フォルクスワーゲン・パサートヴァリアントTSI Rライン(FF/7AT)/パサートTSIハイライン(FF/7AT)
控えめ、やめました 2015.07.16 試乗記 フルモデルチェンジを受けた「フォルクスワーゲン・パサート」に試乗。安全性から実用性、快適性、走り、そして環境性能まで、全方位的に進化したというミドルサイズ“ワーゲン”のゴキゲン具合やいかに? 試乗会からの第一報。まずは1.4ガソリンターボから
試乗会の技術プレゼンテーションに登壇したフォルクスワーゲン(VW)広報マン氏の第一声は、「みなさん、ゴキゲンですかー!」だったのに、あとで同じ人にパサートの直近の販売台数を訊(たず)ねたら、「ドキッ……」と言った。
新型パサートは、今度こそなんとしても日本市場で拡販を図りたいミドルクラスVWである。大攻勢に出ているメルセデスに対して、今年導入されるVWの大型ニューカマーはこの8代目パサートだけ。これから半年足らずの2015年内で7000~8000台に置いた目標販売台数は、2014年トータルの2倍に近い。
開発コード“B8”は、VWとしては現行「ゴルフ」初出の次世代プラットフォーム“MQB”でつくられる初めてのパサートである。ボディー外寸は先代とほぼ同じだが、ホイールベースは8cm延びた。ボディー全長を変えずに、ホイールベースのみをこれだけ延ばせるところが、MQB戦略の妙なのだろう。
日本では、2016年がVWのクリーンディーゼル元年になるはずで、その皮切りがパサートである。しかし今回の初荷は、1.4リッター4気筒ターボのみ。気筒休止システムやアイドリングストップ機構を備える最新の直噴ユニットが搭載される。
1台65分の試乗枠で、セダンとヴァリアントにチョイ乗りしてみた。
パワーもクオリティーも申し分なし
試乗したヴァリアントはRライン(480万9700円)。スポーティーなエクステリアとインテリアを与えたモデルである。
その専用エアロパーツを差し引いて見ても、新型パサートのスタイリングはかなりアグレッシブである。ワルター・デ・シルヴァの“顔”は、両サイドの隅切りがさらに深くなり、真正面からは全幅いっぱいに水平ラインを強調したフロントグリルが目立つ。「控えめ、やめました」という感じだ。
走りだすと、新しい1.4リッターターボがまず好印象である。このエンジンは「ゴルフ ハイライン」用と基本的に同じだが、パサートでは10psアップの150psにチューンされている。1530kgの車重に対して、パワーは申し分ない、というか、むしろ快速だ。全長4.8m近い堂々たる体躯(たいく)のステーションワゴンが、たったの1.4リッターでこれだけ走るのだから痛快だ。エンジンの回転フィールや、7段DSGの変速マナーなど、パワーユニット全体のクオリティー感も高い。
もともとパサートヴァリアントは荷室の広さに定評があるが、新型はさらに容量が603リッターから650リッターに増えた。VWの調べによると、「メルセデス・ベンツCクラス」のワゴンが470リッター、「BMW 3シリーズ」のワゴンが495リッターだという。
ワゴンとしての使い勝手もアップデートされ、荷室側壁にはリアシートの背もたれをワンタッチでパタンと前に倒せるレバーが新設された。電動テールゲートのハイラインには、リアバンパーの下で足を動かすとノータッチでテールゲートを開けられるイージーオープン機能も備わる。
乗り心地ならハイライン
ドイツ車に乗りたいが、目立ちたくはないという人が選ぶ実用的なFFセダン。パサートにはそんなイメージを抱いていたのだが、近年、日本のパサートはヴァリアントが8割を占めているそうだ。
だが、今度のモデルチェンジでセダンがきれいになった。ドアハンドルをサイドのプレスライン上に乗せた新デザインも、セダンだとその意図するところがよりわかりやすい。
試乗したセダンは「ハイライン」(414万円)。ちなみに、同一グレードでのヴァリアントとの価格差は19万9900円。分母がこれくらいだと、ツブシのきくワゴンについ手が伸びるということもあるだろう。
だが、セダンもトランクの大きさが自慢のタネである。奥行きは110cmと、ヴァリアントの平常時(後席使用時)のサイズに肉薄するし、横幅はヴァリアントより広い。
ヴァリアントから乗り換えて、すぐに気づいたのは、17インチホイールのセダンは乗り心地がいいこと。荷重増加に備えてヴァリアントのほうが多少、脚は硬めだろうが、それよりもRラインのヴァリアントの試乗車が追加オプションの19インチホイールを装着していたことが大きそうだ。カッコはいいが、乗り心地にいいことはなかった。
パワーユニットは同じだから、そっち方面でとくに付け加えることはない。セダンはヴァリアントより50kg軽量で、快速にいっそう磨きがかかっているはずだ。
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セダンのトレンドラインが一番ゴキゲン?
この日乗ったのは、セダンはハイラインでヴァリアントは最上級グレードのRラインだったが、新型のニュースは、これまでなかった「トレンドライン」がベースグレードとして設定されたことだ。「コンフォートライン」を含めた4グレード構成で、選択の間口が広がったわけだ。
トレンドラインはホイールが16インチのスチール+ホイールキャップになり、エアコンがオートからマニュアルに変わり、そのほか、パドルシフト、スマートエントリーシステム、フォグランプなどが省かれる。
一方、気筒休止機構を持つ1.4リッターターボ+7段DSGのパワーユニットはトレンドラインでも変わらず、自動ブレーキ、アクティブクルーズコントロール、レーンキープアシストといった安全装備や運転支援システムも、上級グレードとまったく差がない。329万円のセダン トレンドラインが、新型パサートの最廉価モデルである。
ゴルフよりだいぶデッカイ4ドアボディーをゴルフのエンジンで走らせる、ゴルフ ハイライン(322万2000円)とほとんど値段の変わらないセダン トレンドラインが新型パサートのなかでいちばんゴキゲンかもしれない。
(文=下野康史<かばたやすし>/写真=藤井元輔)
テスト車のデータ
フォルクスワーゲン・パサートヴァリアントTSI Rライン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4775×1830×1510mm
ホイールベース:2790mm
車重:1530kg
駆動方式:FF
エンジン:1.4リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:150ps(110kW)/5000-6000rpm
最大トルク:25.5kgm(250Nm)/1500-3500rpm
タイヤ:(前)235/40ZR19 96Y/(後)235/40ZR19 96Y(ミシュラン・パイロット スーパースポーツ)
燃費:20.4km/リッター(JC08モード)
価格:480万9700円/テスト車=528万4900円
オプション装備:LEDヘッドライト(16万2000円)/電動パノラマスライディングルーフ(15万1200円)/19インチホイールセット(16万2000円)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:1174km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
フォルクスワーゲン・パサートTSIハイライン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4785×1830×1470mm
ホイールベース:2790mm
車重:1480kg
駆動方式:FF
エンジン:1.4リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:150ps(110kW)/5000-6000rpm
最大トルク:25.5kgm(250Nm)/1500-3500rpm
タイヤ:(前)215/55R17 94W/(後)215/55R17 94W(コンチネンタル・コンチプレミアムコンタクト5)
燃費:20.4km/リッター(JC08モード)
価格:414万円/テスト車=443万1600円
オプション装備:LEDヘッドライト(16万2000円)/電動ガラススライディングルーフ(12万9600円)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:1556km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
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