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ジャガーXE 2.5ポートフォリオ(FR/8AT)/XE 3.0 S(FR/8AT)

今度こそ 2015.08.04 試乗記 高平 高輝 ジャガーの新しいミドルクラスサルーン「XE」に試乗。アルミを大きく採り入れた軽量ボディーに、しなやかさと軽快感を併せ持つ足まわりと、“モダンジャガーの体幹”を受け継ぐXE。その実力はドイツ御三家に迫ったか?

しなやかとはこういうことだ

御殿場市街から長尾峠に上る山道はずいぶん前から拡幅工事が途中でストップし、狭く舗装の荒れた部分がそのまま残っている。そんな舗装が割れたり、剝がれたりした部分をわざわざ選んで走っているのだから、他人から見たらまったく変な連中だと思われても仕方ない。あれ? それなりの衝撃に身構えていたのに何事もなし。ちゃんと踏んでいなかったのかも、とあらためて狙いをすましてひび割れ舗装を再び踏んでも、サラリと軽やかに通り過ぎている。ダラランッも、ブルルンッもなし。ほら、やっぱり! 言った通りじゃないか、と思わず口に出しても誰も聞いてくれる人がいなかったので、ここに再現してみました。

もちろん単に当たりがソフトなだけではなく、姿勢はフラットなまま。そもそも試乗しているのは、当面4車種用意される新型XEの中で、パワフルなほうの2リッター直噴ターボ(240ps)を積んだ「ポートフォリオ」、しかもオプションとなる19インチのタイヤを履く、スポーティーな仕様である。にもかかわらず、革靴でカーペットを踏んで歩くような、ソリッドさを秘めた柔らかさがうれしい。路面の細かな凹凸さえ律義になめるような追従性、しなやかで適切なダンピングは「メルセデス・ベンツCクラス」をしのぐほど。山道を小1時間ほど走っただけだが、軽快でしなやかな乗り心地という点では最近のセダンの中でも出色の出来栄えといっていい。

だが驚くには当たらない。前から言っているように、「XJ」も「Fタイプ」も皆同様の太い筋が通っている。少なくともビークルダイナミクスに関する限り、先代XJを皮切りにアルミモノコックボディーに積極的に取り組んでからのジャガー各車にはハズレがない。近年のジャガーに駄作なし、なのだ。だからこそ、日本ではその実力がほとんど知られていないことが実に残念だ。先入観を捨てて、ぜひとも試乗をお勧めする。

2度の先行限定モデルの受注を経て、いよいよ2015年6月2日、「ジャガーXE」のカタログモデルの受注が始まった。販売は、まずはガソリンエンジン搭載車から。納車は9月以降の予定。
2度の先行限定モデルの受注を経て、いよいよ2015年6月2日、「ジャガーXE」のカタログモデルの受注が始まった。販売は、まずはガソリンエンジン搭載車から。納車は9月以降の予定。 拡大
一見オーソドックスだが、インテリアの造形はなかなか凝っている。ドアトリムから連続してベルトラインがダッシュボードの上面をぐるりと取り囲むデザインは「XJ」にも通じるもの。シフトセレクターはおなじみロータリー式。
一見オーソドックスだが、インテリアの造形はなかなか凝っている。ドアトリムから連続してベルトラインがダッシュボードの上面をぐるりと取り囲むデザインは「XJ」にも通じるもの。シフトセレクターはおなじみロータリー式。 拡大
2リッターガソリンエンジンには200ps版と240ps版の2種類が用意される(エンジン形式はどちらも204PT)。試乗した「XE 2.5ポートフォリオ」に搭載されるのは後者。車名は実排気量を示しているわけでない。
2リッターガソリンエンジンには200ps版と240ps版の2種類が用意される(エンジン形式はどちらも204PT)。試乗した「XE 2.5ポートフォリオ」に搭載されるのは後者。車名は実排気量を示しているわけでない。 拡大
スリーサイズは4680×1850×1415mm。ボディーのCd値は0.26と優れた数値が発表されている。
スリーサイズは4680×1850×1415mm。ボディーのCd値は0.26と優れた数値が発表されている。 拡大
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アルミボディーの意欲作で再挑戦

ミディアムクラスへの進出は昔からのジャガーの悲願だった。特にフォード傘下に入ってからは、数が見込めるミドルクラスのエントリーモデルでドイツのプレミアム御三家のマーケットに割って入ることがその使命。だが、ご存じのように21世紀に入ってからの最初のチャレンジはうまくいかなかった。

横置き・前輪駆動(FWD)の「フォード・モンデオ」をベースにした「Xタイプ」は、さすがにFWDのままではなく4WD化して(後に結局FWDモデルも追加された)発売されたが、インテリアトリムの意匠やフィニッシュのクオリティーがジャガーというにはいささかふさわしくなかったこともあって結局広く受け入れられることはなかった。
もっともジャガーの名誉のために付け加えると、「リンカーンLS」をベースとした「Sタイプ」同様、Xタイプも後から見違えるように改善されたのだが、時すでに遅し。フォードがジャガーやボルボなどのブランドが属するPAG(プレミア・オートモーティブ・グループ)を解体し、売却した混乱もあって、結局競争熾烈(しれつ)なボリュームゾーンに手を出して手痛い教訓を学んだ形になった。それゆえに新型のXEでは、ボディー全体の75%にアルミ材を使用したまったく新しい後輪駆動プラットフォームを開発、まさしく社運をかけたニューモデルとして捲土(けんど)重来を期すことになったのである。

ちなみにこのプラットフォームは既に発表されている新型「XF」、および今秋のフランクフルトショーで発表されるはずのジャガー初のSUV「Fペース」にも使われる予定であり、そうなるとジャガーは全モデルがアルミの骨格を持つことになる。

1年近くも前に限定車の注文を受け付けていた割には、本格的な導入までかなり時間がかかったが、ジャガー・ランドローバー・ジャパンにとっては5年ぶりのミドルクラスへの再挑戦である。日本仕様XEのパワーユニットは2リッター4気筒直噴ターボが出力違いで2種とFタイプと同様のスーパーチャージャー付き3リッターV6、そして新型の「インジニウム」2リッターディーゼルターボの4種類、全7モデルがラインナップされる。トランスミッションは全車シフトパドル付きZF製8段ATである。9月ごろから順次デリバリーが始まるというが、注目の新型2リッターディーゼルターボエンジン搭載モデル(497万~549万円)はもっと遅れて年末になる予定だという。ボルボなどの他メーカーも新世代ディーゼルで攻勢をかけている今、本当はもう少しスピード感が欲しいところだ。

試乗車のボディーカラーは「オデッセイ・レッド」。全18色が設定される。
試乗車のボディーカラーは「オデッセイ・レッド」。全18色が設定される。 拡大
「ポートフォリオ」には「ソフトグレイン・レザーシート」が標準で備わる。同系色のステッチが施され、背もたれと座面にヘリンボーンのパターンが入る。
「ポートフォリオ」には「ソフトグレイン・レザーシート」が標準で備わる。同系色のステッチが施され、背もたれと座面にヘリンボーンのパターンが入る。 拡大
後席は前後方向には広いが、上下方向は意外に余裕がない。「パノラミックグラスサンルーフ」が付いた試乗車では、その傾向が強く感じられた。
後席は前後方向には広いが、上下方向は意外に余裕がない。「パノラミックグラスサンルーフ」が付いた試乗車では、その傾向が強く感じられた。 拡大
トランク容量は415リッター(VDA方式)。後席の背もたれは4:2:4の分割可倒式。
トランク容量は415リッター(VDA方式)。後席の背もたれは4:2:4の分割可倒式。
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フロントホイールアーチの後方に備わるエアアウトレット。ジャガー各車に用意される同社のシグネチャー。
フロントホイールアーチの後方に備わるエアアウトレット。ジャガー各車に用意される同社のシグネチャー。
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八方美人でないのがいい

ベーシックなほうから「ピュア」「プレステージ」の両グレードに積まれる2リッター直噴ターボは200ps/5500rpmと32.6kgm/1750-4000rpm、いっぽう「ポートフォリオ」には同排気量から240ps/5500rpmと34.7kgm/1750rpmを発生するよりパワフルなユニットが載る。アルミボディーにしてはさほど軽くない1640kg(試乗車は1660kg)の車重に対して、このスペックは十分以上であり、特に低回転域から余裕のトルクを生み出してくれるおかげで、走りっぷりに不足はないのだが、残念ながらこの4気筒直噴ターボエンジンはみずみずしさというか色気にちょっと欠ける。回せばリミットの6500rpmまで軽々と吹けるが、その際にかすかだがビーンという共振音のようなノイズが入るのもちょっと残念だ。

スリークでクリーンなXEのボディーの外寸は全長4680×全幅1850×全高1415mm、ホイールベースは2835mm。当然ながらメルセデスCクラスや「BMW 3シリーズ」と真正面からぶつかるサイズだが、ただし1415mmの全高だけは標準値より若干低い。滑らかに下がるルーフラインが作るファストバックのようなフォルムから予想される通り、後席の天井は低い。というよりルーフからCピラーにつながるライン、いわゆる鴨居(かもい)が思った以上に低い位置にあるため、リアシートへの乗降の際には頭に注意しなければならない。いったんシートに収まってしまえばまずまずの居心地、ヘッドルームは余裕がないが足元は広く、サイドの絞り込みも現行Cクラスほどではないようだから、後席のスペースまで欲張ってはいけないと思う。ジャガーはこれでいいのだ。かつてXJやSタイプではユーザーの声にこたえてヘッドルームを拡大したら、当のアメリカ人がカッコ悪いと不満の声を上げたとも聞く。優先順位をはっきりさせるのも大人の態度である。

「XE」にはジャガー初の電動パワーステアリング(同社はEPASと呼ぶ)が搭載されている。その恩恵のひとつとして、縦列および並列駐車や出庫支援を行う「パークアシスト」機能を装着できる(オプション)。
「XE」にはジャガー初の電動パワーステアリング(同社はEPASと呼ぶ)が搭載されている。その恩恵のひとつとして、縦列および並列駐車や出庫支援を行う「パークアシスト」機能を装着できる(オプション)。 拡大
ヘッドランプはキセノン式。「ポートフォリオ」では“アクティブフロントライティング”機能や、ハイビーム/ロービーム自動切り替えの“インテリジェントハイビーム”も標準装備となる。
ヘッドランプはキセノン式。「ポートフォリオ」では“アクティブフロントライティング”機能や、ハイビーム/ロービーム自動切り替えの“インテリジェントハイビーム”も標準装備となる。 拡大
試乗車のタイヤはオプションの19インチ(前:225/40R19、後:255/35R19)。標準サイズは前後とも225/45R18。
試乗車のタイヤはオプションの19インチ(前:225/40R19、後:255/35R19)。標準サイズは前後とも225/45R18。 拡大
2リッター直4エンジン(240ps)搭載車の動力性能は、0-100km/h加速が6.8秒で、最高速は250km/h(欧州仕様の場合)。
2リッター直4エンジン(240ps)搭載車の動力性能は、0-100km/h加速が6.8秒で、最高速は250km/h(欧州仕様の場合)。
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軽やかなのは2リッターモデル

340ps/6500rpmと45.9kgm/3500rpmを生み出すスーパーチャージドV6を積んだ「3.0 S」はさすがにパワフルで、足まわりもそれに対応して締め上げられている。Sには可変ダンピングが標準となり、さらにオプションの20インチタイヤを履く試乗車はピシリとした安定感が強調されていた。ただし、車重は1710kg(試乗車は1730kg)に増えているせいで、ノーズの軽快な動きや滑らかな乗り心地という点では2リッターモデルのほうが好ましい。200psモデルを試す時間がなかったのだが、試乗した2台はともに体幹が強靱(きょうじん)なアスリートのように、無理な姿勢をまったく無理と感じさせないまま、するりと次の動作に移る見事なボディーバランスを備えていた。浮き足立つだろうな、と身構えて突破するうねりのあるコーナーでも余分な揺れ戻しをまるで見せないスタビリティーがジャガーならではである。

人によってはいささか外観が地味に感じるかもしれないが、その簡潔なスタイルもまたジャガーらしいと私は思う。まことに失礼ながら、日本ではこのところジャガーの魅力を十分に伝えきれてはいなかった。経営母体の紆余(うよ)曲折はあったにしても、これほど見事な出来栄えの車が年1000台程度の販売台数という現状は売る方に問題があったといえるだろう。XEのすがすがしくしなやかな乗り心地は大きな武器だ。まずは販売の現場で一歩一歩それを伝えること。日本におけるジャガーの復権はそこからである。

(文=高平高輝/写真=小河原認)

340psの3リッターV6スーパーチャージャー付きエンジンを搭載する「XE 3.0 S」。0-100km/h加速が5.1秒で、最高速250km/hという俊足を誇る。
340psの3リッターV6スーパーチャージャー付きエンジンを搭載する「XE 3.0 S」。0-100km/h加速が5.1秒で、最高速250km/hという俊足を誇る。 拡大
「XE 3.0 S」にはレザー/スエードクロスのスポーツシートが装着されるほか、黒いヘッドライニングが標準となるなど、よりスポーティーに彩られる。
「XE 3.0 S」にはレザー/スエードクロスのスポーツシートが装着されるほか、黒いヘッドライニングが標準となるなど、よりスポーティーに彩られる。 拡大
340psと45.9kgmを生み出す3リッターV6スーパーチャージドユニット。「Fタイプ」にも搭載されている。
340psと45.9kgmを生み出す3リッターV6スーパーチャージドユニット。「Fタイプ」にも搭載されている。 拡大
「XE 3.0 S」のリアビュー。20インチのタイヤ、レッドブレーキキャリパー、ツインエキゾーストパイプなどが外観をスポーティーに引き締める。
「XE 3.0 S」のリアビュー。20インチのタイヤ、レッドブレーキキャリパー、ツインエキゾーストパイプなどが外観をスポーティーに引き締める。 拡大
ジャガーXE 2.5ポートフォリオ
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ジャガーXE 2.5ポートフォリオ(FR/8AT)/XE 3.0 S(FR/8AT)【試乗記】の画像 拡大

テスト車のデータ

ジャガーXE 2.5ポートフォリオ

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4680×1850×1415mm
ホイールベース:2835mm
車重:1660kg
駆動方式:FR
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
最高出力:240ps(177kW)/5500rpm
最大トルク:34.7kgm(340Nm)/1750rpm
タイヤ:(前)225/40R19 93Y(後)255/35R19 96Y(ダンロップ SPORT MAXX RT)
燃費:12.5km/リッター(JC08モード)
価格:642万円/テスト車=715万7000円
オプション装備:メタリックペイント(8万2000円)/パノラミックグラスサンルーフ(電動スライディング、ブラインド付き)(20万6000円)/ブラインドスポット・モニター(クロージングビークルモニター、リバーストラフィックディテクション付き)(9万3000円)/ADVANCED PARK ASSIST PACK+PROXIMITY CAMERA(27万4000円)/19インチ Starアロイホイール(8万2000円)

テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:1887km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

ジャガーXE 3.0 S
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ジャガーXE 2.5ポートフォリオ(FR/8AT)/XE 3.0 S(FR/8AT)【試乗記】の画像 拡大

ジャガーXE 3.0 S

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4680×1850×1415mm
ホイールベース:2835mm
車重:1730kg
駆動方式:FR
エンジン:3リッターV6 DOHC 24バルブ スーパーチャージャー付き
最高出力:340ps(250kW)/5500rpm
最大トルク:45.9kgm(450Nm)/3500rpm
タイヤ:(前)235/35R20 92Y(後)265/30R20 94Y(ピレリP ZERO)
燃費:10.4km/リッター(JC08モード)
価格:769万円/テスト車=925万9000円
オプション装備:メタリックペイント(8万2000円)/パノラミックグラスサンルーフ(電動スライディング、ブラインド付き)(20万6000円)/プライバシーグラス(6万2000円)/電動トランクリッド(11万5000円)/ステアリングホイールヒーター(3万6000円)/パーフォレイテッド・トーラスレザー・スポーツシート(31万2000円)/シートヒーター(前席)(5万7000円)/カスタマイズ可能なインテリア・ムードランプ(5万2000円)/イルミネーテッド・シルプレート(7万5000円)/ブラインドスポット・モニター(クロージングビークルモニター、リバーストラフィックディテクション付き)(9万3000円)/ADVANCED PARK ASSIST PACK+PROXIMITY CAMERA(27万4000円)/20インチ Propellerアロイホイール(20万5000円)

テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:2199km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

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