BMW 218dグランツアラー Mスポーツ(FF/8AT)
日本市場をおろそかにしない 2015.07.31 試乗記 BMW初のミニバン「2シリーズ グランツアラー」に試乗。その出来栄えからは、日本市場をおろそかにしないというインポーターの姿勢が感じられた。あのBMWがミニバンを?
言わずと知れたプレミアムブランドのBMWが、ミニバンをリリースしたという。おまけにすでに「MINI」で展開済みのFFベースというから、今更ながら筆者のまわりのプレミアム&FR信奉者からは「BMWよ、お前もか」という声が聞こえてくる。
しかしビジネスである以上、そんなことは言っていられない。それに「大は小を兼ねる」ではないが、実際に図体のでかいミニバンが市場を形成し、カーライフを豊かにしてきたことは否定できない。
しかもBMWには、既存のラインナップやそれらが築いたブランドイメージは維持しつつ、新しい顧客を獲得しようという意図が感じ取れる。これに関しては「A」や「B」や「GLA」など、5つのFFモデルを展開するメルセデス・ベンツも同じだが、こちらはミニバンについては未着手だ。後述するディーゼルエンジンを最初からラインナップしている点も併せ、BMWの戦略からは日本市場を決しておろそかにしない姿勢が見て取れ、その結果としてユーザーがメリットを享受できるのである。
前置きが長くなったが、このクルマは日本で一般的な箱型ミニバンとは一線を画す、強いて言えば「トヨタ・ウィッシュ」や「マツダ・プレマシー」などと同じクラスに属する。既発の「2シリーズ アクティブツアラー」の全長、ホイールベース、全高を拡大することで3列目のスペースを確保すると同時に、他の席の快適性もさらに向上させている。
ただ、せっかく採用された3列目シートではあるが、そこは一種の割り切りが必要。短時間の乗車であればまったく問題ないが、大人7人がリアルにドライブというのはやはり無理がある。しかし、ここで視点と考え方を切り替えてみたい。3列目を格納した際のラゲッジ容量は560リッターと、同クラスのステーションワゴンをしのぐ広さで、さらに40:20:40分割可倒式の2列目シートをすべて倒せば1820リッターまで拡大できる。要は自分の使い方次第で、国産車のお株を奪う実用性が手に入るのだ。また、これらのシートアレンジが非常に簡単に行えた点も付記しておきたい。
FRのBMWにはかなわないものの……
試乗したグレードは初期受注の70%を超えるという「218d」。もともと低速域で粘りのあるディーゼルエンジンではあるが、スペック表で見る以上に、最大トルクを発生する回転域以下、要は1500rpm以下でのドライバビリティーに優れる。もちろん8段ATのきめ細かい制御のおかげもあるが、ディーゼルターボの泣き所ともいわれるこの回転域でのトルクの細さは、グランツアラーでは皆無に等しい。好みもあるだろうが、やはりこのクルマを楽しみ尽くしたいのであれば、ディーゼルモデルをお薦めする。
FFということで気にする人も多いだろう“身のこなし”についても、自然なフィールを生むFRのBMWには及ばないが、正直このクルマのターゲットカスタマーを鑑みれば問題とはならないだろう。ステアリングの操舵(そうだ)フィールは、切り始めこそ緩やかだが、切り込んでいくと、もしくは素早いステアリング操作に対しては、きちんと敏感に反応する。乗り心地に関してもこの手のクルマにありがちな上下動がよく抑えられているし、ロール感も自然だ。つまり、この種のクルマを使うユーザー層が求める要件が、バランスよくまとめられている。
またi-Drive付きナビゲーションやLEDヘッドライト、衝突回避・軽減ブレーキなどが全グレードに標準装備されている点も印象がいい。BMWは多彩なオプションが選べる点は確かに魅力的だが、結果として購入価格が上がってしまうというネックもある。この手のミニバンを嗜好(しこう)する人が重視する装備だけはしっかり標準化すべきであり、この美点は日本法人が本国にマーケット分析をしっかり伝えた結果だと思う。
(文=高山正寛/写真=田村 弥)
【スペック】
全長×全幅×全高=4570×1800×1640mm/ホイールベース=2780mm/車重=1610kg/駆動方式=FF/エンジン=2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼルターボ(150ps/4000rpm、33.7kgm/1750-2750rpm)/トランスミッション=8AT/燃費=21.3km/リッター(JC08モード)/価格=426万円

高山 正寛
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