である「アルピーヌA110」の生産終了が発表された。残された時間が短ければ、台数(生産枠)も少ない。記事を読み終えた方は、金策に走るなり、奥方を説き伏せるなりと、速やかに行動していただければ幸いである。
-
NEW
トヨタ・アクアZ(FF/CVT)【試乗記】
2025.12.6試乗記マイナーチェンジした「トヨタ・アクア」はフロントデザインがガラリと変わり、“小さなプリウス風”に生まれ変わった。機能や装備面も強化され、まさにトヨタらしいかゆいところに手が届く進化を遂げている。最上級グレード「Z」の仕上がりをリポートする。 -
NEW
レクサスLFAコンセプト
2025.12.5画像・写真トヨタ自動車が、BEVスポーツカーの新たなコンセプトモデル「レクサスLFAコンセプト」を世界初公開。2025年12月5日に開催された発表会での、展示車両の姿を写真で紹介する。 -
NEW
トヨタGR GT/GR GT3
2025.12.5画像・写真2025年12月5日、TOYOTA GAZOO Racingが開発を進める新型スーパースポーツモデル「GR GT」と、同モデルをベースとする競技用マシン「GR GT3」が世界初公開された。発表会場における展示車両の外装・内装を写真で紹介する。 -
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット―
2025.12.5デイリーコラムハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。 -
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。




































