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BMW 218dアクティブツアラー ラグジュアリー(FF/8AT)

マジメの一歩 2015.07.17 試乗記 山田 弘樹 2リッターのディーゼルターボユニットを搭載する「BMW 218dアクティブツアラー」に試乗。BMWブランド初のFFモデルはディーゼルエンジンを得て、どのような魅力を手にしたのだろうか。

“エンジン屋”の面目躍如

ここ数年にわたり、全てのジャンルを網羅するかのように増殖し続けるBMWの車種バリエーションに、筆者は完全に混乱していた。

そこにきて、駆動方式が違うにもかかわらず同じ「2シリーズ」を名乗る“ツアラー”系が登場し、さらに混乱。筆者的には「Fシリーズ」なんて名前にすればいいのにな……と思ったけれど(前輪駆動を意味するFWDとFamilyをかけてみた)、ともかくここまで幕の内弁当のような「なんでもありまっせ」的な展開をされると、今なお輸入車を“舶来モノ”としてありがたがり、ワクワクしてしまう庶民派の筆者は、それを没個性と取るべきか喜ぶべきか、どうしていいかわからなくなってしまう。

でも、そんな混乱の中でも常に注目すべきはクルマ本来のデキの良しあしであり、それが筆者の背筋をピシャリと正してくれる。218d アクティブツアラーは、なんで排気量が2リッターなのに車名は218なの? とかめんどくさい話は抜きにして、素直に“乗っていいクルマ”であった。

マツダのSKYACTIV-Dが日本市場を開拓したせいか、ここにきて欧州各社が一気に直噴ディーゼル搭載モデルを展開してきた。こうなるとディーゼルエンジンにさえ、それぞれの個性が垣間見えるようになるから面白いのだが、やはり“バイエルンのエンジン屋”はそこで違いを見せつけてきた。

車名は「218d」だが排気量は2リッター。発売は2015年5月20日。試乗した「ラグジュアリー」のほか、標準と「Mスポーツ」の3仕様がある。
車名は「218d」だが排気量は2リッター。発売は2015年5月20日。試乗した「ラグジュアリー」のほか、標準と「Mスポーツ」の3仕様がある。 拡大
BMWの新世代ディーゼル、B47型ユニット。パワースペックは150psと33.7kgm。JC08モード燃費は22.2km/リッター。
BMWの新世代ディーゼル、B47型ユニット。パワースペックは150psと33.7kgm。JC08モード燃費は22.2km/リッター。 拡大
インテリアはBMWらしい高品質な仕上がり。センターパネルはドライバーに向けてわずかに角度が付けられている。
インテリアはBMWらしい高品質な仕上がり。センターパネルはドライバーに向けてわずかに角度が付けられている。 拡大
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大人っぽい運転を誘う

2リッターのディーゼルターボユニットは、「3シリーズ」に搭載されるN47型より世代が新しいB47型となっており、3シリーズの184psと38.7kgmよりも控えめな150psと33.7kgmを生み出す。しかし車重は1500kgと「320d セダン」と比べて50kgほど軽いおかげか、そんな出力差をまったく意識させずにスイスイ走る。むしろ3シリーズよりも、軽快さが際立っている。

そんな印象は、BMW初のミニバンとしてのキャラクターも大いに関係しているように思う。セダンやツーリング(ワゴン)なら、乗っている間に一度は床までアクセルペダルを踏み倒したくなるのが人情で、そうなるとディーゼルターボの低回転特性に不満を覚えて「やっぱ、回すならガソリンエンジンだよな」なんて講釈をたれるわけだが、アクティブツアラーに乗ると、そんな運転は自然としなくなるのである。

きっと見晴らしのよい、高めの着座位置がそうさせるのだろう。いたずらに横Gをかけて走れば、自分も傾くことになる。だから、ゆっくりとステアリングを操作して、カーブを先読みしながらクルマをロールさせるようになり、アクセラレーションも断続的ではなく、連続的にジワーっと行うようになる。

結果として、街中や高速道路の流れにそつなく乗り、そこから飛び出たいときだけ、アクセル開度を少しだけ増やして加速するという、大人びた運転をするようになるのだ。ま、ミニバンでカッ飛んでも仕方ないですし……なんて思いながら。

「ラグジュアリー」ラインではパーフォレーテッドと称する穴あきの「ダコタ・レザー・シート」が標準。インテリア色はブラック。
「ラグジュアリー」ラインではパーフォレーテッドと称する穴あきの「ダコタ・レザー・シート」が標準。インテリア色はブラック。 拡大
リアシートは前後に130mmのスライドが可能。
リアシートは前後に130mmのスライドが可能。 拡大
ラゲッジルームの容量は398~1510リッター(VDA方式)。後席の背もたれは40:20:40分割で倒せるほか、-1.5度から+28.5度まで3段階にリクライン調節ができる。
ラゲッジルームの容量は398~1510リッター(VDA方式)。後席の背もたれは40:20:40分割で倒せるほか、-1.5度から+28.5度まで3段階にリクライン調節ができる。 拡大

ナチュラルさが心地よい

そして、そんな走り方をすると、このエンジンは速いのだ。浅めのアクセル開度に対してもブーストのかかり方が実にスマートで、ターボラグも小さいから、加速時にのけぞるようなピッチ変動が起こらず、しかし速度は確実に上がっていく。そして静粛性もかなり高いから、ちょっといいエンジンに乗っている気分になる。もちろん、全開加速自体も不満はないけれど。

ATは8段もあるから、正直、シフトパドルが欲しかったが、アクセル操作によるキックダウンも素早いから、機械任せで走ってもさして不満はない。オーナーになればそんな運転にもすぐに慣れるだろう。その際も、いちいち頭で段数を考えずとも、体感で必要なトルクを維持するようにシフト操作をすれば、自然に走れるはずである。トルクフルなエンジンゆえにできる芸当だが、それは退屈とか、ずぼらとかとは違う。ナチュラルである。

そしてこのエンジンに、このFFシャシーはかなりハマッている。
硬めのランフラットタイヤを考慮してか試乗車のサスペンションはソフトで、ちょっとステアリングを切った領域の反応が過敏。FFの割に直進安定性が弱い気もするのだが(それもBMWらしさか?)、まずとにかくタイヤが転がる。タイヤそのものの転がり抵抗以外にも、駆動系のフリクションが少ないようで、それが気持ち良い。そしてカーブでは、タイヤの接地感が増してくると、ステアリングにじんわりとした重みが加わる。

その走りには、E36時代の3シリーズに通じる、素朴ながらも質感の高いフィールが重なる。ここにディーゼルエンジンの穏やか、かつ分厚いトルク特性が組み合わさると、ちょっとうれしくなってくる。

「218d」の動力性能は0-100km/h加速が8.9秒、最高速が210km/h(欧州仕様車の場合)。
「218d」の動力性能は0-100km/h加速が8.9秒、最高速が210km/h(欧州仕様車の場合)。 拡大
左が速度計で、右がエンジン回転計。ディーゼルらしく回転計のレッドゾーンは5400rpmからと低い。
左が速度計で、右がエンジン回転計。ディーゼルらしく回転計のレッドゾーンは5400rpmからと低い。 拡大
標準タイヤサイズは205/60R16。試乗車のタイヤはオプションの205/55R17。
標準タイヤサイズは205/60R16。試乗車のタイヤはオプションの205/55R17。 拡大
 
BMW 218dアクティブツアラー ラグジュアリー(FF/8AT)【試乗記】の画像 拡大

オーソドックスなまとまり

BMWの良さはFRのハンドリングにあると信じて疑わなかったけれど、どうやらそれだけではないらしい。

思うに、BMWブランド初のFFモデルとして、2シリーズ アクティブツアラーはかなり慎重かつコンサバティブに作られたのではないだろうか。ある種、極めた感のあるFRモデルでは、オーソドックスな味わいよりもその時代における新しさの演出や、場合によっては“軽薄さ”をもってそのハンドリングを他と差別化しなければならなかったけれど、FFではまだ市場の反応を探っている状態なのではないか、と感じた。そしてここに、「MINI」で培った技術が生かされていることはいうまでもない。

ちなみに、これのロングホイールベース版に当たる「218d グランツアラー」に別の機会に試乗したが、アクティブツアラーでは気になった直進安定性が高められていた。また「Mスポーツ」仕様の足まわりはランフラットタイヤの剛性にベストマッチで、従来の“Mスポ”からは考えられない素晴らしい乗り味を披露してくれた。

この傾向はMINIにも感じられることで、実は3ドアより5ドアの方が優れた直進安定性と、自然なコーナリングフィールを持っている。ただ、それもテイストとして片付けられる範疇(はんちゅう)にあり、操縦安定性を大きく左右するところまでは踏み込んではいない。だからこそ、ショートホイールベースの2シリーズは「アクティブ」ツアラーなのだろう。

つまりは、BMWがミニバンを作ると、こうなるのである。

(文=山田弘樹/写真=荒川正幸)

サスペンション形式はMINIと同様に、フロントがマクファーソンストラット、リアがマルチリンクとなる。
サスペンション形式はMINIと同様に、フロントがマクファーソンストラット、リアがマルチリンクとなる。 拡大
走行モード切り替え(ドライビング・パフォーマンス・コントロール)はセンターパネルのスイッチで行う。「コンフォート」「ECO PRO」「スポーツ」の3モードの設定。
走行モード切り替え(ドライビング・パフォーマンス・コントロール)はセンターパネルのスイッチで行う。「コンフォート」「ECO PRO」「スポーツ」の3モードの設定。 拡大
安全性能を強化するセットオプション「アドバンスド・アクティブ・セーフティ・パッケージ」を選択すると、コンバイナ型のヘッドアップディスプレイが装着される。
安全性能を強化するセットオプション「アドバンスド・アクティブ・セーフティ・パッケージ」を選択すると、コンバイナ型のヘッドアップディスプレイが装着される。 拡大
 
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テスト車のデータ

BMW 218dアクティブツアラー ラグジュアリー

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4350×1800×1550mm
ホイールベース:2670mm
車重:1500kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:150ps(110kW)/4000rpm
最大トルク:33.7kgm(330Nm)/1750-2750rpm
タイヤ:(前)205/55R17 91W/(後)205/55R17 91W(ブリヂストン・トランザT001 RFT<ランフラットタイヤ>)
燃費:22.2km/リッター(JC08モード)
価格:402万円/テスト車=474万7000円
オプション装備:ルーフ・レール(4万6000円)/ファインライン・ショアー・ウッド・トリム パール・グロス・クローム・ハイライト(3万円)/アドバンスド・アクティブ・セーフティ・パッケージ(13万円)/17インチ マルチスポーク・スタイリング 481アロイ・ホイール(9万2000円)/コンフォート・パッケージ(14万4000円)/アドバンスド・パーキング・サポート・パッケージ(14万7000円)/BMWコネクテッド・ドライブ・プレミアム(6万1000円)/メタリック・ペイント(7万7000円)

テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:2109km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(8)/山岳路(0)
テスト距離:319.9km
使用燃料:19.9リッター
参考燃費:16.1km/リッター(満タン法)/14.7km/リッター(車載燃費計計測値)

 

BMW 218dアクティブツアラー ラグジュアリー
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山田 弘樹

山田 弘樹

ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦経験をもつ、実践派のモータージャーナリスト。動力性能や運動性能、およびそれに関連するメカニズムの批評を得意とする。愛車は1995年式「ポルシェ911カレラ」と1986年式の「トヨタ・スプリンター トレノ」(AE86)。

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