三菱アウトランダー24G Navi-Package(4WD/CVT)
円熟の境地へ 2015.07.30 試乗記 大規模な改良を受けた「三菱アウトランダー」に試乗。新しいフロントデザインを得た新型は、併せて静粛性や乗り心地も洗練され、ガソリンエンジン搭載のSUVとして“円熟の境地”に達していた。乗り心地が洗練された
えーっ! もうモデルチェンジ? と思われるかもしれない。確かにイメージ的には、この形になってそれほど日がたっていないように思う。従来型のガソリン仕様がデビューしたのが2012年10月のこと。続く同年12月に「PHEV」の追加があって、そちらの存在感があまりにも大きく、あたかもあれがアウトランダーを代表する車種のようにも思われ、話題をさらわれてしまった観もある。特に電気モーターによる振動のない滑らかさなど乗り心地や静粛性、品質感の上級化など、クルマ全体の洗練度に関しては大きく前進していた。となるとエンジニアの立場としては、同じ車種のガソリンエンジン版です、と言いづらいものがあったのではないだろうか。
そんな経緯は知る由もないが、大規模な改良を受けた今度の新型アウトランダー(ガソリンエンジン仕様)は、SUVのボディー形状から想像する以上に洗練された乗り物に仕上がっていた。元をたどれば一時代前からの申し送り部分も残っていたようで、その辺も徹底的に見直された。どこのメーカーもモデルチェンジのたびにうたうボディー剛性の強化はもちろん、サスペンション入力を受け止める部分の強化も併せて実施されており、225/55R18サイズの大径タイヤのバネ下荷重をきっちりと受け止める。
ただし、まだサスペンションそのもののチューニングは完璧とはいいがたく、U字溝のふたなどを通過するときの単発大入力においてはやや大げさな反応を示す。一方で、連続する小刻みな波動のような動きは、気にならない範囲に収められていた。こういった点については、今回改良されてダンパーシリンダーの径を上げて容量を増やしたリアについては大きな進歩があり、ついでにフロントも同じようにやってほしかったところだ。
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静かで滑らか
静粛性については、吸音材や遮音材やダイナミックダンパーの追加などにより、ロードノイズやエンジン騒音の類いを効果的に軽減している。また、こういったワゴン形状のボディーにありがちな車内にこもるような音も、気にならない範囲に処理されている。総じて静粛なクルマといえる。
パワーステアリング関連では、ギア比はクイック過ぎず操舵(そうだ)力も軽すぎず適度な範囲にあるが、エアバッグをはじめ、いろいろなスイッチ類が付加されたステアリングホイールそのものの重量による慣性モーメントが大きすぎ、復元性も含めて操舵フィールとしてもう少しサラーっとしたフリクション感の少ないものを期待したい。グリップは太く、これはステアリングにしがみつきたい現代人の好みに合わせたものなのかもしれない。
エンジンやギアボックスなど駆動系も改良された。搭載されるエンジンは4気筒SOHC 16バルブで、2リッター150psと2.4リッター169psの2種。CVTは6段固定のスポーツモードを持つ新世代に移行しており、エンジンと協調制御される。燃費はFF仕様で0.8km/リッター向上して16.0km/リッター、4WD仕様で0.2km/リッター向上して14.6km/リッターとなった(すべてJC08モード値)。
パドルシフトできるATは、エンジンブレーキを使いやすい設定だ。1560kgと軽くないボディー重量ながら、3速以下に落とせる状況ならばエンジンブレーキも効果的に使える。これも本来はCVTであるから、スリップ感のないダイレクトな味わいがある。
CVTの無段階変速は、加速時にはギア比が低い方に移行するとあたかもスリップしているようで、フィーリングとして嫌う人も多かった。そこであえてワイドレシオの6段階に固定して使う方式を選んでいる。よって段階的な加速・減速感も得られるし、つながるときにはガツンという段差を感じないスムーズさも併せ持っている。今回はそれにエンジン制御も協調するカタチで、段階差とエンジン音の変化を演出しながらも、さらに滑らかな変速を実現している。
前方視界が心地いい
デザイン面での変化は思った以上に大きい。総じて顔はピカピカめっきの多いお化粧ではあるが、奇怪な目元で威嚇する少し前に流行(はや)った華流デザインのライバルたちに比べ、より直線的でシンプルさも併せ持ち、嫌みなくスッキリしている。これがかえって陳腐さを排除して高級感を醸し出す要因になっているといえそうだ。
また、アウトランダーに乗ると運転席からの眺めがよく、「イイ気分」が味わえる。ワイパーを隠してボンネットの見切りをスッキリさせ、ほのかに丸みを持ったエンジンフードが少し見え、フェンダー稜線(りょうせん)の角が車幅を正確に読む助けとなっている。
高く座ると前方がよく見える、というのは当然のことながら、ただ漫然とたくさん見えればいいというわけでもない。アウトランダーの場合、ちゃんと四角く枠取りされた額縁の中に風景を見る、その見え方が秀逸である。ウィンドウガラスの傾斜角とか目からの距離とか、ダッシュボードの写り込みとかで見えにくい例もあるが、アウトランダーはダッシュボードの前端が前下がりで写り込みが少なく、この面積が大きなクルマにありがちな視覚の邪魔を少なくしている。その辺の処理がうまい。
なにより安心感がある
今回試乗した2.4リッターモデルは、すべて4WD仕様である。カタログによれば電子制御4WDとなっていて、適宜2WD(FF)と4WDを自動で選定するような設定ではある。が、2WDに切り替えれば必ずしも燃費がいいわけではなく、4WDのメカを装備する以上は4WDで走った方が燃費はいい。
それよりも、4本のタイヤが平均して摩耗するとか、低ミュー路はもちろん高速道路などでも走行安定性も高いとか、あるいはピッチングやヨーのダンピングなどの点から通常の乗り心地が滑らかになることにより、子供や老人を乗せる機会のあるユーザーにとっては、クルマ酔いなどを軽減してくれるというメリットだってあるだろう。よって予算が許すならば、4WDはお薦めである。
誤解を恐れずに言ってしまえば、アウトランダーが目指す先には、そのひとつの究極として「レンジローバー」があり、日本的な見切りをつけて判断するならば、それに追いついたとすら思う。半値以下で買える価格を考慮するならば、なおさらその思いは強くなる。
走行経費だけに注目すれば、いまでは電気やディーゼルなどの選択肢もあるが、昔ながらのガソリンエンジンは長くなじんだだけに捨てがたいものがある。構成がシンプルであり、イニシャル価格も安い。万が一壊れても、比較的簡単にフツウの知識で直せる。あらためてガソリンエンジンの利点を探すと、あまり強力な理由が見当たらないのも事実だが、無意識に付き合える安心感のようなものはある。
(文=笹目二朗/写真=小林俊樹)
テスト車のデータ
三菱アウトランダー24G Navi-Package
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4695×1810×1680mm
ホイールベース:2670mm
車重:1570kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.4リッター直4 SOHC 16バルブ
最高出力:169ps(124kW)/6000rpm
最大トルク:22.4kgm(220Nm)/4200rpm
タイヤ:(前)225/55R18 98H(後)225/55R18 98H(トーヨーA24)
燃費:14.6km/リッター(JC08モード)
価格:321万1920円/テスト車=343万3320円
オプション装備:ロックフォードフォズゲートプレミアムサウンドシステム(10万2600円)/S-AWC(8万6400円)/ルーフレール<シルバー>(3万2400円)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:1734km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
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笹目 二朗
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